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サナエブームに潜む危険、迫る尖閣、旧統一教会の混乱── 週刊誌が描く“揺らぐ日本”の一週間


 新潮によると、「冬眠しないクマ」が各地で目撃されているという。“穴持たず”とも呼ばれる、冬に出没するクマの多くが、実は「子グマ」なのだという。
なぜ、冬眠しない子グマが急増しているのか?

 富山市ののどかな田園地帯に突如、静寂を切り裂く悲鳴が上がったのは12月4日未明のことだ。

「新聞配達中だった高齢の夫婦が相次いでクマに襲われたのです。最初に夫(75)が、続けて付近で配達していた妻(70)が襲撃され、ともに顔などに大ケガを負って救急搬送されました。二人とも命に別状はありませんでしたが、現場には多量の血痕が残されていました」(通報を受けた富山西署関係者)

 現場から逃走したクマの行方はいまも不明で、地元猟友会などによる捜索が続いている。二人を襲ったのは同じクマとみられ、目撃情報によると体長は約1メートル。「子グマの可能性が高い」(地元メディア関係者)という。

 富山県以外でも、12月に入って北海道や青森、新潟、長野、山口の各県で子グマの目撃情報が寄せられているという。

 岩手県の北上市猟友会会長の鶴山博(76)によれば、

「例年であれば、クマを見かけるのはせいぜい11月20日ごろまでです。それ以降は目にすることはまずなかった。ところが今年は、北上市内だけで先月20日と28日、さらに今月5日に目撃され、しかも全てが子グマでした。28日のケースでは、小学校の敷地内に入り込んだ末に捕獲されましたが、鋭い爪をしていて、子グマといっても容易に人を傷つけることがあり得ると実感しました」

 通常、クマは11月後半から3月ごろまで冬眠し、この期間の目撃情報は急減する傾向にあるという。しかし今年は「冬眠しないクマ」が各地に現われ、中でも子グマの出没事例が際立っているそうだ。

 山梨県では昨年11月に目撃されたのは33頭、うち子グマ(単体)は7頭だった。しかし今年は63頭(11月)と倍増し、うち子どもは20頭(同)と約3倍に上った。
鶴山はその理由として、

「昨年、私の管轄エリアで駆除した数は5~6頭に過ぎません。しかし今年はすでに40頭近くを駆除しています。クマのエサとなるドングリが今秋は凶作だったため、食べ物を求めて山から市街地に下りてくるクマが増えているようです。出没数が多くなった分、駆除数も7倍程度に膨れ上がったわけですが、その結果、親を失った子グマを数多く生み出したのかもしれない。本来、幼獣は親から冬眠の仕方を教わりますが、駆除がその妨げになっているのでは……」

 クマの生態に詳しい石川県立大学の大井徹特任教授がこう話す。

「捕獲数が急上昇している裏側で、母グマが駆除されて子どもだけが残されたケースも相当数あると考えるのが妥当です。一般的に子グマは冬眠期間中の1月ごろに生まれ、その後、1年半ほど母グマと行動を共にします。その間に大木の一部が腐り空洞化した場所や、根返り(樹木が根っこから転倒した状態)の際にできた穴など、冬眠に適した空間を探すすべを学びます。しかし穴探しの経験や学習機会を奪われると、独り立ちしてもどこで冬眠すればいいのか分からなくなる。今年に入って、そんな子グマが増えている現実は否定できません」

 それに加えて、

「今後も、冬眠するすべを知らない反面、エサのある場所を知った子グマなどが人間の生活領域のすぐそばを徘徊する可能性は高いでしょう。さらに注意を要するのは、エサにありつけなくなった幼獣が穴の代わりに、空き家や納屋、車庫といった人が普段あまり出入りしない場所に潜り込んで冬眠するケースです。そういった不測の事態にも、今年の冬は備える必要が出てくるかもしれません」(同)

 クマが出没する県の人たちは、冬の間も気が気ではない。「クマった」などといっている場合ではないのだ。

 お次は文春から。

 安倍晋三元首相銃撃事件で殺人などの罪に問われている山上徹也被告(45)の裁判が佳境を迎えている中、(旧)統一教会の田中富広会長が12月9日、渋谷の教団本部で会見を開き、唐突に、辞任すると表明した。

 事態急転の裏には何があったのか?

