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沖田臥竜の『インフォーマ』奇譚

『インフォーマ』全世界配信開始!作者がこの作品で一番伝えたかったこと

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小説『インフォーマ』シリーズの最新作『INFORMAII -Hit and Away-』を原作にしたドラマ『インフォーマ −闇を生きる獣たち−』が、1月9日よりNetflixにて全世界配信されている。ABEMAオリジナルドラマとして再生記録を更新し、日本中を熱狂させた『インフォーマ』が今度は世界へと進出するのである。そんな中、同作品の生みの親である沖田臥竜氏の現在の想い、同氏が見据える未来とは何なのか。ただ、沖田氏ならば、まず、こう嘯(うそぶ)いてみせるのではないだろうか。「思ってたより全然、金ならんやん……」と。それは誰よりも作品を愛している沖田氏ならではの、照れ隠しなのかもしれないが――。

情報を生業とするものの矜持

 大晦日。ABEMAのプロデューサーに招待してもらい、毎年恒例となったRIZINの生観戦で年越しを迎えたのだが、実は肺炎が悪化した挙句、肋骨を骨折し、すこぶる体調を崩していた。春先に出版予定である小説の〆切にまで影響を及ぼす事態に見舞われていたのだが、唸っていても時間だけは過ぎていくようである。あっという間に正月は過ぎ去り、何事もなかったように新しい年が進み始めている。

 そして来月には私も49歳になるというのだ。文字通り「おっちゃん」である。間違っても、もう兄ちゃんと呼んでもらえる領域ではない。自分がもうすぐ50歳になる人生なんて想像していなかったので、少しばかり面を食らっているのだが、こうやって、気がつけば還暦を迎えたりしてるのだろうな〜なんて考えると、少しばかりぞっとしてしまうのは気のせいだろうか。
 
 ついこの間まで35歳くらいだったのだが、時の流れは残酷なほど早い。

 そろそろ「老害」とか言われ出すのだろうな。いや、もうジョニー(『インフォーマ』のプロデューサー)には、陰で言われているのかも知れない……。ジョニーのぎくりとした表情が目に浮かぶ。

 思えば2024年は『インフォーマ』の年であった。書き続けるからこそ、味わうことのできる想いというのが確かにあって、12月26日にABEMAで最終回を迎え、寂しくなる気持ちと同時にホッと安堵できる気持ちを感じられるのは、情熱を燃やして一生懸命に悩み苦しみ、汗をかいてきた証拠ではないかと思っている。

 今ならば断言できる。物語を生み出す仕事をしていることを誇りに思える、と断言することができるのだ。

 私が物語を書くとき、当たり前だが、自信のないものは書かない。同時に作品作りにおいて、誰の真似もしようとは思わない。物語は唯一無二であって、自分の言葉で紡いでいかないと意味がないと思っている。だって何かの誰かの物真似なんて安っぽくないか。拘り続けたいのは常に新しい世界観だ。だからこそ、作品を話題にしてもらえたときには、報われたと噛み締めることができるのではないだろうか。

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バンコクの撮影現場にて、現地スタッフやキャストも交えて

『インフォーマ』を通してわかってほしかったこと

 そして、私に求められる役割は、決して書くだけでは終わらない。後悔しないように最後の最後まで、あらゆる挑戦を試みる。多分そこに妥協はないと思う。やると決めたことをいつだって最後までやり切るだけだ。その姿をみんなが応援してくれるのだ。当たり前の話だが、頑張ってる姿を応援してもらえるほどありがたいことはない。

 仕事上、週刊誌の仕事をしている人々を、出版社を問わず私はたくさん知っている。私自身、週刊誌で仕事もさせてもらっている。だから、週刊誌の内部事情や記者たちのモチベーションなどは手に取るようにわかっている。その観点から考えても、彼らが有名人のスキャンダルを報じ、タレント生命を奪うことまですることに正義なんてものはないと思っている。

 だが、『インフォーマ』を通してわかってほしい側面もあった。彼らも彼らで、葛藤や苦悩の中で仕事をしているということを、私は物語として残しておきたかった。

 すまんがネット民は別だ。人のことを暴露して、それでインフルエンサーとしてヒロイズムを感じている人間を、私は本当にすまない。バカだと思っている。それは節操のない一部のマスメディアの記者も同じである。

