CYZO ONLINE > カルチャーの記事一覧 > ワールドシリーズに日本も注目
ゴジキの野球戦術ちゃんねる

「ドジャース×ブルージェイズ」第6戦中継の視聴率は20.7%! 日本でもワールドシリーズが盛り上がる納得の理由

文=
「ドジャース×ブルージェイズ」第6戦中継の視聴率は20.7%! 日本でもワールドシリーズが盛り上がる納得の理由の画像1
大谷翔平だけではなく山本由伸の活躍があったからこそワールドシリーズは盛り上がった。(写真:Getty Imagesより)

 応援歌も、太鼓も、メガホンの音もない。それでも、球場全体が震えるほどの熱を放っていた。

 2025年のワールドシリーズは、朝の日本にまでその熱気を伝えた。投げる山本由伸、打席に立つ大谷翔平、マウンドを見つめる佐々木朗希……。彼らの一球一打に、日本中のSNSが同時に沸いた。

「鳴り物がなくても、ここまで熱いのか」――。多くのファンがそう口にしたのは、選手たちの気迫と球場の緊張感が、音を超えて伝わってきたからだ。

2025年ワールドシリーズに刻まれた日本人の軌跡

「メジャー挑戦」から「トップ選手の昇華」へ

 ワールドシリーズは今や、“アメリカの頂上決戦”ではない。日本人選手が物語の中心に立ち、WBCの余熱を背負い、配信やSNSがその熱をリアルタイムで共有する。

 第6戦はNHK総合で生中継され、視聴率は20.7%(瞬間最高23.7%/ビデオリサーチ調べ・関東地区)を記録し、第7戦はNHK BSで1200万人、シリーズ全体の平均視聴者は970万人だった。定量的に見ても野球ファン以外の関心を集めていたことがわかる。静寂の中に宿る熱狂……。それが、日本でMLBが盛り上がる理由である。

 かつて、ワールドシリーズは“遠いアメリカの物語”だった。テレビ中継の時差、言語の壁、そして日本人選手の少なさ……。

 しかし今や、それは「日本野球の延長線上」にある。2025年のシリーズでは、大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希が同時に登場。彼らはただの「出場者」ではなく、ポストシーズンという舞台そのものの主役となった。

 視聴者は“海外中継”を見ているのではなく、“日本代表の延長戦”を見ている。この構造の変化こそ、盛り上がりの本質だ。

 大谷、山本、佐々木という三者三様のスタイルは、まるで日本野球の“多様性の象徴”のように重なった。高校、NPB、MLBと、育成環境もアプローチも異なる中で、共通するのは「理詰めで上限を突き抜ける」姿勢である。

 日本人がMLBで成功しているのは、もはや“挑戦”ではなく、“体系的な成果”として認識され始めている。ワールドシリーズの盛り上がりは、彼らが「日本野球が世界基準で通用する」ことを実証しているからこそ起きている。

 また、日本のトップ選手が“世界の標準”をアップデートしている現場であるからこそ、日本でも注目されるのだ。

野球という共通言語が生むドラマ

 WBCは“国と国の戦い”。ワールドシリーズは“文化と文化の融合”。この2つは、似て非なるものである。

 日本人選手がアメリカ人とチームメイトとして肩を並べ、優勝を目指す構図には、“国を背負う戦い”とは異なる魅力がある。

 ドジャースのブルーに包まれたスタジアムで、日章旗が自然に翻る光景……。そこには「日本の勝利」でも「アメリカの勝利」でもない、“野球という共通言語の勝利”がある。

 WBCで感情を昂らせたファンは、ワールドシリーズで戦術・育成・身体管理といった“裏側の知”を学ぶ。エモとロジックの往復運動こそが、シーズン後半から秋にかけて日本を騒がせる理由だ。

 また、日本の球場文化では、応援団の太鼓やメガホンが“臨場感の象徴”だが、MLBのスタジアムは違う。音がなくても、空気が熱い。観客が息を呑む静寂、三振を奪った瞬間に爆発する歓声、ベンチ前で燃え上がる選手たちの声……。それらがひとつのドラマを形づくる。

 日本のファンも、「鳴り物がなくてもここまで熱い」という驚きをSNSで共有し、その“純度の高い緊張感”に魅了されている。

 球場全体が、まるで巨大な呼吸をしているかのように……。一球ごとに、緊張と解放を繰り返す。声援の代わりに、沈黙と爆発が交錯する野球。この“静と動”のコントラストこそが、ワールドシリーズ独特の「気迫の伝わり方」なのだ。

 つまり、日本でワールドシリーズが盛り上がる理由は、「日本人スター」×「視聴のしやすさ」×「無音でも伝わる臨場感」 にある。応援の音がなくても、球場の呼吸と選手の気迫が、画面越しに伝わる。その“静けさの中の熱”こそが、今の日本のファンを惹きつけてやまないのだ。

「王者復権」と挑戦者の「矜持」

(文=ゴジキ)

「ドジャース×ブルージェイズ」第6戦中継の視聴率は20.7%! 日本でもワールドシリーズが盛り上がる納得の理由の画像1

ゴジキ

野球著作家・評論家。これまでに『巨人軍解体新書』(光文社新書)や『戦略で読む高校野球』(集英社新書)、『甲子園強豪校の監督術』(小学館クリエイティブ)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブン、日刊SPA!、プレジデントオンラインなどメディアの寄稿・取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。

公式TikTok

公式facebook

X:@godziki_55

Instagram:@godziki_55

ゴジキ
最終更新:2025/11/06 22:00