 文春によれば、唐突に見えた会長交代劇の裏には、韓国と日本の間の、カネの使い道を巡る綱引きがあったという。

 会見に先立つ11月28日、故・文鮮明教祖の孫に当たる文信出が幹部を連れて、日本の教団本部を訪れたという。信出は、文教祖と韓鶴子総裁の長男・文孝進(故人)の長男だそうだ。

 今年4月、弟の信興と共に、祖母の韓総裁から「天愛祝承子」に任命されたというが、これはまだ20代の若者2人が、後継者の指名を受けたことを意味する。なぜいま来日したのか?

 現役信者は、「元信者や現役信者に対する補償を止めさせ、そのカネを韓国へ送らせることが目的です」と話す。

「日本の統一教会は、今年三月に東京地裁で解散を命じられて即時抗告。年度内に高裁の決定が下ると見られる。安倍晋三元首相銃撃事件も、来年一月に山上徹也被告に判決が出る。そんな中で教団は十月末、〈法と証拠に照らして行ってきた従来の対応を転換し、法の枠を超えて集団調停で被害を訴える方々と向き合い、早期解決を図る〉(HPより)と称し、『補償委員会』を立ち上げた。

 実務には、橋下徹弁護士の事務所に所属する弁護士人らが当たり、補償の申し込みを受け付け中だ。

『田中会長は二〇二三年十一月に、「被害補償の原資として、六十億円から百億円の供託を国に提案する」と語ったことがあります。これは実現しませんでしたが、補償委員会の設置はその延長です。教会改革推進本部長の勅使河原秀行氏は「解散命令を回避したい狙いもある」と語りましたが、本当にそれが目的なら遅きに失している。法人の解散が免れない以上、世間の印象を少しでも良くしておき、任意団体になった後の活動をやりやすくするのが狙いです」(同前)

 日本の統一教会は韓国本部の支配下にあるため、設置の了承は当然得ていた。事情が一変したのは、九月の韓総裁の逮捕に伴う権力の交代だった。いま韓国の本部で最高権力者として君臨するのは、かつて韓総裁の秘書室長を務めていた、鄭元周という女性だ」(文春)

 韓総裁は拘置所暮らしが続いているようだが、鄭は逮捕を免れて在宅起訴に持ち込むことに成功して、韓総裁が住んでいた教団の聖地・清平の天正宮で暮らしているという。

 韓国の教団では11月17日から、「真のお母様法務費用支援のための特別献金」が始まったそうだ。

 現在、韓総裁を始め幹部14人が被疑者または被告人となっているが、豪華弁護団の費用として10億円以上が必要だとされる。それを教団が払うと、業務上横領または背任の可能性が生じてしまうため、信者から集めなければならないが、信者の少ない韓国ではとても調達できない。当てにされるのは、これまで通り日本の信者から搾り取ろうというのだ。

「鄭氏ら韓国側の幹部は、いまさら補償委員会を立ち上げて弁済を始めても、法人の解散が覆る可能性はないと見ている。ならば、東京高裁が解散の決定を下して清算手続きが始まる前に、できるだけ多くのカネを急いで送れというわけだ。

『信出氏らの、返金より韓総裁の裁判のための費用を出せという要求に対し、常に韓国の言いなりだった日本側は抵抗した。そのため、元々扱いづらかった田中氏は事実上解任されました。日本の幹部や信者の間では、反発が強まっています。会長さえ韓国の指導者が使い捨てる消耗品に過ぎず、『彼らの関心は日本の献金であって、我々ではない』と不満が広がっているのです』(教会関係者)」(文春)

