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世界を巡るコスプレビデオグラファーDAIの「日本人がまだ知らない“最前線”をいく」

台湾最大級のコスプレイベントはまるで「10数年前のコミケ」日本人参戦数急増の理由

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初めて「台湾FF」に参加した日本のコスプレイヤー・すやさん(X @suya0113)。「台湾FF」の盛り上がりと台湾人の優しさにとても大満足していた

 日本のコンテンツが海外で盛り上がりを見せている。“コスプレ”もそのひとつ。今ではコスプレの世界大会が開かれるほどで、伝統的な同人イベントから一歩進んだ、ビジネス革新のフロントランナーとして注目されているのだ。新規ファン獲得のため戦略的な市場展開を実践する日本のコスプレイヤーも現れるなど、同イベントはグローバル市場での協業や投資チャンスを生み出すプラットフォームとなっている。未来の成長分野への参入を検討する企業にとって、必見の現場だ。

 そんな中で、2025年2月7~9日の3日間、台湾・台北市にある花博公園にて、“台湾コミケ”とも呼ばれる同人誌即売会「Fancy Frontier 開拓動漫祭」(以下「台湾FF」https://www.f-2.com.tw)が開催された。

 台湾では最もメジャーな同人誌即売会であり、今回で44回目の開催となる。多くのコスプレイヤーが集まるイベントのひとつとして注目を集めているのだ。その人気は台湾を超えて日本でも話題になっていて、開催時には毎回、X(旧Twitter)でトレンド入りするほど。そんな「台湾FF」の現状を、海外のアニメコンベンションで取材を重ねてきた筆者がレポートする。

オタクな女神のコスプレ遍歴

「台湾FF」の特徴は「昔のコミケ」

「台湾FF」を一言で表すなら「10数年前のコミケ」。「台湾FF」は、前日の夕方から会場入りのために並ぶ人が現れる。ただ並ぶだけでなく、行列の中にテントを持ち込む人もいれば、カードゲームを始める人、麻雀卓で麻雀をしながら待つ人もいるほどだ。

 さらに、イベント開始直前にカウントダウンが始まり、その終了とともに一斉に会場ダッシュが始まる。これは「台湾FF」ではお馴染みの光景で、このダッシュを撮影するために多くのマスコミや一般参加者がカメラを構える。

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台湾FF開始直後の様子。多くの人がなだれ込むようにイベント会場に押し寄せる。

 一方、近年のコミケでは深夜の待機が禁止であり、会場内で走れば厳しく注意される。良くも悪くも「台湾FF」は昔のコミケを彷彿とさせるイベントだ。

 しかし最近では、転売グループによる買い占めや、迷惑系YouTuberによるトラブルが増加しており、今後はルールが厳格化されるのではとも囁かれている。

日本のコスプレサークルが増え続けている

 そんな「台湾FF」の取材を進める中で、日本から参加するコスプレイヤーが増加しているように感じている。そこでここからは私が、最も取材に力を入れてきた“コスプレ”を中心に、「台湾FF」の現状を紹介していこう。

「台湾FF」を10年以上取材し続けているが、現在が最も日本のコスプレイヤーが参加しているのではないかと感じている。特にサークルで参加するコスプレイヤーが非常に多い。「台湾FF」のスタッフに確認したところ、現在、日本からのサークル申し込みは3桁を超えており、特にコスプレイヤーというジャンルへの申し込みが多いとのことだ。

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公式ウェブサイトには日本語ページも用意されている。(「台湾FF」ウェブサイトより)

 10年前は4~5の日本のコスプレサークルが点在していた程度だったが、今回の「台湾FF」では20~30の日本のコスプレサークルが1列になっていた。1区画すべて日本人のコスプレイヤーしかいない…そんな光景が見られるとは思わなかった。

目的は「新規ファン獲得のため」「単純に楽しいから」

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台湾FF会場の外の様子。待機列やコスプレで盛り上がっていた。

 これは筆者の推測になるが、日本だけではフォロワーが伸びず、コミケや他の日本の即売会での頒布に限界を感じたコスプレイヤーが、新規ファン獲得のために「台湾FF」に来ているのではないだろうか。

 台湾は日本から近く、日本語が通じる場面が多く、日本人参加者も多い。簡単にチャレンジできる海外の場所としては、台湾が最も適している。

 もう1つの理由として、コスプレを披露する場として、とても楽しいことも挙げられる。

 数年前まではコスプレイヤーを囲みカメラマンが撮影する、いわゆる“囲み撮影”が日本でも多く見られた。その囲みの大きさや密度はひとつのステイタスだったが、コロナ禍後は見る機会が減ったのだ。「密を防ぐため」「ローアングラーによる盗撮対策のため」など、理由はいくつかあると思われる。

 しかし「台湾FF」では、むしろ囲み撮影が主流だ。さらに台湾のカメラマンは囲みを見つけるとすぐに駆け寄ってくるため、大きな囲み撮影が発生しやすいのも特徴だ。つまり、コスプレイヤーにとっては、ステイタスである囲み撮影を比較的簡単に味わえるのが「台湾FF」である。

 さらに、台湾人は日本から来たコスプレイヤーにとても優しく、フレンドリーに声をかけてきてくれる。何か問題があればすぐに手助けしてくれる。そのコスプレイヤーへの優しさが体感できるのも「台湾FF」の特徴だ。

 それだけではない。「台湾FF」の前後に訪れる台湾の夜市、グルメにショッピングも魅力的。イベントが楽しいだけでなく、観光も楽しいことも付け加えておこう。

 これらを体験したコスプレイヤーが、「台湾FFに行って後悔した」と言うだろうか? 多くはSNSで「『台湾FF』良かった」と投稿するだろうし、次回も訪れようと考えるはずだ。さらに「台湾FF」に参加したコスプレイヤーのSNS投稿を見た別のコスプレイヤーも興味を持つことだろう。

さらに日本のコスプレイヤーが増えるだろう

 今年2月に開催されたばかりだが、すでに私のもとには「次の『台湾FF』はいつ開催ですか?」「『台湾FF』ってどうですか?」とまだ経験していないコスプレイヤーからの問い合わせがあった。今回「台湾FF」に一般で参加していたコスプレイヤーに感想を聞くと、「次回はサークルで参加してみたい」とのこと。また、サークルで参加したコスプレイヤーは「次回までにさらにファンを作らなければ……」と私の前で意気込みを語った。

 改めて振り返ると、「台湾FF」を10年以上取材しているが、日本からのコスプレイヤーは増え続けている。すでに飽和気味ではないかと感じるほどだが、今後さらに日本のコスプレイヤーが増えたらどうなるのか。引き続きチェックしていきたい。

(文・写真=DAI)

仁藤りさ、撮影会の限界
えなこ、しっとりとふんわりと

DAI

岐阜県出身。NHKやNetflixなど番組カメラマンや多数アーティストのMV制作を行う映像制作会社の社長であり、世界中のエンタメイベントに赴き取材や映像撮影を行うビデオグラファー。得意分野はコスプレ。活動歴は10年以上にわたり、20カ国以上、述べ120回以上の海外イベントを取材している。
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Instagram:@daicinematography

DAI
最終更新:2025/03/04 02:20