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『台湾有事』発言の余波から愛子天皇論まで 週刊誌が煽る“日本の分岐点”

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イメージ画像(写真:Getty Imagesより)

<今週の注目記事>

1「皇室内幕 愛子さま(23)ラオス奮闘で高市早苗首相(64)『買春法改正』の決意」(「女性セブン」12月4日号)

2「ラオス大歓迎で再燃する『愛子天皇』待望論」(「週刊文春」11月27日号)

3「小川晶前橋市長のラブホ釈明集会実況中継」(「週刊文春」11月27日号)

4「藤田文武印刷代2200万円還流先は盟友市議の姉の会社だった」(「週刊文春」11月27日号)

5「高市首相『台湾有事』答弁の何が悪い」(「週刊新潮」11月27日号)

6「『自民党税制調査会』の研究」(「週刊新潮」11月27日号)

7「今田美桜のCM出演料『3億円』を払え!」(「週刊新潮」11月27日号)

8「最高幹部2人が辞任 BBCの本当の問題は」(「ニューズウィーク日本版」11月25日号)

9「4回目MVP受賞 来年3月のWBCに大谷翔平が出場する確率」(「週刊新潮」11月27日号)

10「追悼 仲代達矢の情熱と虚無」(「サンデー毎日」11月30日号)

 いや~、昨日(11月23日)の安青錦の優勝には興奮した! 横綱・大の里が無様に休場し、豊昇龍の不戦勝優勝かとガッカリしていたら、安青錦が大関・琴桜を破り、優勝決定戦へもつれ込んだ。

 その大一番にも「楽勝」して賜杯をもぎ取った。瞬間、場内だけではなく、日本中、いや、世界中から拍手が鳴り響いた気がした。

 ウクライナ出身の21歳で、初優勝。来場所は大関への昇進が確実となった。おめでとう!

 ウクライナの相撲界がどうなっているのかわからないが、来日して3年での快挙。日本語も流暢で、受け答えも当意即妙。

 体は大きくはないが、プロレスラーのように引き締まった身体と美男子ぶり。相撲界始まって以来の舶来スターの誕生である。

 NHKは優勝インタビューでウクライナのことも、国にいるのではないかと思われる両親や兄弟のことも、何も聞かなかった。

 ロシアの反発を恐れたのであろう。肝っ玉の小さい公共放送である。

 ゼレンスキー大統領と電話対談でもすればよかったのに。

 ウクライナには素晴らしい運動能力を持った若者たちがたくさんいるのだろう。彼らが安青錦を頼って日本に来て、サッカーやフットボールなどの名選手になる可能性が開かれた。

 高市早苗総理や参政党のような排外主義者たちを、安青錦は力でねじ伏せて見せた。

 相撲史というよりも、日本のスポーツ界で素晴らしい選手が生まれた。安青錦は日本の相撲も変えてくれるのではないか。期待したい。

 さて、今週は名優・仲代達矢(享年92)を惜しむサンデー毎日の記事からいこう。

 私は、仲代の映画の中では『切腹』と『人間の条件』がベストだと思っている。

 『切腹』は5回、『人間の条件』は10回ほど見ている。私は、仲代が演技がうまいとは思っていない。だが、彼が演じると役に命が吹き込まれる。

 『鬼龍院花子の生涯』のやくざの親分役は滑稽だが、仲代でなかったらあのような余韻を残す人間像にはなっていなかっただろう。

 映画史家の伊藤彰彦によれば、東京・目黒で生まれたが、8歳の時に父親を亡くし、極貧生活を送ったという。

 1945年5月、米軍による山の手空襲の時、12歳の仲代は取り残された少女の手を引いて必死に逃げた。急に彼女が軽くなったと思ったら、手だけが残っていた。仲代はその手を放して逃げた。

 そこに仲代の人間として、俳優としての原点がある。

 敗戦後、困窮の中でむさぼるように本を読み、映画や舞台を見、1952年に俳優座養成所に入所した。

 そこから黒澤明の『七人の侍』のエキストラに行かされるが、たった2、3秒の通りすがりの浪人役を黒澤に徹底的にしごかれた。

 その時の屈辱を仲代は終生忘れなかった。だが、黒澤監督はそれから仲代を使い始める。『用心棒』『椿三十郎』『天国と地獄』など。

 仲代は大藪春彦原作の『野獣死すべし』で、「60年安保闘争直前の戦後世代の虚無と情熱に形を与え、時代のアイコンとなった。そして『野獣死すべし』は、日本映画が表層的なヒューマニズムと決別し人間と社会の暗部に迫ったフィルムとして、いまも映画史に聳え立つ」(伊藤)

