【ファッションから見る音楽 邦楽編】クロムハーツがつないだ氷室京介・清春・LUNA SEA J、そしてHIPHOPへの物語

第二回の連載では90年代以降のハードロック/メタル~グランジ~ミクスチャーという海外の流れを解説してきたが、日本の90年代の音楽×ファッションを語る上で外せないキーワードが“クロムハーツ”だ。ロックのアーティストたちがこのブランドを纏い、音楽とともにファッションの熱狂を作り出していったが、その中心にいたのが氷室京介だ。

「氷室さんはクロムハーツと深い関わりを持つアーティストとして知られていて、ツアーグッズをクロムハーツで製作したことでも有名です。レザーパンツにブーツ、白シャツにクロムハーツのアクセサリーというスタイルは、僕を含めた当時の若い世代の憧れの的でした。日本でクロムハーツの大流行を作ったのは間違いなく氷室さんですし、氷室さんからこのブランドにハマった人は本当に多いと思います」
清春が提示した“ミックス”の魅力

黒夢の清春も、音楽だけでなくファッション面でも名を轟かせたアーテイストの一人だ。氷室がクロムハーツをロック・ミュージシャンらしくシンボリックに身に着けたのに対し、清春はアメカジ/古着ブームも巧みに取り入れていた。
「90年代の清春さんは、クロムハーツと合わせてリーバイス501や古着、レッドウィングのエンジニアブーツといった流行のアイテムもカッコよく着こなしていました。ファッションリーダーとして群を抜いた存在だったと思います。後に直接お話をする機会を持ったときも、“本当に服が好きなんだな”と強く感じる方でしたし、カリスマ性は圧倒的でしたね」
Jが貫いたパンキッシュなスタイル

そして日本独自の盛り上がりを見せたビジュアル系というジャンルの中で、ファッションで異彩を放っていたのがLUNA SEAのベーシスト・Jだった。
「多くのバンドが濃いメイクと華美な衣装で個性を競っていたビジュアル系全盛期に、Jさんは革パン、タンクトップというパンキッシュな姿を貫いていました。後に僕のブランドでモデルもしてもらいましたが、海外のミュージシャンみたいに身長も高くてカッコよかったですし、クロムハーツを誰よりもかっこよく着こなすアーティストの一人だと思います」
ロックからHIPHOPへ――受け継がれるクロムハーツの物語
90年代から2000年代にかけて、クロムハーツはロックファッションの象徴として輝き続け、その流れは今も随所に残っている。しかし現在、クロムハーツを新しい形で身に着けることでファッションのアイコンとなっているのは、ロックのアーティストではない。
「最近は若いラッパーがクロムハーツを身に着けることで、また新たな流行が広まっているイメージです。ファッションアイコンとなるアーティストとしては、古着系ではKing Gnuが一定の影響力を持っていますが、いまの若者は海外ラッパーの服を真似することが圧倒的に多いですね」
当初はロック・ミュージシャンに支持されていた梅本氏のブランド・RESOUND CLOTHINGも、近年はHIPHOPアーティストに愛用者が広がっているという。
「最近の若いラッパーには『HIPHOPの服装はこうあるべき』という固定観念がなく、音楽と同じようにファッションでも自由にサンプリングしているのが面白いところです。スニーカーブームもHIPHOPが牽引した部分が大きいですし、クロムハーツの新しい着こなしを広めた点も含めて、今のストリートカルチャー×ファッションの中心を担っているのは間違いなくHIPHOPです」
氷室が広め、清春やJが独自の形で体現したクロムハーツの物語は、時代を超えてHIPHOPという新しいステージで再び輝きを放ち続けている。
(構成=古澤誠一郎)
梅本剛史(うめもと・たかふみ)
RESOUND CLOTHINGディレクター&デザイナー。海外メゾンデニムブランドのデザインや、LUNA SEA、DIR EN GREY、AAA、SMAP、Kis-My-Ft2などのアーティストの衣装製作も手がけた経験も持つ。スキャンダルのある芸能人を自身のブランドのモデルに積極起用することでも話題に。
https://resoundclothing.com/