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黄金期到来!? セ・リーグ優勝を果たした阪神タイガースは、なぜここまで強いのか――注目すべきは「CS免除論」が飛び出すほどの支配力

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このまま優勝……いや、「アレ」を目指すんや!(写真:Getty Images)
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阪神タイガースは9月7日、2年ぶり7度目のセントラル・リーグ優勝を果たした。

ファンたちは喜びのあまり次々と道頓堀川に飛び込み、優勝を祝った。

2022年には、開幕54試合目で自力優勝の可能性が消滅(21世紀における球団史上最速)するなど、記録的な不振に陥ったはずの球団が、なぜここまで成長を遂げることができたのだろうか。

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再現性の高い“型”に基づいた運用が生む安定感と“我慢と競争”の絶妙なバランス

 両リーグ史上最速で優勝を確定させた阪神。

 9月23日終了時点で、投手陣は防御率2.18、被本塁打50、与四球300、完封28と、失点の“元凶”になりやすい被弾と四球を同時に遮断。

 打線は打率.244ながら479得点を積み上げ、四球432で塁を埋めて、盗塁99・犠打132で進め、長短打で仕留める――。量と質を両立した“刻む攻撃”が効いている。守備率.989まで引き上げたディフェンス改善も、総失点の抑制に直結した(※上記含め、本記事のデータはいずれも9月23日終了時点のデータである)。

 攻撃パターンは再現性の高い“型”で組まれ、むやみに日替わりにしない打順運用が出塁〜進塁〜還塁の導線を安定させた。岡田彰布時代から続く、一番に近本、二番に中野を軸に「出塁→進塁→還す」の再現性を上げ、リーグ最多の四球を基点に、走力と小技で確実に前へ進め、最後に長短打で刺す。

 大振り一辺倒に依存せず、相手のミスや投手交代の継ぎ目を突ける作りが、シーズンを通じた得点の底上げになった。

 2025年は佐藤輝明が“完成形に近い”一年に到達。打率.273、39本塁打、97打点で二冠射程に入った。さらに、OPS.920もリーグ1位である。スイングの力感調整でコンタクトが向上し、長打の精度も高まった。

 失策も昨季23から今季は6まで大幅改善し、守備のリズムが打撃にも好循環をもたらした。ペナントレースに関してはMVP濃厚といっていいだろう。

 そのほかの選手も、近本光司が154安打・32盗塁で口火を切り、昨シーズン不調だった中野拓夢も打率.285で復調。森下翔太はリーグ2位の23本・89打点・OPS.823で中軸に厚みを加え、大山悠輔もリーグ3位の72打点で“線”の一員として機能。

 打低環境で.270〜.280台や2桁本塁打、60〜70打点級の選手が複数いる状態そのものが、土台の強さを証明している。

 守備面では、2023年・2024年に記録した失策85から、今季は57へ。チーム全体での鍛え直しが形になり、若手の“我慢”とポジション内競争の“緊張感”が、質を押し上げた。「出塁→進塁→一撃」という明快な手順、守備・走塁は“やること”が先に決まっているため、場面ごとの迷いが減った。

起用法・継投に“確率主義”が透ける藤川采配の構造

 投手陣も盤石だ。先発の才木浩人は12勝・防御率1.55と防御率はリーグ1位、勝ち星は2位。村上頌樹は12勝・防御率2.09・奪三振132で奪三振がリーグ1位だ。さらに、デュプランティエ、伊藤将司、大竹耕太郎などまで“ゲームメイクできる投手”が揃っている。

 リリーフ陣はさらに異次元。石井大智は51試合35H・防0.18、及川雅貴は65試合45H・防御率0.89、岩崎優は31S・防御率1.62、湯浅京己は22H・防御率2.60。前年70登板の桐敷拓馬に一時的な落ち込みがあっても、石井と及川でリカバリーをした。

 さらに、優勝決定後は石井が登板を控えており、ポストシーズンに向けてコンディションを調整しているのも伝わる。被本塁打50、与四球300という“リスクの二大源泉”を抑える投手運用は、藤川球児氏が投手出身でかつリリーフ専任だった経験も生かされている。

 その成果は直接対戦にも表れ、巨人に17勝8敗、2位以下に13.5ゲーム差という支配力につながっている。

 役割と評価軸を明快にし、外部・内部のノイズを最小化。首脳陣のメッセージは一貫しており、選手は“今やるべき最善”に集中できる。強い言葉で「基準」を示し、短期の好不調で方針がブレないため、起用の納得感が保たれ、ミスの連鎖も起きにくい。

 継投は全体のバランスを踏まえて行われ、判断の速さが最終的に勝利をつかむ再現性を高めた。

 今季の支配力ならクライマックスシリーズ免除級と言いたくなるが、現実には一戦必勝。日本シリーズへ駒を進め、交流戦での課題をそこで取り返す――。それが“常勝化”への次の一歩だ。

坂本勇人が目指すべき新しいカタチ

(文=ゴジキ)

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ゴジキ

野球著作家・評論家。これまでに『巨人軍解体新書』(光文社新書)や『戦略で読む高校野球』(集英社新書)、『甲子園強豪校の監督術』(小学館クリエイティブ)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブン、日刊SPA!、プレジデントオンラインなどメディアの寄稿・取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。

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ゴジキ
最終更新:2025/09/25 22:00