KIBA x tatsuo対談 バンドマンとしての在り方とは?
日本で初めてエアーバンドというジャンルを確立したゴールデンボンバー。エンターテイメントを徹底的に追求したステージングに、ポップでつい踊り出したくなるような楽曲で2010年代を代表するアーティストとなった。
そんな彼らだが、デビューまでにはかなり苦労も伴ったという。エアーバンドという特殊なジャンルにまだ時代が追いつかず、理解をなかなか得られなかった。そんな下積み時代から彼らと親交があり、ゴールデンボンバーの中の人(共同制作者)としても彼らを支えるtatsuo。なんとKIBAはそんなtatsuoとバンド時代から交流があるという。さっそく対談が実現した。
――まず、お二人の関係から教えてください。
KIBA:元々はずっとバンド活動をされていて、地元で彼がやっていたMissingTearというバンドで一緒にやったんですよね。
tatsuo:いくつだろう、ぼくが17、8歳くらいの時ですよ。
KIBA:確かGargoyleのツアーで九州に行った時に一緒にやる機会があって。十代でもびっくりするくらい上手くて、本当にすごいなって思いました。
tatsuo:確か与太郎さん(※Gargoyleメジャーデビュー時のギタリストの一人。2001年に脱退)が燃えた時じゃなかったでしたっけ?
KIBA:そうかもしれないね(笑)
――与太郎さんが燃えたってどういう状況ですか?
KIBA:当時ステージで与太郎君が火を吹いたりしてたんだけど、エアコンの関係か何か分からないんだけど、火が戻ってきて髪が燃えちゃって。
――マジですか?
tatsuo:与太郎さんが燃えてても演奏止まんないんですよ。すごいですよね。
KIBA:終わって病院行って、「顔をやけどしてる」って。
――そりゃそうですよ……。
KIBA:次のライブは確か与太郎君抜きでやったと思います。顔面包帯だらけだったんですよ。自分じゃ動けないから、「何か食べたいものある?」って聞いたら「ちーかま」って言ったことだけ覚えてます(笑)
――tatsuoさんのMissingTearはGargoyleくらいハードなバンドだったってことですか?。
KIBA:いや、そんなハードではなかったですね。その当時流行ってた……なんてジャンルって言えばいいんですかね。
tatsuo:いわゆる90年代ソフトヴィジュアルのハードロック系です。
――じゃあジャンル的には対バンされるまで面識があったわけではないのですね。
KIBA:まだ彼らは十代でしたしね。
tatsuo:いや、ぼくらもまさか一緒にできるとは思ってなかったんで。もう、ほんと何か雲の上のような先輩だったんですよ。
――そこからまたどういったお付き合いがあったんですか。
KIBA:ちょこちょこライブで一緒にはなりました。すごい覚えているのが、新潟でのライブ。Gargoyleの曲をやってくれて。
tatsuo:そうです、そうです。
――何の曲だったかは覚えていますか?
KIBA:「DOGMA」だったと思います。しかもちょっとびっくりするくらい上手かったんですよ。「ちょっと待ってくれ」っていうレベルで。
――それまではGargoyleのカバーはやったことあったんですか?
tatsuo:ちゃんとはやったことなかったんです。Gargoyleはリフとかソロとかカバーするとなるとかなり大変じゃないですか。だからこういう時にしかできないんですよ。
――自分たちの曲をいきなりステージ上でやられるとやっぱり焦るものなんですか。
KIBA:いや基本的に嬉しいですよ、やっぱりそれは。
――everset(※2002年結成)になってからは、交流とかはなかったですか?