 仲代は妻の宮崎恭子とともに「無名塾」を立ち上げ、役所広司などの名優を育てた。

「仲代の死で戦後の映画と演劇は終焉したと、私には思える。仲代が戦争を語り継いだように、いかに仲代らの遺産を継承・検証するか。それは私たちの手に委ねられた」(同)

 『野獣死すべし』がAmazonプライムにあった。

 今日は私の誕生日である。夜は一人、仲代を見て眠ろう。

 ところで、このところWBCの話題がしきりである。大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希が出られるかというのだが、新潮でもそうだが、否定的か、大谷は出ても、アメリカでの決勝戦にだけ出るのではないか、それも投手は封印するという見方が多いようだ。

 それは、前回のWBCに出場し、打者に投手に大車輪の活躍をしたが、シーズンに入り後半疲れが出て、ついには右肘の靱帯損傷で二度目の手術をすることになってしまったからである。

 それに、オールスターの前のホームラン競争に出たことがあったが、あまり疲れるので、それ以降は出ていない。

 大谷とて人間である。それに今年は本格的な二刀流復活の年である。ドジャースのロバーツ監督も「私としては出てほしくない」とはっきりいっているのだ。

 投手としてだけの山本も佐々木も出ないだろう。大谷はバッターとしてだけ出場するのではという“期待”は大きい。

 新潮は、出てもアメリカで行われる準決勝以降に出場するのではないかと見ているようだが、どうだろう。

 他の報道では、来年のWBCはネットフリックスが独占してしまうので、日本でも地上波では見られない。

 だとすれば、前回のようなフィーバーは起きないから、大谷のモチベーションも下がっているという。

 私も、大谷のWBC参加はやめた方がいいと思っている。やはり年齢的なこともあるのだろう、今シーズンの大谷には時々疲れが見えた。特に投手の時にそれが顕著だった。

 もう31歳。肉体的に二刀流は厳しくなってきていることは間違いない。

(編集部注:大谷は11月25日、自身のInstagramでWBCに出場する意向を表明)

 それに、WBCを開幕前にやるのをやめたらいい。シーズン後に、真の「ワールドシリーズ」として、世界ナンバー1を決める大会にしたらいい。

 昔は、メジャーリーガーたちがシーズンオフに日本に観光旅行気分で来て、親善試合を巨人や阪神などとやったことがあった。

 その当時は、メジャーリーガーたちのパワーに圧倒されたが、この10年、両者の力は接近しつつある。特に日本の投手の充実ぶりは、大リーガーを凌駕している。

 真の世界選手権を戦う用意は日本側にもできた。読売新聞も「長嶋茂雄賞」をつくるなら、世界選手権で活躍した選手に贈ることにすればいい。

 それこそ、長嶋の名が世界に残るはずだ。

 お次は、英国が世界に誇るBBCが大きく揺れているというニューズウィーク日本版の記事。

 以下は朝日新聞デジタル(11月10日 5時35分)から。

《英公共放送BBCは9日夜、ティム・デイビー会長(58)の辞任を発表した。トランプ米大統領の演説を恣意(しい)的に編集したなどの指摘があり、国内外で「偏向だ」とする批判が高まっていた。

 発表によると、デイビー氏は自ら辞職を決めた。その声明では「いくつかの過ちがあり、私は会長として最終的な責任を取らなければならない」と説明している。

 BBCをめぐっては英紙テレグラフが今月、BBCの独立外部顧問から理事会側に送られていた内部文書を入手。看板ドキュメンタリー『パノラマ』の昨年10月放送分で、トランプ氏の発言が改ざんされていたことなどを指摘していた。

 トランプ氏は2021年1月、連邦議会議事堂襲撃事件の直前に演説したが、BBCは演説中のトランプ氏の別々の発言をつなぎ合わせて「議事堂まで歩こう。私もあなたたちとそこにいる。そして戦う。死に物狂いで戦う」と、暴動を直接的に指示したように受け取られる編集をしていた。