 それで世の中がよくなるとでも思っているのか。なるわけないではないか。世の中には常識というものがあって、過去のスキャンダラスを悪戯に掘り起こし、ネット民に火をつける手法は、悪手でしかないのだ。なぜならば簡単である。そこに当たり前のジャーナリズムがないからだ。

 人の不幸や悪口は確かに面白いだろう。有名人が滑り落ちていく様は尚さら愉快だろう。しかし、それで何か救われるのか。人を不幸にすることはあっても、救われることはないのだ。今の世の中全般に言えることは、後出しジャンケンが罷り通っていないだろうかということだった。

 そこに誰も違和感を持てなくなってしまったのだろうか。それならば、随分と手遅れではないか。

 『インフォーマ』という作品では、いちばんにそのことを伝えたかった。情報ひとつで、人の人生を狂わすのだ。報じる側もそれなりの覚悟があって当然のことではないのか。

 その上でそこに正義はなくとも、スクープを打ち出したときは、記者として堂々と胸を張るべきだと私は三島寛治を通して伝えたかった。どこまでいっても、メディアは要するに「ヒットアンドアウェイ」なのである。

 ただ、そのメディアすらもコントロールしようとする人間も世の中には確かに存在していて、木原慶次郎がそうだったのだ。

「クソみたいな世の中」という木原の言葉に、私は全てを凝縮させた。クソみたいな世の中だからこそ、人を裏切らずに泥臭く人のために生きることがどれだけ大切なことであるか。今、それが試されているのではないだろうか。

『インフォーマ』を乗り越えていく作品たち

 兵庫県尼崎市から始まった物語は、シーズンを通して尼崎市へと帰ってきた。私に地元愛なんて清々しいくらいないが、尼崎が私の生まれ育った街である。そこに何かを残したいという想いが強烈にあって、それを持って世界で戦いたいと思っていた。

 世界に出る以上、もうシーズン1でインフォーマとしてのお披露目は済ませている。
 ハリウッドだろうが、韓国作品だろうが、『インフォーマ −闇を生きる獣たち−』では、負けられないと思っている。1番になりたいというよりも、『インフォーマ』が世界を席巻していくことで、これからたくさんの作品がそれを乗り越えて行ってほしいと思っている。それをまた更に乗り越えていくのが、私たちの仕事だと考えているのだ。

 『インフォーマ』という作品の名の下には、最高のメンバーが集ってくれた。私にとっては携わってくれた全ての人々が愛すべき人たちである。

 あんなにもみんなで楽しめた打ち上げは、学生以来でなかったろうか。

 言って良いだろうか。プロデューサーのジョニーに『インフォーマ』の撮影の後半戦で「久しぶりに打ち上げやろうぜ」と言ったのは私である。ここ数年、映画やドラマの監修の仕事の多かったが、コロナ禍の影響で、いつの間にか打ち上げが少なくなってきていた。シーズン1のときにも大々的にはやっていなかった。

 そしたらだ。ジョニーのヤツ。なんと言ってきたと思う。「えっ⁈ だったら沖田さんからABEMAサイドに言ってくださいよ!」と言ってきたのだ。

「なんでやねん!」と言いながら、私がABEMAのプロデューサーチームに打診し、快く快諾してもらったのだが、驚くのはここからである。

 もう一度言うぞ。私がABEMAサイドにお願いしたのだ。なのに不思議なことに打ち上げを仕切ったのは、何を隠そうジョニーだったのだ。打ち上げの受付で、「沖田さんも並んでくださいよ!」とジョニーに言われたときには、心底、バンコクに置き去りにしてこなかったことが悔やまれた。
 
 今となれば、それすらも「クスッ」と笑えて懐かしく感じることができるのだが……。

 2024年、バンコクから始まった私たちの物語は、熱く激しいものとなった。私はこの夏を忘れることはないだろう。

 そしてまた、最高な仲間たちと燃えるような激しい作品を生み出すことができればと思っている。

(文=沖田臥竜/作家・小説家・クリエイター)

『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』 はABEMANetflixにて配信中

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沖田臥竜

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』シリーズ(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

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最終更新:2025/01/11 13:01