KIBA:いやあります。ちょこちょこライブも一緒にやらせてもらったし、Gargoyle20周年記念のトリビュートアルバムに参加してもらったりとか。
――tatsuoさんから見てGargoyleというのはどういう印象を持たれていたのですか。
tatsuo:やはり日本を代表するバンドですよね。昔も今も。メタルだからどうこうというわけでもないし、いわゆる日本の誇るオリジナリティがあるバンド、先駆者ですよ。
――メジャーシーンでの活動がメインとなった立場から見ると、どうでしょうか。
tatsuo:商業的な意味になると難しいんじゃないですか。メタルだからどうこうというよりも、いろんなことが絡んでくるんで。
でも、それとこれとはまた生き方が違うというか、こっち側だとビジネスになっちゃうし、そっち側だと【生き様】みたいな感じですよね。ここが融合すればいいんですけど、メジャーになるとディレクターやらメーカーの人たちっていうのは、結果を出さないといけないですし。
だけど「バンドオリンピックがあればGargoyleは金メダルですよね」っていつも一緒にやらせてもらうてときは言ったりしてました。
KIBA:それで言うと、逆にeversetのライブハウスでの活動は当時もよく見てて、このバンドが売れへんかったら、ライブハウス界隈はやばいなって思ってました。Gargoyleみたいに特殊な音楽性でもなかったし、ストレートな部分もある、聞きあたりの良いロックとして、楽曲も演奏もすごかったんです。
ライブ力とか、お客さんに対するアピールだったりとか、ステージ上を支配する力だったりとかもすごかった。本当にちょっと、これは、上に行かなあかんバンドやなっていう目で見ていました。そこに気づけなかった人たちはかわいそうですよ。気づいてライブハウスに行っていた子たちは本当賢いと思います。
――現在eversetでの活動の後に音楽をプロデュースするという側になったということですか。
tatsuo:そうですね。サウンドプロデュース、作曲、編曲みたいな感じですね。
――きっかけはあったんですか。
tatsuo:もともとぼくがMissingTearってバンドの時に、テレビ朝日ミュージックに所属してたんですよ。
――テレ朝に所属……それはミュージシャンとしてですか。
tatsuo:いや、バンドで。昔、Break Outって番組がありましたよね。その流れでテレ朝ミュージックに所属して上京して来たんです。その時のプロデューサーさんが、会社立ち上げたんですよ。何年か経って色々なご縁もあり、そこでアレンジ&プロデュース業務したんです。
――プロデュース側はいわゆる裏方になるかと思いますが、そこに対して抵抗とかなかったのですか。やっぱり表がいいとか。
tatsuo:音楽をいっぱいやりたかったんで全然抵抗はなかったですね。若手にはぼくの苦労経験から「だったらこうした方がいいんじゃない」って、中立の立場でアドバイスできますし。バンドマンだったらこう思うだろうけど、裏方に入ってからこう思うようになったから、その間を取ったらどう、とか。
いつも若手には、「自分の好きなことをやり続けて、ライブハウスにいる方がいいのか、それとも武道館なのか、どっちがいい?」って聞きますね、極端ですけど。そこでなんとなく「どっちがいいんだろう」って気づくと思うんですよ。まあ、どっちも正解だと思うんです。生き方の問題なんで。
――傾向として、どっちが多いとかあるんですか?
tatsuo:そりゃやっぱり武道館ですね。みんな売れたいんです。でも、たぶんぼくも若い頃にそう聞かれたら「武道館」って言ってたと思いますね。
ぼくは関わった子たちに末永く音楽やってほしい。でも根性がないと辞めちゃう子も多いので、そういった意味でもどっちがいいの、とは聞きますね。
――音楽を続ける難しさって当然あると思うんですけど、そこから見てGargoyleのこのキャリアに対してはどのように考えますか。
KIBA:ぼくらはそっちじゃないほうを選んでるから(笑)
tatsuo:いや、Gargoyleは日本の頂点まで行ってるじゃないですか。当時の言い方だとインディーズっていう言い方ですが、売れてるっていうのを経験してると思うんですよ。そこをぼくは経験してないんです。だからKIBAさんの説得力とはまた違ってくると思います。
――KIBAさんはどうでしょう。売れたっていう感覚はありましたか。
KIBA:感じたことはないかもしんないですね。売れて一番になった方たちはたくさんいらっしゃって、武道館の人はもっと売れてドーム行きたいと思うだろうし、ドームの人はワールドツアーしたいとか、もっともっと先に行きたいと考えてると思います。
ただぼくの場合、自分らの音楽だったりとか自分自身の歌だったりとかで、一番にはならないだろうなって常に思っていました。自分のやりたいことや好みもあるし、自分の持ってるもので、もしかしたら誰でも好きな一番じゃない人に向けた二番は行けるかもしれないけど……みたいな感覚だったかもしれないです。
そんな中、一番の人はこの方からこの人に移ったけど「二番はずっとあいつら」みたいになれたら、最高やなくらいに思っていました。実際そうはなってないかもしれないですが、そういう感覚は、二十代くらいからありましたね。
――KIBAさんがtatsuoさんのように自分がプロデューサーになってみたいだとか誰かをプロデュースしてみたいだとか、そういった気持ちってなかったのですか。
KIBA:あんまないですね。ぼくが言える範囲内でなら思うことありますけど、総合的に音楽も含めて見られるような才能が自分にあるかっていうと、それはないと思うし。
ちょっとしたことなら言えるだろうとは思います。でも、ぼくが見てきた世界はここまで、これ以上は見てない、そこから先は言えないってなるかと思います。
tatsuo:いや、KIBAさんのほうが見てる世界がすごいですよ!