 これを受け、ホワイトハウスから「100%のフェイクニュース」「左派のプロパガンダ機関」(レビット報道官)と非難されたほか、ジョンソン元英首相や英国の複数の政治家から批判が集中。英議会下院のメディア担当委員会も、10日までに見解を示すようBBCに求めていた。》

 あのジャニー喜多川の性加害問題をいち早く取り上げ、旧ジャニーズ事務所を崩壊に追い込んだBBCが、トランプ大統領の発言の前と後ろをつなぎ合わせ、議事堂攻撃を指示したように編集して放送したというのだ。

 会長とニュース番組のCEOが辞任するという騒ぎになった。

 責任を取るのは当然だろうが、あのBBCがなぜという疑問は残る。

 ニューズウィーク日本版で英国ブルネル大学国際関係学名誉教授のスティーブン・D・ピカリングは、

「今回の一件は信頼低下にさらされるBBCの長年の問題の証でもある」という。

 BBCへの信頼度は、政治的アイデンティティに左右されるというのだ。筆者たちは22年12月から24年6月まで、英国内の1万1170人の調査を実施し、BBCに対する見方は支持政党の違いによって著しく違うことが判明したという。

 19年の英国の総選挙での投票先を解答者に尋ねたところ、BBCへの信頼度が7段階評価で一番高かったのはリベラル派の自由民主党候補へ投票した層で、平均値は4.54だった。

 労働党支持者は3.88で、保守党支持は3.17。注目すべきは右派のブレグジット党(20年に「リフォームUK」に改称)支持層では2.16にどまったという。

「リフォームUK」は最近の選挙で躍進している党だそうだ。

「そのせいで、正当性をめぐる深刻な課題が生まれている。BBCが信頼を失っている層こそが、BBCを取り巻く政治的環境を形づくる傾向が強まっているからだ」

 トップ辞任という形で危機が勃発した一因は、「BBC不信と結びついた政治潮流はもはや周縁的ではなく、英政治の中心に位置している」というのである。

 そして結論は、

「BBCはどんな人が、どんな理由で、どのようにBBCを受け止めているかに向き合う必要がある。さもなければ、BBCを特別な存在にしてきたもの自体を失うことになりかねない。すなわち、大きく分断化した社会で、広く共有される公共放送という役割だ」

 私はこの意見とは少し異なる考えを持っている。BBCはこの国の「皆様のNHK」より幅の広い、リベラルな放送局だと理解している。

 時には厳しい政府批判も辞さない。保守党が台頭してくれば来る時こそ、このリベラルなBBCの役割は大きくなってくると思う。

 世の中の流れに押し流されるのではなく、リベラルの旗を掲げ、BBCにはもっと頑張ってもらいたい。

 そうでなければ、アメリカやこの国のように、極右政党やウルトラタカ派の偏り過ぎたリーダーが出てくるのを止められない。

 英国だけは、BBCだけは、リベラルの砦を守っていてほしいと切に思う。

 お次は新潮から。

 人気女優の今田美桜(28)の所属事務所がCM出演料を巡り、訴訟を起こされていることが発覚。大きな話題となっていると新潮が報じている。

 今田美桜の所属事務所コンテンツ・スリーの訴訟トラブル。新潮の記事によると、2025年6月、大手芸能プロダクション・ケイダッシュグループの田辺音楽出版が、今田の所属事務所コンテンツ・スリーに対して、約3億円に及ぶ報酬支払いを求めて訴訟を起こしたというのである。

 今田は9月に終了したNHK朝ドラの『あんぱん』のヒロイン役をやり、国民的な人気を獲得し、今年の暮れの紅白でも司会に抜擢された、今飛ぶ鳥を落とす勢いの女優だそうである。

 今田がデビュー当時、大手芸能プロの『ケイダッシュ』グループの田辺音楽出版関係者がキャスティング方面で尽力していたため、過去にCM出演料の3割を田辺音楽出版に支払う取り決めがあったという。

