アメリカオタクはスケールも特大「Anime Expo」で見た自由と規制の24時

日本のコンテンツが海外で盛り上がりを見せている。“コスプレ”もそのひとつ。今ではコスプレの世界大会が開かれるほどで、伝統的な同人イベントから一歩進んだ、ビジネス革新のフロントランナーとして注目されているのだ。新規ファン獲得のため戦略的な市場展開を実践する日本のコスプレイヤーも現れるなど、同イベントはグローバル市場での協業や投資チャンスを生み出すプラットフォームとなっている。未来の成長分野への参入を検討する企業にとって、必見の現場だ。
海外のアニメコンベンションで取材を重ねてきた筆者が、世界中で行われているイベントの現場をレポートする。
目下、日本の巨大な輸出産業となっているアニメやマンガ、ゲームなどの日本のサブカルチャー。“コスプレ”も同様で世界中で愛されるコンテンツとして人気を博しているが、それは日本とは大きく違う独特なスタイルとなっている。
2025年7月3~6日の4日間、アメリカ・ロサンゼルスにあるロサンゼルス・コンベンションセンターにて、世界最大級のアニメコンベンション「Anime Expo」が開催された。
世界中が注目を集めるアニメ情報発信の場「Anime Expo」

「Anime Expo」は、日本アニメーション振興会(SPJA)が主催の北米最大のアニメコンベンションだ。アメリカでは月に2~3回アニメコンベンションが開催されるが、その中で最も集客数や知名度があるイベントとなっている。
1992年にサンノゼのホテルにて小規模で開催された「Anime Expo」は、瞬く間に知名度を上げ、2016年に来場者数が延べ30万人を突破。さらに2024年には延べ40万7000人が来場するなど、規模を拡大し続けている(https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/07/45d5836a1bc25b65.html)
筆者はこれまで世界各地のアニメコンベンションを多数取材してきたが、ここまで来場者数の多いアニメ関連イベントは思い当たらない。日本国内であれば「コミックマーケット」が1日あたりの来場者数では上回るものの、現在は開催が2日間に限られている。一方、「Anime Expo」は4日間にわたって開催され、延べ来場者数で見れば「Anime Expo」のほうが多い。また、開催時間も10時から深夜24時過ぎまでと長時間に及ぶ点も特徴的だ。
また、その規模も非常に大きい。たとえば「EXHIBIT HALL」は東京ビッグサイト東ホール約3.8ホール分に相当する35万平方フィートの広さを誇る。さらに、約2.3ホール分(21万685平方フィート)の「ENTERTAINMENT HALL」、約1.7ホール分(16万平方フィート)の「Kentia Hall」も併設されている。加えて、7100席を備える大規模な「Peacock Theater」や、高級ホテルブランド「JW MARRIOTT」、大小さまざまな会議室も会場に含まれており、周辺の道路を封鎖してマーケットを開催するなど、会場全体が一大アニメ都市のような様相を呈していた。
(https://www.anime-expo.org/ax/plan/hours-and-maps/)

催し物も非常に多く、アーティストによるライブから、ファンミーティングに近い小規模ステージも含め、十数種類の催しが同時に開催される。すべては言うに及ばず、全体の1/10を網羅することすら不可能なレベルだ。
(https://www.anime-expo.org/ax/schedule-2025/)
今回はテレビ局の映像案件などが多数あり、ブースや催し物の多くをチェックできなかった。今回はコスプレに特化してレポートを行う。
「Anime Expo」ならではのコスプレ文化
日本と海外でのコスプレ需要の違いは非常に多いが、ここでは「Anime Expo」ならではのコスプレ文化にしぼってまとめたいと思う。
まず「Anime Expo」のコスプレ最大の特徴は、世界中のコスプレイヤーやカメラマンが集結する点だ。ニューヨークやシカゴ、ヒューストンといったロサンゼルスから遠いアメリカの都市に住むコスプレイヤーはもちろん、隣国のカナダからの参加者も多い。また日本や韓国、台湾といったアジア圏やフランスやオランダといったヨーロッパ圏からも訪れる。
同日程でヨーロッパ最大規模の、フランスのアニメコンベンション「Japan Expo」も開催されていたが、ヨーロッパ在住の筆者のビデオグラファー仲間は「Japan Expo」と「Anime Expo」の両方に参加した。移動時間を考えると、「Anime Expo」は1日しか参加できないというのに、だ。

