『M-1グランプリ』の優勝賞金は安いのか…ほか賞レースや海外番組のケースを比較
お笑いの祭典『M-1グランプリ』の決勝戦がテレビ朝日系にて12月22日に開催される。
通算20回を迎える「日本で最も権威のある漫才コンテスト」は今年過去最多の1万330組がエントリー。決勝進出者が発表された際には、連覇のかかる令和ロマンを筆頭に、各コンビが優勝賞金1000万円の使い道のネタで大喜利合戦を繰り広げるおなじみの一幕もあり話題となった。
その一方で、ネット上では優勝賞金の金額について「大会の価値に見合っていない」との議論も持ち上がっている。
「他のお笑い賞レースの『キングオブコント』や『THE W』、『THE SECOND』の優勝賞金も1000万円。ピン芸人による『R-1グランプリ』は500万円と実質“同額”と見てもいい。にもかかわらず、エントリー数では『M-1』とは2~3倍の開きがあり、先日行われた『THE W』に至っては903組と10分の1以下の競争率でした。視聴率を見てみると、昨年の『M-1』が世帯平均視聴率17.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。それに対して、他の賞レースは今年の『キングオブコント』こそ9.2%と善戦しているものの、それ以外は軒並み5~6%台と低迷しています。レース後に上がるネット記事の数も『M-1』とその他では4倍以上の開きがあったとのデータもあり、その差は歴然です」(スポーツ紙の芸能記者)
初代王者の中川家が優勝した2001年であれば1000万円という優勝賞金はそれなりに妥当とも思われるが、令和の現代における漫才師の頂点に与えられる賞金としてはいささかさみしい額といっても過言ではないだろう。
バラエティ番組を手掛ける放送作家はこう明かす。
「そもそも、優勝賞金1000万円といっても、実際に手元に残る金額はもっと少ないですからね。税金や所属事務所との分配を差し引くと、コンビの場合、1人当たりの取り分は200万~300万円にまで減ると言われています」
高額な海外番組の優勝賞金
実際、世界的な視点で見ると海外の同種の番組の優勝賞金は日本のそれを大きく上回る。
例えば、アメリカのバラエティ番組『サバイバー』では優勝者に対して100万ドル(約1億5000万円)とスポンサーが提供した自動車が贈られ、また2位以下にも順位に応じ賞金が与えられる。
とにかく明るい安村が出場して話題となったイギリスのオーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント』も優勝賞金は25万ポンド(約4800万円)と、日本のそれをはるかに超える額だ。
また、音楽オーディション番組『アメリカン・アイドル』の優勝者は賞金100万ドルに加え、レコード会社と契約を結ぶ権利を得て、一躍トップアーティストの仲間入りを果たすことができる。
これらと比較すると、M-1の優勝賞金が1000万円というのは相対的に見劣りしてしまうのは否めない。
「『M-1』の優勝賞金はどれくらいが妥当なのかは意見が分かれるところでしょうが、一部のお笑いファンや業界関係者からは、『影響力を考えれば3000万円から5000万円でも良いのでは』との声をよく耳にします。ただ、今年は松本人志の不在に加え、『サンドウィッチマン』の富澤たけしや山田邦子が審査員から外れたことで小粒感がささやかれていますから、昨年までと同様の盛り上がりとなるのかは微妙なところですが」(前出の放送作家)
もっとも、M-1に挑戦する芸人たちにとってもはや賞金自体がそこまで重要視される要素ではないとの見方もある。
芸能ジャーナリストの竹下光氏は語る。
「M-1で優勝すればそのまま引退などをしない限り、仕事量やギャラ、知名度は飛躍的にアップしますし、賞金以上の付加価値がありますからね。それに近年ではM-1を芸人としてのキャリアアップのための一つの道筋や芸人としての道に見切りをつけるキッカケとして捉えるのではなく、M-1優勝を大きな目標や中には芸人としてのゴールとして目指す挑戦者もいるくらい。そういう人たちにとっては優勝賞金が500万円に下がろうが、2000万円に上がろうが大した問題ではないでしょう。そもそも、妥当な額の根拠となる数字もないわけですし、主催者サイドも優勝賞金を2000万円にしようが、5000万円にしようが賛否の声が出るくらいなら、すでにM-1を想起させるフレーズとしても定着している“優勝賞金1000万円”の線をキープする方がいいという判断なのかもしれませんね」
いずれにせよ、賞金の額ですら議論のテーマになるほどM-1が日本のお笑い界における最高峰の舞台として認知されていることだけは間違いなさそうだ。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)