――先ほど、tatsuoさんから、「根性がないと辞めちゃう子も多い」とありましたが、tatsuoさんから見て、ご自身がバンドでバリバリやってる頃と比較して、いまの若手と当時と異なる点はありますか。
tatsuo:音楽だけじゃないですけど、ゆとり世代ってリアルにあって、怒られ慣れてなくて、やっぱり打たれ弱いとかはありますね。大きい声を出して怒られたこともないだろうし、殴られたこともないと思います。でも我々は当時、それが当たり前にありました。それこそ打ち上げで、一気飲みで負けたらボコボコにされて(笑) そういうギリギリの世代だったんですよ。
――古き良き時代ですね(苦笑)
tatsuo:その文化って良くないなと思いますけど、でも、そこで「負けんぞ、このやろう」みたいな、肝が据わってくるというか、そこに耐えられたら、その先はそんな苦労することはないかなって思うんです。
だから今の子っていうのはそういう経験もないし、言動も気を付けないとハラスメントになりますし、それこそお酒飲む子も少なくなりました。昔は飲み強制的なノリでしたし。
――YouTubeなどもあるので、tatsuoさんが若手だった頃と比べて教則的なものが多い現代においては、楽器の演奏レベルは高くなっていると聞くのですが、それはいかがですか。
tatsuo:多いですよね。でも、上手いように見せてるだけの子も多いんです。やっぱりYouTubeとかだと、一生懸命レコーディングして、それを映像に当ててるだけの配信者も多くて、歌もそれが多いってのが、めちゃめちゃ多いです。基本それだと思うんですよ。
オーディションとかだと最初に映像見ることが多いんですが、最終的には一発撮りの映像にしないと、後に出来ないじゃんって大変なことになります。
――前もちょっと聞いたことがあるかもしれませんけれど、KIBAさんとしては、対バンする若手のバンドと、今と昔の違いを感じたりしますか?
KIBA:あんまり若い人とやる機会ないですけど(笑)
tatsuo:若いバンドいないんですよね。いまは三十歳手前くらいが若手ですよ。
KIBA:なんかちょっと思うのは、いまの話を聞いていると、現在の状況だったら、ぼくはバンド始めなかったかもしれないなって。
tatsuo:そうかもしれないですね。
KIBA:なんかやっぱりちょっと、(ライブハウスやバンド界隈は)悪そうで、自分にはない大人びたものだったりとか、影がありそうだったりとか、子供だった自分が見たことない塀の向こう側にありそうな世界、っていうイメージがあったんですよ。それがどんな世界なのかなとか、そういうものに逆にワクワクしたっていう面があって、そういうのも見たくて、やってみたいと思えた面もあったと思うんです。
今の方が良い時代なんだろうけど、クリア過ぎて。そういう清廉さにあまり興味がわかなかった当時の自分はバンドをやらなかったんじゃないかなって聞いてて思いました。
――演奏技術の向上の一方、バンドマンが少なくなってきているっていう話も聞きます。それはなぜだと思いますか。
tatsuo:何でですかね。
――若い子とか、バンドよりもダンスグループを選択することが多いとか。
tatsuo:ダンスとかは学校でも科目に入ってたりもしますしね。
KIBA:それだけ細分化してるってことじゃないですか。バンドが減ったんじゃなくて、これもこれも、って選択肢が増えたんです。ぼくらの頃は、ダンスやってる人とか身近にいなかったですし。
tatsuo:いなかったですよね。ダンスって。
KIBA:ぼくで言うと、世代的な話で恥ずかしいですが、子供の時なんか野球やってる子しかいなかったですよ。サッカーすらなかったですから。だからバンドに限らない話だと思います。
少し違うかもわからないけど、バンドっていうか音楽はそういう中でも、ぼくらの世代の時から、ちょっと商業に結びつく面があったと思うんですよね。うまいこといけば、音楽って何とかなる、とか。でもその他のものは商業に結びつく面が少なかったと思うんです。
例えばダンスとかですごくなっても、踊って食べる人よりは、教えて食べてる人の方が多かったようなイメージです。今は踊ることで食べられてますって人が増えているのかもしれないなと思いました。
そう考えると、自分のやりたいことで経済的に成立するジャンルが増えてきたからじゃないですかね。バンドや野球みたいなのが減ったのは、別に野球やバンドが悪いからじゃなくて。選択肢が増えたのはいいことなんじゃないかな、と思います。
tatsuo:若い子ってYouTubeで収益とか言うじゃないですか。でもこれをやればこれくらい稼げるとかを見せるのって、あんまりよくないなと思うんですよ。意外とそこ、若い子って言ってくるんですよね。これをやれば、これくらい稼げる、でもバンドだったら稼げないでしょ、お金かかるし。だってリハだってお金かかるし、みたいな。
KIBA:それはでもちょっと羨ましいですね。っていうのも、僕らはステージに立って、お客さんいる前でやるあの興奮が忘れられなくてバンドをやり続けているところがある。
tatsuo:そうそう。
KIBA:あれから、あの魔力から逃れられないみたいな怖ささえある。
tatsuo:でもそう、中毒ある。ステージ中毒!
KIBA:それを知らなくてもやれてるのなら、ちょっと羨ましい。それがなかったら僕はやってないですからね。
(後編へつづく)
Gargoyle Live情報
1/18 新宿WildSideTokyo
https://ws-tokyo.com/events/23812
1/19 目黒鹿鳴館
https://eplus.jp/sf/detail/4233550001-P0030001
2/2 高田馬場CLUB PHASE
https://tiget.net/events/353714
4/2 新宿LOFT
https://eplus.jp/sf/detail/4252420001-P0030001
全公演の詳細は公式HPをご確認ください。