 ここは周防郁雄と並んで、芸能界のドンといわれた川村龍夫が会長を務めていたが、川村は今年7月に亡くなった。

 それとは直接関係はないのだろうが、4年ほど前からコンテンツ・スリーが直接契約をするようになり、2024年夏に「3割支払」の契約を突如終了する旨を通達してきたそうだ。これを機にトラブルが生じ、これまで払われていなかった契約料3億円あまりについて争うことになったというのである。

 今田のCM契約は現在15社に及び、日本モニター2025上半期CM起用社数では第3位にランキングしていて、1位になるのも時間の問題といわれているようだ。

 コンテンツ・スリーというのは元々映像制作やアニメ事業などを手掛ける会社だったが、今田が入ってきたことにより、芸能プロダクションに変わったという。

 だが芸能プロとしての実績もないため、川村会長の右腕といわれたSを頼り、その際、対価として「今田のCM出演料の3割を田辺音楽出版に支払うという取り決めが交わされた」という。

 だが、S側は、今田の出演料などは、事務所がまだ脆弱なためにもらわず、後々、CMが決まってから受け取ればいいという内容だったそうだ。

 ずいぶん太っ腹ではないか。

 それでは、今田が売れっ子になったから払わないというのは、コンテンツ・スリー側が悪いのではないか?

 契約終了通知を受け、田辺側がCM出演料契約に関する情報開示を求めても、コンテンツ・スリー側は拒絶したというのである。

 川村が生きていて、周防が健在なら、このようなことは起こりえなかっただろう。

 ドン支配の終焉を実感させる“事件”ではある。

 お次も新潮から。伏魔殿といわれる「自民党税制調査会」の闇に切り込んでいる。

 私も、自民党の税調についてはほとんど知らない。朝日新聞デジタル(2025年11月19日 16時00分)に税調についてのQ&Aが載っているのでそれを紹介しておこう。

《Q 税調とは。

A 自民党の税調は、結党4年後の1959(昭和34)年にできた。形式上は党内の一組織に過ぎないが、毎年の税制改正の中身を決める大きな権限を握る。「国民の負担となる税制は、選挙で選ばれた政治家が決めるべきだ」という考え方があるためだ。

毎年末に与党の税調が「税制改正大綱」という改正案をまとめる。ここに書かれた減税や増税などの内容が、そのまま政府の方針となり、それを実現するための関連法案が年明けの通常国会に提出される。

党税調とは別に、政府の税調も存在する。かつては党税調よりも強い権限を持っていたが、いまは弱まり、中長期的な視点から税制のあり方を検討する学術色の強い組織となっている。

Q どんな議論をして税制改正の中身を決めるのか。

A 党税調の中でも特に大きな権力を握るのが、「インナー」と呼ばれる幹部たちだ。業界や省庁などから寄せられるさまざまな要望を聞き、財務省とも意思疎通しながらどんな改正にするかを検討する。インナーが非公式な会合の場で議論を進め、そこで固めた改正内容を、税調メンバー全員が集まる会合に諮る流れが定例化している。

1980年代にインナートップの税調会長を務めた山中貞則氏は、「首相に(税制改正を)判断する能力はない」など強気の発言で知られ、「税調のドン」と呼ばれた。

Q 密室で決めることに問題はないのか。

A その点を問題視する声は、自民党内からもあがっている。一方で、税調の決定内容は関連法案に反映されて国会で審議され、可否が判断される。そのため、「密室で決めているわけではない」という反論もある。

 少人数のインナーに権限を集中させるしくみは、調整の見通しをつけたい財務省にも利点が大きいという指摘がある。

Q 今も大きな権限を握り続けているのか。

A かつては首相でさえ口出しをためらう「聖域」と呼ばれたが、最近は陰りが見えている。NISA(少額投資非課税制度)の拡充など、首相の意向に沿った改正を実現することが多くなった。

 さらに、衆参両院ともに少数与党となったことで、与党だけの意向で税制改正の中身を決められなくなった。野党の協力がないと法案が通らないためだ。

 衆院のみが少数だった昨年度は、所得税がかかり始めるライン「年収の壁」について、与党税調がいったん引き上げを決めた後、国民民主党の意向を反映してさらに引き上げた。今年も野党からの減税圧力は強く、すでにガソリンの旧暫定税率を廃止することも決まった。》