 文春は統一教会の広報渉外局に事実関係を尋ねたが、

「信出氏の本部訪問は認めた上で、補償より裁判のためにカネを出すよう要求したり、教会長クラスに1人100万ほどの支払いを要求したことは〈一切ありません〉。訪日は〈日本の家庭連合の青年メンバーとの交流などが主な目的でした〉と答えた」(文春)という。

 韓国ではいま、李在明大統領が名指しこそ避けながらも統一教会の解散検討を促したことで、風向きが変わりつつあるという。

 追い詰められた教会が「最後のあがき」をしているということなのだろうが、信者への賠償は決しておざなりにさせてはいけないこと、いうまでもない。

 ここからは高市首相関連が4本続く。

 まずはポストの「尖閣有事」のシミュレーションから。

 中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射により、さらに緊迫の度を増している日中関係。そんななか懸念されているのは「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる事態だと、ポストは主張している。

 ミサイル駆逐艦を随伴した中国北海艦隊の空母「遼寧」打撃群は沖縄南方海上の第一列島線を越えて太平洋に進出後、日本本土に向けて北上を開始。遼寧を発艦した殲J-15戦闘機が沖縄南方海上でスクランブル発進中の自衛隊のF-15戦闘機に向けてレーダーを照射、“ロックオン”したことで緊張が高まった。

 見逃せないのは尖閣諸島周辺の緊張だとポストはいうのだ。

 さらに中国外務省はサンフランシスコ平和条約の「無効」を主張して「尖閣は中国の領土」と繰り返し、中国国営メディアのチャイナ・デイリーは「琉球は日本ではない」とまでいい出している。

 防衛省・自衛隊の情報分析官や幹部学校戦略教官室副室長などを務めた軍事・情報戦略研究所所長の西村金一(元陸自一佐)はこう指摘する。

「J-15戦闘機によるレーダー照射も、尖閣周辺での海警局の機関砲搭載艦の航行にしても、中国は示威行動のレベルを一段階かあるいは二段階くらい引き上げていることがわかる。日本の出方を見極めたうえで次の段階に進むことを考えているのではないか」

 次の段階とは?

「中国が台湾を侵攻する場合、青島の北海艦隊(北部戦区海軍)が北から台湾の東側海域に進行、寧波から東海艦隊(東部戦区海軍)が西側海域に進行、そして湛江の南海艦隊(南部戦区海軍)が南から台湾の東側に回り込む作戦が想定されます。そのうち北海艦隊の進行ルートは尖閣諸島や沖縄などの南西諸島を通過しなければならないが、日本がここに対艦ミサイルや対空ミサイルを配備すると台湾の東側に向かうのが困難になる。中国が台湾への軍事侵攻を考えているのであれば、まず尖閣、そして南西諸島を制圧するという動機が生まれるわけです」(同前)

 台湾有事ではなく、尖閣有事の危機が高まっているというのだ。

 駐中国大使館防衛駐在官や海自の21航空隊司令を歴任した元海自一佐の外交安全保障専門家・小原凡司(笹川平和財団上席フェロー)も同じ見方だという。

「中国からすれば台湾と尖閣は一体なので、中国が台湾侵攻の前に尖閣を強硬に取りにくるということはあり得る」

 2016年には中国の尖閣への大攻勢があった。

「同年8月6日午前8時過ぎ、尖閣諸島の接続水域に中国海警局の巡視船6隻が侵入。さらに周辺海域に突然、約230隻もの中国漁船が出現した。同日午後には、海警局の巡視船1隻が加わって7隻が接続水域に侵入し、8月8日には、海警局の巡視船など公船が15隻、漁船の数は400隻に達した。

 当時の安倍政権は海保の巡視船に出動を命じる一方、『偶発的衝突』に発展しないように外交ルートで中国に厳重抗議したが、中国は2016年の段階で、いつでも尖閣を奪い取れるだけの作戦と準備を整え終えたと考えておくべきだろう。

