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沖田臥竜の直言一撃!

『インフォーマⅢ 最終章 -幻影遊戯-』刊行へ―作者が語る、物語に命を宿す“書く者”としての覚悟

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『インフォーマⅢ 最終章-幻影遊戯-』

 クライムサスペンスの受け継がれし血脈の再来である。

 木原がいた、ポンコツがいた、広瀬がいた、鬼塚がいた、龍之介がいた、トビオがいた、ゆきちがいた、二階堂がいた、キムがいた、冴木がいた……獣たちの熱かった夏が伝説に変わり、新たな獣たちを引き連れて帰ってきたのである。期待してもらっても良いのではないか。これぞザ・クライムサスペンスだ!ということを、私がこの世の中に刻みつけてやろうではないか。

 まもなく出版される最新刊『インフォーマⅢ 最終章 -幻影遊戯-』(アンバウンド・レーベル)。

 ずっと書いていた。去年11月からだろうか。ちょうど1年前からずっと書籍を作るために書き続けていた。小説だけで一時は3冊同時に書いていたのである。なんだったら途中、RIZINファイターの皇治選手の自伝『ビッグマウス』(同)も私が手掛けた。

 それに加えてマンガの原作が3本に、小説の文庫本化。当たり前だが、毎週の連載の仕事だってある。それに週刊誌の仕事だってあるのだ。仕事があるということは、ありがたいことなのだが、言わせてほしい。これだけ仕事すれば、もっともっと儲かると思っていたのだが、世は出版大不況のど真ん中。本を書いて儲かるなんてことは、まずない。ましてや文芸は特にだ。

 それを十分に理解しつつも、私は小説を書いていた。なぜだかわかるか。バカだからではない。バカには書き手の頂点に君臨する小説なんて書けない。ならばなぜ?と思われるかも知れないが、その理由は至極簡単である。私は小説家だからだ。書き手のプロだからだ。何だったら、私が日本で一番の書き手だとすら思っている。

 冒頭でも書いたように、あの木原とポンコツ三島の化学反応コンビが再び帰ってきたのだ。待たせてしまったのならば、すまない。だが案じるなかれである。待たせた分、物語は確実にパワーアップしている。前回は微笑みの国、バンコクが舞台だったが、今度は台湾有事が叫ばれる台湾を舞台に舞い戻ってきたのである。心配するな。私に求められていることがそれだけではないことを、私自身が誰よりも理解している。しっかりと準備をして、前2作を超えるために、帰ってきたに決まっているではないか。  
 
 今作のサブタイトルは「幻影遊戯」である。少しだけサービスすると、このサブタイトルは、今年の日本アカデミー賞監督の藤井道人監督に考えてもらった。それだけでもドキドキわくわくしてもらえるだろう。いつも思うことなのだが、2人でスタートさせた『インフォーマ』が、映像化され、配信され、日本を超えて世界で戦うことになるとは、私自身、当時は想像もしていなかった。

「『孤独のグルメ』のような永遠に続く物語を作りましょう!」

 藤井監督にそう言われて、始まったのが『インフォーマ』であった。ただ2人でやると孤独どころか、バリバリのクライムサスペンスになってしまったのである。

 そして迎えたシリーズ3作目。永遠を伝説に変える瞬間があるのならば、ここではないかと思案し続けて、最終章を迎えることになったのだ。 

精鋭たちが集結してくれたわけ

 私にとって『インフォーマ』は、高校生でも中学生でも良い、とにかく10代の特別な3年間と思ってやってきた。10代の3年間には「例えここで燃え尽きてしまってもかまわない!」という瞬間が確かにあって、その熱量で『インフォーマ』という作品をメディアミックスにかけてきた。決して銭金だけではない戦いである。

 だが、それが自己満足で終わってしまってはならないし、戦う以上は負けるわけにはいかない。

 私の仕事は脳内から物語を生み出し、息吹を吹き込むことで、作品に生命を宿らせることだ。だから書くだけでは終わらないし、執筆前から、東へ西へ時には日本すらも飛び出して走り回るのである。

 そうすることによって、「だったらその船に乗ってやろうではないか」と、『インフォーマ』の名の下に精鋭たちが集結してくれるのだ。そこで汗をかけば、みんなのモチベーションだって上がり、遠い昔、17歳の夏に感じたような儚くとも、かけがえのない時間だったと呼べる思い出へと昇華されるのである。

 小説家という仕事は確かに食べていけないほど、過酷な仕事かもしれない。実際、小説だけで食べている人は、日本には20人もいないだろう。儲かっているといえるレベルまで考えると、5人くらいではないだろうか。その中で私が負けないと言い切れるのは、書くだけで終わらせないからだ。間違っても、ただ書くだけ、あとは「売れろ!売れろ!」と神頼みだけして終わるようなことはしない。

 SNSを利用したプロモーションだけで終わるような真似もしない。まさに唯一無二なのである。それは人間関係においても同じで、構築するのも繋げていくのも、すべて自分ひとりでやってきた。嫌なことでももちろんやるし、相談されれば人のために汗だってかく。困っている人がいれば、例え日々に忙殺されていても、仕事を止めて汗をかく。

 だからこそ、人間関係が広がっていくし、それらは物語へと着地させることができるのである。おそらく、物語をつくる情熱と努力では、唯一無二の作家だと思う。そして、目的を達成する力。決して人頼みに終わらせるようなことはしない。目標を達成するまでは、妥協はしない。

 それを全部『インフォーマⅢ』にぶつけたいと思っている。
 
 例えば、人間は誰しも厳密にいえば人見知りではないかと思う。私だって年々、見ず知らずの人に会うことに抵抗が出てくる。  

 だけど、物語を作り出し、それを紡いでいくことに関しては、そういった感情すら凌駕できる。プライベートなど、遠い昔に自ら手放した。すべては物語を世に放ち、輝かせるためだけにだ。

 『インフォーマⅢ』で明かされるのは、インフォーマは実は木原1人ではなかったということだ。インフォーマの最高傑作は誰か。その眼で焼き付けてもらいたい。今回のインフォーマはこれまで放ってきたインフォーマの常識を全て塗り替えている。

 泣いても笑っても、シリーズ最終章である。ここで燃え尽きても良いという気持ちで生み出してきた。それを手にとって確かめてみてほしい。インフォーマは実在するのかということも含めて。

(文=沖田臥竜/作家・小説家・クリエイター)


『インフォーマⅢ 最終章-幻影遊戯-』
沖田臥竜:著/アンバウンド・レーベル:発行
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10月30日よりamazonで先行発売、11月上旬、全国書店で発売開始

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「週刊タイムズ」の記者・三島寛治は、ヤクザ組織・一車会と台湾の黒社会・赤色幇が盃事を執り行うという情報を得て台湾・台北に取材に来た。何度も死にかけたバンコク以来の海外取材に、三島には嫌な予感しかなかった。そしてそれを実現するかのように現れた木原慶次郎。木原は木原と同じインフォーマだった吹田が奪い取ったブラックリストを追っていた。しかも吹田はインフォーマの唯一の血の掟「身内殺し禁止」を破っていた。こうして三島はインフォーマ同士の激闘に巻き込まれていく……。

沖田臥竜

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』シリーズ(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

X:@pinlkiai

最終更新:2025/10/28 19:40