 高市総理は、“ラスボス”といわれた宮沢洋一のような財務省に近い重鎮たちの首を切り、小野寺五典を会長に据え、ナンバー2の小委員会の委員長に山際大志郎元経済再生相を就けた。

 以前からのメンバーでは、森山裕前幹事長を留任させたが、森山は会合にも姿を現さず、インナーを辞退したことが報じられた。

 だが、メンバーを一新して大丈夫なのかという疑念は当然ある。

 長年税調会長を務めた野田毅はこう語る。

「(インナーに求められる資質としては)政策の重要性や優先度合いを総合的に理解しておく必要がありますし、相反する利害を把握し、利害調整を図らなければならない。まさに政治なんですよ。ある程度の経験が必要です。急に入った人にはとても理解できないし、どう調整するのかも分からない」

 高市総理がどう政府税調を変えていくのかはわからないが、ごり押ししていけば、混乱が起きるというのは元朝日新聞の木代泰之である。

「高市さんは、最終的には密室で税の専門家たちが決めてしまう税調のやり方を変えたがっているのでしょうが、税の話は全部オープンにしたら議論百出で前に進みません。業界の利害などが前面に出てきて収拾がつかなくなるのは目に見えています」

 さあ、何でもかんでもサナエ流に変えたがっているようだが、その先に待っているのは天国か地獄か?

 サナエ流を実践したのが国会での「台湾有事は日本の有事」発言だったが、中国側の反発は彼女の想像を超えていたのだろう。

 今さら撤回はできず、さりとて、習近平国家主席に会う術はない。トランプ大統領も助けには来てくれないし、八方ふさがりのサナエだが、新潮や産経新聞、月刊HANADAなど、「彼女の発言のどこが悪い」と援護してくれるメディアもないわけではない。

 新潮のいい分を聞いてみようではないか。

「かつて安倍・菅両政権で国家安全保障局長を務めていた北村滋氏に聞くと、

『基本的には従来の政府見解から外れていませんし、法的解釈として間違っていない以上、高市総理も発言撤回はしないでしょう。仮にそうしたら、おかしな話になってしまいます』」

 次は、駐米大使などを歴任した杉山晋輔のいい分。

「『存立危機事態の答弁については、高市総理は誰もが考えていた当たり前のことを普通に言っただけ。問題だと憤る指摘がありますが、全く理解できません』

 と話すのは、外務省時代に外務事務次官、駐米大使を歴任した杉山晋輔氏。

『「存立危機事態」とは、国際法上の集団的自衛権を行使する事態のことです。日本が武力攻撃をされているわけではないけれど、わが国と密接な関係にある他国が攻撃されることで、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される。そうした明白な危険がある場合に限り、自らはやられていなくても助けていいというもの。これを日本は国内法で規定しています」(同)

 杉山氏が外務審議官だった2015年、安倍政権下で成立した安保法制で、初めて盛り込まれた概念だった。

『その当時、国会の法案審議でも具体的にどのような事態を指すのかは随分と議論になりましたが、政府は「事態を総合的かつ客観的に判断する」と答弁するだけにとどめていました。ところが、高市さんは首相として初めて公式の場で台湾有事を例に答弁した。そのことが批判されていますが、役人が書いた木で鼻をくくったような答弁、いわゆる“木鼻答弁”をせず、一般国民にも分かる言葉で説明したのだと思います』同)

 杉山氏はこうも続ける。

『役人が書いた答弁は何を言っているのかよく分からないでしょう。それに対し高市さんは具体例を挙げながら、当たり前のことを言ったに過ぎません。日本の最西端・与那国島の目と鼻の先にある台湾で何かが起きたとします。直接自分に銃が向けられて殺されるわけではないにしても、お隣でそのような事態が起きていたら、いつ自分に火の粉が降りかかってくるか分からない。全然知らん顔をして関係ないなんてことにはならない。普通の人でも、そう考えるのではないでしょうか』」

 もうこのくらいでいいだろう。

 日本の中でも「分断」が起きていることはよくわかる。

 しかし、仮想敵国としている中国に対して、土足で踏みつけるような発言をすれば、どのような結果を招くか。

 それさえ判断できない総理に、この国を任せるわけにはいかないことは、いうまでもない。

元木昌彦

編集者。「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"。

元木昌彦
最終更新:2025/11/25 17:00