CYZO ONLINE > カルチャーの記事一覧 > 楽天三木谷氏、スポーツベッティング推進

日本のIT企業でスポーツベッティング推進の動き、楽天・三木谷氏前向きも…実現への高い「壁」を弁護士解説

日本のIT企業でスポーツベッティング推進の動き、楽天・三木谷氏前向きも…実現への高い「壁」を弁護士解説の画像1
(写真:Getty Imagesより)

 オンラインカジノ問題が取り沙汰されるなか、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が、日本国内でのスポーツベッティング推進について言及した。

オンラインカジノ芸人活動自粛の裏側

 ビジネス映像メディア「PIVOT」にて6月13日に公開された「三木谷浩史に聞く、サッカービジネスの内実」という動画に登場した三木谷氏。Jリーグのヴィッセル神戸、そしてプロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスのオーナーという立場で、サッカービジネスやスポーツビジネスについて語った。

 そのなかで三木谷氏は、Jリーグの拡大のためには、コーポレートスポンサーシップの拡大やチケットの値上げとともに「スポーツベッティングの導入が重要です」と発言。さらに、自身も“推進派”だと明言したうえで、ギャンブル依存症対策にはマイナンバーと連携して、1カ月に賭けられる金額の上限を制限する仕組みを提案した。

 欧州ではすでにサッカービジネスを支える重要な存在となっているスポーツベッティング。世界を見据える三木谷氏が、スポーツベッティング推進を提案するのは当然の流れでもある。実際に楽天グループは、日本国内でのスポーツデータの活用やスポーツベッティング、ファンタジースポーツなどの実現を目指すスポーツエコシステム推進協議会に理事企業として参画。同協議会の理事企業にはサイバーエージェント、LINEヤフー、ソフトバンクなどが名を連ねている。

 また、MIXIは今年2月、オーストラリアのスポーツベッティング企業「ポインツベット・ホールディングス」の買収を発表。すでに同社はオーストラリアにおいて「betM」というベッティングサービスを立ち上げており、その事業を拡大することになる。もし日本国内での法整備が進んだ際には、日本でのスポーツベッティング事業展開を視野に入れていることは想像に容易い。

 一方で、国内ではオンラインカジノに対する批判の風向きは強まっている。プロ野球選手や吉本興業の芸人、さらにはJO1のメンバーらが国内から海外のオンラインカジノを利用したとして書類送検され、世間からも激しい批判を受けているほか、警察庁もオンラインカジノが違法であることを告知する啓発活動を展開しているところだ。

 海外ではオンラインカジノとスポーツベッティンが同じサービス内で提供されることも多く、いわば両者はセットのようなもの。オンラインカジノが批判にさらされるなか、スポーツベッティング推進は簡単なことではない。当然ながら、法的にも超えるべき高いハードルがある。

公営ギャンブル、toto、宝くじとスポーツベッティングは何が違うのか

 現在、日本国内で合法的に行われているギャンブルは、競馬、競輪、ボートレース、オートレースといった公営競技、totoなどのスポーツ振興くじ、宝くじ、そして特殊な形だがパチンコ・パチスロだ。Jリーグなどの試合結果を予想して賭けるtotoは、スポーツベッティングそのものである。これらの法律的な解釈について、山岸純法律事務所・山岸純弁護士が解説する。

「公営ギャンブルもtotoも宝くじもすべて賭博行為です。刑法により、賭博を行った者は、50万円以下の罰金や、常習とされる場合には3年以下の拘禁刑が科されます。また、これらを開催した者は3月以上5年以下の拘禁刑です。宝くじは “富くじ”と呼ばれる形式で、富くじを買った者は20万円以下の罰金など、販売した者は2年以下の拘禁刑などが科されます。

 ただし、刑法35条は『法令又は正当な業務による行為は、罰しない』としています。たとえば競馬には『競馬法』、競輪には『自転車競技法』、totoには『スポーツ振興投票の実施等に関する法律』、宝くじは『当せん金付証票法』があり、馬券を買う、車券を買う、totoを買う、宝くじを買うという行為は“法令”に基づく行為となるので“罰しない”となる。これらの法令では、“誰が”競馬、競輪などを開催できるかが特定されているので、一般企業が開催することは不可能です。

 なお、パチンコ・パチスロは風俗営業に分類される。特別な法律があるわけではなく、ものすごく“高度な”そして“信じられない大人の事情”により、逮捕されないとされているだけです」

 一般企業がスポーツベッティングを事業として行うには、特別な“法令”が必要となるわけだ。一方で、2018年には日本国内でのカジノ実現のための特定複合観光施設区域整備法、いわゆるIR法が成立しており、日本国内でのカジノ解禁に向かって進んでいる。

 大阪府と大阪市は、万博跡地の夢洲にカジノを中心とした統合型リゾート(IR)の整備を進めており、その事業者としてラスベガスなどでIRを展開するMGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスによって設立されたMGM大阪が選定された。IR法に基づいて、特定の地域でスポーツベッティングを開催することは可能なのだろうか。

「IR法に基づいて日本国内でスポーツベッティングを開催するためには、大まかに説明すると、特定複合観光施設として認定され、認定設置運営事業者の認定を受け、カジノ管理委員会の免許を受けなければなりません。つまり、日本政府と良好な関係を築いてカジノ誘致場所を決めてもらわないといけないわけで、結局のところMGMリゾーツ・インターナショナルのような巨大企業でなければ不可能だと思います。

 そうなると、やはりスポーツベッティングに限定した法令の制定を待つことになりますが、IR法関連で贈収賄事件が発生しているので、すぐに新たなギャンブルに関する法律を作るのは簡単ではない。仮に自民党が主導するにも今は弱すぎますし、さまざまな業界でオンラインカジノが問題視されている現在の風潮では、スポーツベッティングに限定した法令が成立するまで、少なくとも5年単位の時間が必要になると思います」(同)

 日本でスポーツベッティングの合法化をするには、かなり高いハードルを超えなければならないということ。しかし、海外のスポーツベッティングでは日本のスポーツが賭けの対象になっている事実があり、スポーツ業界全体の振興を考えるとこの点は無視できない。

「日本のスポーツが海外のブックメーカーに“タダ乗り”されていて、一説には数百億円単位の経済効果を生み出しているともいわれるので、日本のスポーツがどこかの経済を豊かにしているのが現状です。それを鑑みると、私個人としては、日本政府でも、超党派による国会議員の検討委員会ぐらいは立ち上がってもいいのではと思いますけどね」(同)

 たしかに、スポーツベッティングの解禁は、日本のスポーツ界の発展に大きく寄与することだろう。しかし、実現までの道のりはまだまだ長そうだ。

オンラインカジノ問題と大阪IRカジノへの“矛盾”

(取材・文=サイゾーオンライン編集部)

サイゾーオンライン編集部 

芸能・政治・社会・カルチャーなど、さまざまな情報を独自の切り口で発信するニュースサイト。

X:@cyzo

サイゾーオンライン編集部 
最終更新:2025/06/25 12:00