年末に米国人が無性に観たくなる映画『ホーム・アローン』 その人気ぶりがフェイク続編でも明らかに?
目まぐるしく社会が変化する米国だが、同じものを変わらずに愛するのも米国人気質である。1人で自宅に取り残された少年が泥棒に立ち向かうホームコメディ映画『ホーム・アローン』(1990年製作)は、年末になると多くの米国人が無性に観たくなるクリスマス映画で、公開から35年近くたっても、人気は衰えない。その『ホーム・アローン』の続編が12月に配信されるとの噂がインターネット上に流れた。噂の出元は勝手に作られたポスターで無責任な偽情報だったが、ファンはかなり本気で興奮した。
米国人の愛される映画『ホーム・アローン』
『ホーム・アローン』シリーズは『ホーム・スイート・ホーム・アローン』(2021年製作)まで6作品あるが、愛くるしい表情と軽妙な演技で世界的な人気者となったマコーレー・カルキンが出演したのは2作目の『ホーム・アローン2』(1992年製作)までだ。クリスマス映画の「不朽の名作」として親しまれている『ホーム・アローン』はマコーレー・カルキンが主演した2作品だけだと言ってもいい。
1作目では、マコーレー・カルキンが演じる8歳の少年ケビンが、クリスマス休暇に家族で旅行に行くはずが自宅に取り残されてしまい、盗みを働こうとして侵入してくる2人組と闘うという内容だ。いたずら好きのケビンが、あの手この手で2人組をやり込めるシーンが痛快だ。旅先でケビンがいないことを知ったキャサリン・オハラ演じる母親が困難を乗り越えて自宅に到着し、ケビンを抱きしめるシーンに多くの視聴者が涙した。
2作目は、9歳になったケビンが家族とともにクリスマス旅行でマイアミに行くはずが、飛行機を乗り間違えて1人見知らぬニューヨークに来てしまう。ここで泥棒2人組と再会し、再び対決する。
2作とも、スリルあり、笑いあり、家族愛ありという、ホームコメディのお手本のような映画である。
続編の噂の出どころは…
フェイクニュースで広がった新作の噂は、このマコーレー・カルキン版の『ホーム・アローン』の続編だ。
勝手に作られた映画ポスターのタイトルは『キャビン・アローン』。おとなになったケビンと少し老けた母親が並んでおり、配給元としてディズニープラスのロゴがあしらわれている。11月初旬にフェイスブックで流れたが、そこにはストーリーも記されていた。
クリスマスの家族旅行でケビンと母親だけが一足早く山小屋に着いたが、そこに例の泥棒2人組が盗みに入る。ケビンと母親が協力して泥棒を撃退するというもので「静かな山小屋がスリル満点の戦場に変わる」など書かれ、12月にディズニープラスでストリーミングが開始されると記されていた。
ポスターをよく見ると、マコーレーの英語のスペルが「MaCaulay」となっており、正しいスペルとは違い「C」が大文字になっているなど、かなり粗雑な作りだ。うさん臭さが漂うものの、アップされて3日で「いいね」が13万件を超えた。また3万1000件以上のシェアがあり、ファンを通じて世界に拡散されてしまった。
『ホーム・アローン』は1~5作目は20世紀フォックスが、6作目はディズニープラスが製作している。偽のポスターについて、相手にするほどのことではないと判断したのか、ディズニープラス側が否定のコメントをしなかったこともあり、続編『キャビン・アローン』の存在を信じ、配信を本気で待っていた映画ファンも少なくなかったようだ。
映画だけにとどまらない人気ぶり
マコーレー・カルキン版の『ホーム・アローン』人気は映画鑑賞だけにとどまらない。今年は、マコーレー・カルキンが参加して撮影の舞台裏などを語る『ホーム・アローン・ツアー』というファンの集いが、ニューヨーク州やイリノイ州、マサチューセッツ州など8州で12月15日まで開催された。
また、金融大手のJPモルガン・チェースは、ホリデーシーズンに「ホーム・アローン」をもじったクレジットカードのコマーシャルビデオを製作し、テレビやインターネットで放送、配信している。キャサリン・オハラが出演し、映画と同じように「ケビン」と叫ぶシーンがお決まりの演出になっている。今年は「ケビン」の叫び声とともに、マコーレー・カルキンが画面に登場し話題となった。
米国の芸能メディアは、ともに『ホーム・アローン』に出演していた弟の俳優キーラン・カルキンが「自分の子どもには『ホーム・アローン』を見せていない。タランチュラが出てきたりするし、少し暴力的だからね」と語っただけで、ニュースにする。『ホーム・アローン』は他の人気映画とは「次元の違う」存在になっている。
マコーレー・カルキンはニューヨーク生まれ。舞台俳優の父を持つ。『ホーム・アローン』で大成功を収め「1990年代に最ももうけた子役」となったが、その後、両親が離婚したことで芸能活動を休止していたこともある。
「キング・オブ・ポップ」として知られるマイケル・ジャクソンとも親交があり、マイケル・ジャクソンに性的な虐待を受けていたのではないかと指摘されたこともあった。
マコーレー・カルキンは2019年にポッドキャストでマイケル・ジャクソンと自らの関係について次のように語っている。
「マイケルとの関係はごく普通でありきたりなものだった」
「(一躍スターになった)当時の僕にはたくさんのことが猛スピードで起きた。マイケルは僕のそういう部分に共通点を見出していたのだと思う」
「僕には友達がいなかった。彼もまったく同じ。彼は僕が1人ではないということを伝えたかったのだと思う」
「大物子役」は44歳になった。「成功した子役は大俳優にはなれない」という宿命を背負って映画人生を歩む。
(文=言問通)