UFC現フライ級王者が朝倉海撃破で日本の格闘技界に果たした“20年越しのリベンジ”
前RIZINバンタム級王者の朝倉海が12月8日(日本時間)に行われた、世界最大の格闘技団体・UFCのデビュー戦でフライ級王者のアレシャンドレ・パントージャとのタイトルマッチに挑戦したが、2回2分5秒、胴絞め裸絞めで一本負けを喫した。
過去、日本人ファイターはRIZINのリングで活躍する堀口恭司ら6人がUFC王座に挑戦してきたが、いずれも王座獲得はならず。またアジア勢でも女子ストロー級でジャン・ウェリー(中国)がUFC王座を獲得しているが、男子のUFC王者はいない。
「UFCのデビュー戦でタイトルマッチという破格の扱いだったが、それもRIZIN王者の肩書があったからこそ。朝倉は海外からコーチを招聘し、最高の環境を整えて試合に臨んだが、リングではなく不慣れな金網ということもあり、さらに明らかな実力差もあった。同じフライ級では、すでに2人の日本人選手が実績を残し王座を狙っているだけに、今後、朝倉にタイトル挑戦のチャンスが訪れるか否かに注目が集まっています」(格闘技ライター)
UFCは1993年11月、コロラド州・デンバーで第1回大会を開催し、これまで数多くの日本人選手が参戦してきた。
その後、何度か経営母体が変わったが、経済誌「フォーブス」が今年4月に発表した「格闘技プロモーションの企業価値ランキング」では113億ドル(約1兆7700億円、当時のレート/年間収益12億9000万)で堂々の1位に輝いた。
ちなみに、2位は世界最大のプロレス団体・WWEで68億ドル(約1兆700億円/年間収益13億3000万ドル)。さらに、UFCとWEEは同じ親会社が所有しているだけに、日本国内がメインのRIZINとはあまりにも規模が違い過ぎる。
しかし、そんなRIZINの元王者の朝倉を“超VIP待遇”でデビューさせたのには、過去の因縁があったようだ。
「親会社は変わったものの、長年、現場のトップで仕切っているのは、UFCのCEO兼代表取締役社長ダナ・ホワイト。もともと、ホワイトはRIZINのトップである榊原信行氏が格闘技ブームを巻き起こしたPRIDEに強い羨望を持っていた。こうした経緯もあり、03年に開催されたPRIDEの『ミドル級グランプリ』に、後に殿堂入りを果たすトップファイターのチャック・リデルを送り込んだが準決勝で、その後UFCでも拳を交えるクイントン・“ランペイジ”・ジャクソンにTKO負けを喫した。本来、ホワイトはリデルが優勝して日本の格闘技ファンにUFCファイターの実力を誇示しようとしたのだが……。そして07年にPRIDEが消滅後、権利などはUFCが買収したが、ホワイトの気分はずっと晴れないままで、常に日本の格闘技界を意識していたという。今回、朝倉にパントージャが圧勝したことで、ダナは20年越しの“リベンジ”がかなったのだろう」(格闘技業界関係者)
次にUFCのタイトルに挑む日本人ファイターには、ぜひとも朝倉と日本の格闘技界のリベンジを果たしてほしいものだ。
(取材・文=CYZO sports)