佐々木朗希の“現在地”と“未来地図”――稀代のエースとなるか? それともいつまでたっても「ポテンシャル枠」のままか?

佐々木朗希という存在をどう捉えるか?
その問いは、彼の160km/hという驚異的な速球や、パーフェクトゲームといった“瞬間最大風速”では測りきれない。
問題は、日本を代表する「エース」として長期的なキャリアを歩めるのか、それとも「ポテンシャルはあるが、確立されていない投手」としてキャリアを歩むのか、という点にある。
“エース”の定義を満たすか? 投球回とイニング消化力の問題
まず、数字が示す通り、佐々木はプロ入りから現在に至るまで、一度も規定投球回に到達していない。2024年終了時点での最多イニングは129回1/3。これはローテーションを守り抜く先発投手としては物足りない数字だ。NPBで年間180イニング以上を投げる「真のエース」と比べると、どうしても見劣りする。
もちろん、球団が慎重な育成方針を取ってきた背景や、佐々木自身のコンディション管理の難しさもあるだろう。だが、いずれにせよ「身体がシーズンを完走できるかどうか」という問題は、依然として付きまとう。
さらに、佐々木の運用は中6日以上が基本。完投させない起用法も含め、NPBでは異例とも言える丁寧なマネジメントが続いていた。だが、MLBで主流となるのは中4日でのローテーション。この移行に耐えうるのか、というのは最大の論点だ。
千賀滉大や山本由伸といった日本人投手は、この“適応力”を見せることで成功を掴みつつある。佐々木が中4日ペースに耐えられない場合、球団や本人が描くMLB構想も再考を迫られる可能性がある。
NPB時代やMLB移籍後で比較すると、山本由伸は毎年180イニング以上を投げ、平均防御率1点台、3年連続沢村賞という驚異的な安定感を見せていた。さらに、今シーズンはエースとして孤軍奮闘している。
千賀もNPB時代は7年連続二桁勝利はもちろん、2023年にはメッツのローテーションの柱となった。今シーズンは、怪我で離脱することになったが、防御率はリーグ1位だ。
一方で佐々木は、年間100〜130回といったペース。防御率やWHIP(1イニングあたり出塁を許した打者数)は申し分ないが、“量”の面ではまだ追いついていない。実績の裏打ちとして、シーズンを通しての「耐久性」が足りないのだ。
ポテンシャルは“本物”か“演出”か?
160km/h超のストレート、スプリット、スライダー、制球力。どの要素も一級品だが、それが「年間通して出せるのか」「大舞台で通用するのか」というのが鍵となる。ポテンシャルの“切り売り”で評価される段階は、そろそろ終わりに差しかかっている。
「本物」であれば、規定投球回到達、開幕投手、CS・日本シリーズでの投球といった“実績の積み上げ”が求められる。逆に、「演出」ならば、早期のメジャー移籍で“期待の若手”として再評価される流れもあり得るのだ。
MLBの舞台で佐々木がエース格になれるかどうか。それは、中4日という登板間隔で年間30登板をこなせるかどうかにかかっている。今のままでは、1年持つかどうか、という懸念は消えない。まずは“ローテ6番手”からのスタートが現実的なライン。そこから、身体の耐性とパフォーマンスを証明していくことになるだろう。
素材の魅力に疑いはない。しかし、「完成された選手」として投げていくには、まずシーズンで“完走”を果たす必要がある。身体が1シーズンを耐え抜いたとき、初めて佐々木朗希はほかのエースと呼ばれていた投手たちと肩を並べられるといえるだろう。
(文=ゴジキ)