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祝・ドジャース連覇! 山本由伸の完璧、大谷翔平の統率、佐々木朗希の兆し──2025年ワールドシリーズに刻まれた日本人の軌跡

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優勝の立役者は大谷翔平だけではない! 誰がこんな世界戦を予想できただろうか……。(写真:Getty Imagesより)

 2025年のワールドシリーズはロサンゼルス・ドジャース対トロント・ブルージェイズの対決となり、シリーズは7戦までもつれた末にドジャースが4勝3敗でワールドシリーズ連覇を達成した。

 延長11回の第7戦を5–4で制して2年連続の世界一に。9回のミゲル・ロハスの同点弾、11回のウィル・スミスの決勝弾という土壇場の長打で頂点に到達した。

 ドジャースの連覇は25年ぶりで、現代的王朝の色合いを強めた。

 また、日本人選手がシリーズで際立った活躍を見せたこともあり、日本の野球ファンにとっても特別なシリーズとなった。

「王者復権」と挑戦者の「矜持」

試合を支配する技術──山本由伸という“制御の天才”

 山本由伸はゾーン内で空振りと弱い当たりを両立させる配球でブルージェイズの長打圧力を封じた。第2戦の“完投”、第6戦の“勝利”、第7戦の“締め”という三役を1シリーズで演じきった。

 17回2/3で防御率1.02、被安打10、与四球2、15奪三振、3勝という圧倒的な成績でシリーズMVPを受賞。決着の第7戦では中1日で2回2/3を無失点のリリーフ登板、最後は併殺で胴上げ投手となった。さらに、1シリーズ3勝は2001年のランディ・ジョンソン以来の快挙である。

 第2戦では105球の完投勝利(4安打8奪三振)。直前のNLCSに続くポストシーズン連続完投で、終盤20者連続アウトという“教科書通りの完璧”を披露した。

 日本出身選手のワールドシリーズMVPは2人目(ひとり目は2009年の松井秀喜)。日本球界からのエースがメジャーの最前線でも「量(投球回)と質(与四球抑制)」で支配できることを示した。

 山本由伸のMVPは、「速球派の時代における制御型投手の勝利」である。それはまた、日本的野球の勝利でもあった。

心は熱く、頭は冷静の大黒柱──大谷翔平のメンタリティ

 2025年の大谷翔平は、もはや「奇跡の二刀流」ではない。彼は自らを徹底的にマネジメントする“プロフェッショナル”だ。

 今季は右肘の再建手術明け。走塁、スイング数、投球強度……。あらゆる行動をデータで管理し、“シーズンを完走するためのリミット”をマネジメントしていた。

 第3戦の18回の死闘をフレディ・フリーマンのサヨナラ弾で制した試合。大谷は2本塁打・2二塁打・5四球(うち4敬遠)で9度出塁というポストシーズン史上級の記録を打ち立てた。これで球団の単年ポストシーズン本塁打記録(8本)に並ぶ。

 第7戦は先発し、2回1/3・3失点で降板も複数安打を放ち、WSの勝敗決定戦で複数安打を記録した史上2人目の投手となった。短期決戦の中3日起用という難条件下で、打撃でも存在感を示した。

 第7戦では、3回に先制3ランを浴び、両膝に手をついてうなだれる姿が印象的だった。しかし、そのあとの行動が象徴的だ。数分後には笑顔で仲間を鼓舞していた。

 大谷は、“感情を操る”選手だった。怒らず、焦らず、浮かれず。「心は熱く、頭は冷静に」プレーをした。彼が復帰後もトップレベルで結果を残した理由は、才能ではなくメンタルのリテラシーにある。

 なお第6戦では、ブルージェイズが大谷を今シリーズ5度目の敬遠。相手に「歩かせてもいい」と思わせる構図自体が攻撃の“重力場”となり、後続打者への勝負球配分を変えた。

“次代の怪物”が見せたメジャー初の秋──佐々木朗希

 佐々木朗希はシーズン途中に右肩の違和感で離脱を経験したものの、終盤でブルペン復帰。ポストシーズンでは「短いイニングで最大のインパクトを残す」起用に切り替えられ、ワールドシリーズのロースター入りを果たした。大谷、山本と並び、日本人投手三人が同時に世界一の舞台に立った瞬間だった。

 第3戦の火消しで信頼を積み上げ、第6戦は“最大危機”の前振り役になったとはいえ、8回ゼロで勝ち筋の道中を守った。トータルでは、100mph×スプリットを“短いイニングに圧縮”する設計がWSでも機能した。

 このポストシーズンでの起用は、佐々木にとって単なる経験ではない。NPB時代のように圧倒的な球威と数字で支配する投手から、「どの局面で、どんな一球を投げるべきか」を問われる、キャリアの入り口に立ったことを意味している。

“出場”から“主役”へ──日本人選手が刻んだ新たなワールドシリーズの夜明け

 2025年のワールドシリーズは、日本人投手3人が世界一の舞台で主役級の存在感を示した記念碑的なシリーズとなった。山本由伸は「制御の天才」として球数・四球・球威のすべてを精密に操り、完投・勝利・締めの三役を演じてMVPを獲得。日本人投手の価値を再定義した。

 一方の大谷は、手術明けのシーズンながらも自己管理とメンタルの成熟によってチームの精神的支柱となり、感情をコントロールする力でチームを牽引した。そして佐々木は、短いイニングでの起用ながらも「100マイル×スプリット」を武器に新たなフェーズへの適応を果たし、未来への布石を打った。

 このシリーズは、単なる「日本人の活躍」ではなく、日本野球の哲学がメジャー最高峰の舞台で通用したことを証明した瞬間でもある。

 山本の制御、大谷の統率、佐々木の進化……三者三様のスタイルが融合し、“出場”から“勝利への貢献”へと進化する時代の幕開けを告げた。

前人未到の展望

(文=ゴジキ)

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ゴジキ

野球著作家・評論家。これまでに『巨人軍解体新書』(光文社新書)や『戦略で読む高校野球』(集英社新書)、『甲子園強豪校の監督術』(小学館クリエイティブ)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブン、日刊SPA!、プレジデントオンラインなどメディアの寄稿・取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。

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ゴジキ
最終更新:2025/11/03 22:00