 日本政府もこの事案をきっかけに『尖閣領海警備強化のための体制整備』を決定。中国公船の大型化、武装化に対応できる巡視船や航空機、基地の増強を進めてきた。

 2023年4月には、防衛大臣が有事に海保を指揮できる『統制要領』を策定し、尖閣諸島への武力侵攻が起きた場合を念頭に、海保が大型無人監視機『シーガーディアン』で集めた情報を自衛隊と即時共有する仕組みを作り、海自と海保の共同訓練も実施している」(ポスト)

 かくして、尖閣をめぐり、中国軍と自衛隊が……ということになる。

 私は、日中関係がギクシャクしているときに、もし日中戦わば的な記事はやめたほうがいいと思っている。

 戦争はプレステにある疑似戦争とは違うのだ。ウクライナやガザの映像を見れば、戦争は人殺しであることは、誰でもわかるはずだ。

 日本は憲法で平和を守ると宣言している国だ。戦争ではなく外交で、話し合いで紛争を解決するのが、この国のやり方である。

 いたずらに戦争などといわない方がいい。中国が心底嫌いでも、隣国は動かすことなどできないのだから、外交、両国民たちの交流で、お互いをわかり合うことを優先すべきである。

 国のトップが「台湾有事」などと軽々しく口に出すから、頭の軽い連中が付和雷同する。このことこそが一番怖いことだと、まず高市早苗が知るべきである。

 ところで、新潮は地元の宗教法人から「3000万円」もの違法献金を、高市首相は受けていたと報じている。

 政治資金規制法で、政治資金団体への寄付は、企業の規模に応じて年間の上限が決まっている。資本金が10億円未満の場合、年間の寄付額は計700万円を超えてはならない。

 しかし、奈良県選挙管理委員会が11月28日に発表した収支報告書によれば、高市早苗首相(64)が代表を務める「自民党奈良県第二選挙区支部」が、昨年8月26日に東京・銀座の「鳥羽珈琲」から1000万円の寄付を受けているが、同社の資本金は1億円で、上限を超えている。

 支部側は、「事務的なミス」だとして、250万円を返金し、その後、寄付金が750万円に訂正されたという。

 総理までがこの体たらくでは、このような“ザル法”で政治とカネの問題はいつまでたっても解消しはしない。

 しかし、これだけでは済まないと新潮はいう。

 ここへきて、別の献金主に注目が集まっているが、その献金主は、人の出入りがほとんどないという”謎の宗教法人”だったというのである。

「その宗教法人は『神奈我良(かむながら)』と言い、所在地は高市首相の地元である奈良県の奈良市。先の収支報告書には、昨年12月13日、同法人が自民党奈良県第二選挙区支部に3000万円の寄付をしたことが明記されている。宗教法人が政党に3000万円の寄付を行う場合は、前年にかかった経費が6000万円以上でなければならない。そう規正法には定められているのだが……。

 『神奈我良』のホームページによると、神社名は『大和皇(やまとすめら)神殿』といい、天照大神や素盞嗚尊などを祭っているとある。さらに法人の目的としては、

 〈古事記・日本書紀・万葉集を所依の教典として、この教義をひろめ、儀式行事を行い、修養者を教化育成すること〉

 などと謳われている」(新潮)

 それはJR奈良駅からほど近い住宅街にあるそうだ。2階建ての民家のようで、入り口には注連縄、祭壇、賽銭箱が置かれている。

 詰めていた高齢女性に聞くと、

「私はすぐ近くに住んでいて、日中は神社のお留守番を頼まれています。大体毎日、お昼から夕方まで入り口を開けてあります。無給ですが、事務をしているわけではありません。何も仕事はないのです」

 とのことで、

「人の出入りはほとんどありません。信者さんも氏子さんもいませんし、行事もないので、お金は入ってきません。太鼓をたたく人もいませんし、神殿の電気をつけても仕方ないから、普段は暗くしています。トイレットペーパーなどの備品は、私が自腹を切っています。施設でかかっているお金といったら、電気などの光熱費や水道代くらいですかね」(同)

 ちなみに2階は物置になっているそうだ。女性が「留守番」を引き受けてから3年ほどたっており、その間、こうした状況が続いてきたという。

 こんな“貧相”な神社が高市に3000万円寄付? なぜだ!