また、他国のイベントと大きく違う点として、パフォーマンスをしたがるコスプレイヤーが多い。パフォーマンスというのはいくつかあり、例えば大音量で音楽を流してダンスを踊る人もいれば、「バック転をするから撮影して!」と声をかけてくる人もいる。他国のイベントではご法度な行為も、「Anime Expo」ではよく行われている。

さらに通称”エントランス”と呼ばれている、会場内の広い室内エリアは、外からの光がたくさん入るため、キレイに撮影ができると評判だ。私もここでコスプレを撮影することが多い。ここにはコスプレイヤーだけでなく一般の参加者、メディアやYouTuber、配信者が多く、パフォーマンスをして目立とうとする方が多い傾向にある。
コスプレにおいて、「Anime Expo」ならびにアメリカのイベントでは、良くも悪くも自由がある。それが魅力のひとつであり、私が「Anime Expo」へ行き続ける大きな理由だ。

そうした自由さの一方でイベント側による規制も増えてきている。そのうちのひとつが、野外コスプレエリアの封鎖だった。暗い駐車場の中に多くのライトを設置して撮影することが人気だったのだが、今年は金網が設置され駐車場へ入れないようになっていた。
「Anime Expo」に来た日本のコスプレイヤーは…?
ここからは「Anime Expo」に来た日本のコスプレイヤーを紹介する。

はむ。さんは、子どものころからアメリカに住み続けるコスプレイヤーだ。彼女はまだ日本ではほとんど活動したことがないが、アメリカではかなり精力的に活動をしており、現地での知名度は高い。
彼女の強みはコスプレパフォーマンスだ。様々なイベントでコスプレパフォーマンスを行い、それを積極的にSNSで発信している。それを定期的に続けた結果、2023、2024年の「Anime Expo」での動画がSNSで大バズリし、今年は「Anime Expo」にゲストとして招待された。さらにステージにてアーティストデビューすることも発表され、コスプレイヤーの枠を超えて大きく活躍している。
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8月1日~7日に新宿フラッグスのビジョンで広告が流れる
ステージだけでなく、「Yostar」ブースには公式コスプレイヤーとして参加し、さらに3日間、コスプレエリアでさまざまなコスプレでパフォーマンスを行った。すごいとしか言えない。

また、「ペルソナ5: The Phantom X」ブースでは日本のコスプレイヤー4名が登場。コスプレによるパフォーマンスだけでなく、プレゼント抽選を行いファンと交流を深めた。

「KADOKAWA」ブースに、新作アニメの配信がスタートした「パンティ&ストッキングwithガーターベルト」のコスプレイヤーとして参加。フォトセッションでファンと記念撮影を行った。

日本でも注目度の高いコスプレイヤー・すずらさんは、エントランスを中心としてコスプレを披露。現地のカメラマンが集結し、彼女を撮影していた。

おねさやさんとgyavaさんは、日本人グループでイベントを楽しんでいた。「Anime Expo」が終わった後にはコスプレをしてガンクラブへ行ったそうだ。

Kurumiさんは、定期的に短期留学を行うなど、海外進出に力を入れているコスプレイヤー。私が最も海外で出会う日本のコスプレイヤーの1人だ。「Anime Expo」に2日間参加し、そのままヨーロッパへ行き「Japan Expo」に1日だけ参加。さらに2025年の7月には香港のイベントにも出演した。
アニメだけじゃない、コスプレも最高な「Anime Expo」
「Anime Expo」に参加していた日本のコスプレイヤーたちに話を聞いて感じるのは、とにかくイベントを楽しんでいるということ。私も毎年必ず取材しているからわかるが、日本とは何もかもが大きく違う。現地の人からはたくさん声をかけられるし、突然大声を出す人や、突然踊りだす人もいる。何が起こるかわからないワクワク感が、「Anime Expo」にはある。
とはいえ、確実に規制が出てきている印象も受ける。10年前の「Anime Expo」では、もっと露出高めのコスプレイヤーがいたし、大道芸のように大きな囲みを使ってパフォーマンスをする人がもっといた印象がある。少しずつだがその様相も変わってきているかもしれない。
コスプレではないが、2023年に通路が大混雑して問題となり、翌年は入場口を増やし、導線がしっかりと提示されたことで大幅に混雑が解消された。来場者数が大幅に減ったのではないかと勘違いするほど人通りが良くなった(2024年のときのほうが来場者数多い)。
私にとって「Anime Expo」は人生に1度は参加すべきイベントのひとつだ。この記事を読んで少しでも気になったコスプレイヤーやカメラマン、コスプレ愛好家がいたら、是非とも来年の「Anime Expo」をチェックしてほしい。
(文・写真=DAI)