2年連続ワールドチャンピオンへあと一歩! 大谷翔平・山本由伸・佐々木朗希の日本人トリオはドジャースを再び世界一に導けるか?

再び王者となることはできるのか……。2024年、ヤンキースを4勝1敗で下して世界一に輝いたドジャースは、翌年のポストシーズンでも勢いを失わず、いよいよ“連覇”の目前に迫っている。
今秋のNLCSではブルワーズを4連勝で退け、ワールドシリーズ制覇まで“あと一歩”。連覇となれば、1998~2000年のヤンキース以来の快挙となる。
その物語の中心にいるのが、日本人トリオ――大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希である。
大谷翔平 —— “二刀流”がシリーズの重力を変える
NLCS第4戦は、ポストシーズンの歴史を塗り替える夜となった。先発投手として6回無失点10奪三振、打者としては3本塁打。とくに初回の一発は「先発投手による史上初の“先頭打者本塁打”」という前代未聞の記録だった。相手の配球・継投プランを同時に壊すこの“二面攻撃”は、短期決戦ではほぼ“反則”級の武器だ。
もちろん、大谷の価値は派手な数字だけにとどまらない。肘の手術からの復帰を経て、2025年にはマウンドに戻り、打席ではレギュラーシーズン55本塁打。四球で走者を残し、守備側の意思決定を遅らせる。そうした“見えない得点期待”までも含めて、チームの重心を押し上げている。
山本由伸 —— “長い回”で試合をロックする
第2戦の完投劇は、現代野球の常識に逆らう“長尺の支配”だった。3安打1失点、111球。ドジャースにとっては2004年以来のポストシーズン完投であり、日本生まれの投手としては史上初のPS完投でもある。
打者の反応に応じて球種配分を秒単位で調整し、ストライク先行で攻める。これほど“再現性の高い支配”は、シリーズが長引くほど価値が増す。
昨年は上腕の不調で離脱も経験したが、今秋の投球は「健康」と「制球力」の両立が戻ったことの証明だ。先発がイニングを稼げば稼ぐほど、終盤の不確実性は薄まる。山本はその理念を体現している。
佐々木朗希 —— “9回の門番”で仕上げる
1月にドジャースを選んだ時点で、契約規模は国際ボーナス枠の制約により巨額ではなかった。それでも球団が評価したのは、圧倒的な球威と将来価値だった。
シーズン終盤からは役割をリリーフにシフトし、ポストシーズンでは“9回の門番”として起用された。NLCSでは第3戦のセーブに続き、第4戦では9球で最終3アウトを奪い、スイープに句点を打った。高めのフォーシームと深いスプリットを使い分け、ゾーンを割らずにカウントを整える。短期決戦の「1点差ゲーム」ほど、この特性は効く。
ドジャース連覇を導く「量と静」の方程式
ワールドシリーズにおける分岐点は、まず第一に「量」。スネル、山本、大谷、グラスノーが7回前後まで安定して試合をつくれれば、リリーフの露出は減り、勝率は自然と上がる。第二に「9回の門番」。1点差を拾い続けるためには、フル回転してきた佐々木の安定感が欠かせない。第三に「大谷のマネジメント」。登板間隔、打席数、走塁負荷の最適化が、相手の継投プランを狂わせる最大要因となる。
加えて、下位打線の出塁が主軸の長打価値を倍化させ、守備や走塁の一手がシリーズの流れを左右する。短期決戦において、こうした小さな積み重ねが勝敗を決定づける。
もちろん、不確実性は残る。山本の右腕の再発リスクは最優先でケアすべきで、スネルも長い回を投げるほど球数管理が重要になる。ブルペンは一発で評価が反転しかねないため、これまでの起用ロジックを崩さない柔軟さが求められる。
結論は明快だ。先発が長く、終盤は役割を固定し、主軸はいつも通りの働きをする。この方程式から外れなければ、ドジャースには2年連続のワールドチャンピオンの扉をこじ開けるだけの地力がある。
大谷の歴史的パフォーマンス、山本の完投、スネルの好投。投打の軸が今、最高のタイミングでピークを迎えている。さらに、長年チームを支えたクレイトン・カーショウの“ラストダンス”により、チームの士気はさらに高まっているはずだ。
仕上げの9回を佐々木が静かに締めくくる姿は、まさに王者の再現像そのもの。連覇は奇跡ではない。丹念に設計された「強さ」が、その結果をもたらすだけである。
連覇の条件は、日本人トリオの“いつも通り”
出塁と長打で先手を奪う大谷、7回前後まで試合を固定する山本、最後を短く締める佐々木。「序盤でリードを広げ、中盤でロックし、終盤で密閉する」――この3人が並ぶだけで、ゲームは自ずと優位に展開する。
先発総動員の継投策が主流となる今のMLBにおいて、ドジャースはあえて「長い先発+締めの門番」という古典的勝ち筋を、日本人トリオの力で築いてきた。
連覇までの距離は近い。必要なのは複雑な魔法ではない。大谷が相手の設計図を壊しつづけること。山本が長い回で露出を減らすこと。佐々木が1点差を拾い続けること。これらが“いつも通り”であれば、ドジャースの戦いは自然に勝ち筋へ収束する。
2024年に掴んだ王冠は、もはや偶然ではない。いまの「青い軍団」は、日本人トリオが生み出す重力に導かれ、再び頂点へ引き寄せられている。
(文=ゴジキ)

