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ディズニー+『デアデビル:ボーン・アゲイン』、“子ども向けイメージ”脱却と「残酷表現」で存在感を発揮する生々しい作風

ディズニー+『デアデビル:ボーン・アゲイン』、子ども向けイメージ脱却と「残酷表現」で存在感を発揮する生々しい作風の画像1
(写真:Getty Imagesより)

 マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のドラマシリーズ『デアデビル:ボーン・アゲイン』のシーズン1最終話となる第9話が、ディズニープラスで配信され、好評を博している。

タイパ」重視のZ世代

 ヒーロー“デアデビル”として犯罪からニューヨークの街を守る、盲目の弁護士マット・マードックと、犯罪組織のドン“キングピン”ことウィルソン・フィスクの戦いを中心に描かれる『デアデビル:ボーン・アゲイン』は、Netflixでシーズン3まで配信された『マーベル/デアデビル』の続編として制作。今シリーズでは、ニューヨークの市長に上り詰め、表の世界から街を牛耳ろうとするフィスクと、親友を失い絶望の淵に立たされたデアデビルが対峙する。

 マーベル・コミックを原作とする実写/アニメシリーズであるMCUは、2019年公開の映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』が全世界で約28億ドルの興行収入、歴代興収ランキング2位を記録するなど、大人気フランチャイズだった。

 しかし、『アベンジャーズ/エンドゲーム』をピークに、興行収入は徐々に下降線。作品に対する評価も芳しくない状況が続いていた。さらに、2021年からはディズニープラス配信でオリジナルドラマシリーズの制作が始まったものの、増え続ける作品数に追いきれなくなる視聴者が続出。MCU人気もこれまでか……という空気が漂う中で登場した起死回生の作品が、『デアデビル:ボーン・アゲイン』だ。エンタメウォッチャーの大塚ナギサ氏が、ディズニープラスの“紆余曲折”を振り返る。

「ここ最近のMCUは、“マルチバース・サーガ”と呼ばれ、多元宇宙が大きな軸となっています。複数のパラレルワールドが同時進行していたり、時間軸が交錯していたりと、複雑な作品が多かった。作品数・登場人物が増え、MCUの基礎的な知識がないと、内容を理解するのが難しい状況でもありました。そんな中で、『デアデビル:ボーン・アゲイン』は多元宇宙とは関係なく、ストリートレベルでの犯罪王と自警団との戦いの物語であり、MCUの知識があまりない視聴者でも存分に楽しめる内容です。これは多くの視聴者に支持される重要なポイントだったと思います」

 コミカルなテイストの作品も少なくないMCUにおいて、『デアデビル:ボーン・アゲイン』はかなりダークな雰囲気が漂う作品となっている。

「ダークな雰囲気は前シリーズの『マーベル/デアデビル』から踏襲されたものですが、『デアデビル:ボーン・アゲイン』では重々しさもありながらテンポ感が良く、すんなりと楽しみやすい。単なるヒーローとヴィランの戦いに終始せず、それぞれの葛藤や破壊への衝動など、人間らしい部分も丁寧に描かれており、単純なヒーローものにとどまらない魅力がある作品に仕上がっています。近年のMCUの中では、出色の出来です」(大塚氏)

 ここ数年のMCU作品は、VFX表現の稚拙さを指摘されることも多かった。しかし、『デアデビル:ボーン・アゲイン』において、そういったネガティブな反応はほとんどない。

「今作で描かれているのは、人間同士の生々しい戦い。宇宙的なスーパーパワーも出てこなければ、SF的な科学技術も出てこない。人間同士による血みどろの殴り合いや凄惨な撃ち合いがメインとなっているので、VFX的表現も最小限にとどまっている。それが功を奏している部分も大きいでしょう。下手にVFXに頼っていない分、稚拙な表現を避けることができたと言える。また、ディズニー関連作品とは思えないような、残酷な表現もかなり登場しています。そういった攻めた姿勢もまた、視聴者の心をつかんだ要因だったのでは」(大塚氏)

 同時期にディズニープラスで配信されているドラマシリーズでは、柳楽優弥主演の『ガンニバル』シーズン2も残酷表現が話題だ。日本のディズニープラス配信作品として過去最速で100万時間視聴達成するなど、こちらも高い人気を誇っている。

「『ガンニバル』も『デアデビル:ボーン・アゲイン』同様、人間同士の凄惨な殺し合いを描いている作品です。両作品とも現実離れした戦いではあるのですが、舞台は身近な村や街であり、だからこそのリアリティーがある。“爽快感あふれるアクション”といった表現とは正反対の目を覆いたくなるような痛みを伴う表現ですが、その“エグみ”が強烈なインパクトを与えているんです」(大塚氏)

 ディズニープラスでは、ゴールデングローブ賞ほか、数々の賞を獲得した真田広之主演『SHOGUN 将軍』を筆頭に、高い評価を得る作品が多く配信されている。

「配信ドラマは日本国内ではNetflixの作品が話題になることが多いのですが、ディズニープラスでも素晴らしい作品がたくさん配信されています。ディズニープラスの場合、Netflixに比べるとオリジナル作品の数は圧倒的に少ないものの、クオリティーの高い作品が多い。たとえば韓国ドラマの『ムービング』や『殺し屋たちの店』も、作り込まれた素晴らしい脚本とアクションが好評ですし、登場人物たちが感情をむき出しにする『一流シェフのファミリーレストラン』のような人間ドラマも好評です」(同)

 ディズニープラスで配信されるオリジナルドラマは、“大人向け”のテイストの作品が多いという。

「人間の生き死にが描かれるものも多いですし、汚い言葉も余裕で登場する。暴力や性に関する表現も当たり前です。ファミリー向けのイメージが強いディズニーからは想像できないような内容の作品も少なくない。“ディズニーだからピースフルな作品だろう”といった固定観念は、ことディズニープラス配信ドラマにおいては当てはまりません。こういった部分をもっとアピールすることができれば、日本国内におけるディズニープラスの存在感はさらに大きくなっていくのでは」(同)

 躊躇なく大人向けのエンタメを発信しているディズニープラスから目が離せない。

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(取材・文=サイゾーオンライン編集部)

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最終更新:2025/04/26 22:00