 そんな「神奈我良」の代表委員は川井徳子(67)という女性で、奈良県内で手広く事業を展開する「ノブレスグループ」の代表でもあるそうだ。

 父親は運送会社を経営する傍ら、右翼活動をしていたという。

「今回は『神奈我良』からの3000万円とは別に、個人で1000万円、合計で4000万円を寄付している。これは昨年の同支部の収入の2割超にあたる大金です」(全国紙デスク)

 宗教ジャーナリストの小川寛大は、「1年間で6000万円もの経費を使う宗教法人など、現実にはほとんどありません」という。

「実際に、『大和皇神殿』の入り口の記帳台に置かれた芳名帳を見ると、今年度に記帳した来場者の数はわずか21人。うち、川井氏の身内やグループ企業の幹部らも複数含まれていたのだから、神社としての活動実態にはますます疑問符を付けざるを得ない」(新潮)

 新潮が川井に聞くと、

「政治資金規正法に定められた要件を満たしており、前年における年間経費は寄付額の2倍以上であることを確認しております」

 と答え、高市側は、「法人寄附のお申し出をいただいた際に、寄附要件の打ち合わせをさせていただき、年間経費の件も確認済であり、何ら違法性はございません」とするのだが、本当に違法性はないのだろうか?

 神戸学院大学の上脇博之教授は、先の「鳥羽珈琲」と高市を政治資金規正法違反で奈良地検に告発している。その上脇教授がこういう。

「そもそも宗教法人は税制上の優遇措置を受けています。今回は、3000万円の寄付が本当に違法であるのか、それを説明するためにも、前年における年間経費について、客観的な資料を示すべきだと思います」

 高市早苗は、「疑惑×5」くらいの違法献金の疑いがあるのではないか。そのために、政治とカネの問題に決着をつけられないのではないか。

 そう思うしかない。

「高市首相が激やせしている」

 そう新潮が報じている。そういわれれば最近見る映像では、口元がこけ顔全体にやつれが見える気がする。

 まあ、就任早々から馬車馬のように自分一人で国会答弁を考え、会合にも顔を出さなかった。麻生太郎がいうように、「一人で抱え込んでしまう」悪癖は治らないようだから。

 その彼女をさらに追い詰めているのは、日本維新の会と約束してしまった「議員数削減」という難問だという。

 できっこないことを「連立の条件」としてしまったことで、自分をさらに追い込んでいるというのである。

 自民党内からは批判の声しきりである。定数削減に反対の論陣を張った岩谷毅前外務相はこう語る。

「議員定数は、言うまでもなく選挙制度の根幹をなす重要な要素です。定数だけを取り上げて、“ただ減らせば良い”という議論は、あまりにも乱暴だといわざるを得ません」

 岩谷は自動削減条項にも批判的である。

「自分は『問答無用条項』と呼んでいるのですが、あらかじめ結論を法案に盛り込むのは、他党と対話する姿勢を根本的に欠いています。定数削減を連立合意の内容に入れたのは、少々軽率だった思います」

 森山裕前幹事長も、

「定数削減は基本的には民主主義のルール、土台作りに関わることですから、エイヤでやれるような話ではありません」

 と、にべもない。

 だが、これを通さないと維新との連立が崩れるかという、とそうではないという声もある。

「維新の本丸は、来年通常国会での副首都構想関連法案の成立ですからね。定数削減法案が継続審議になっても連立離脱は選ばないでしょう」(政治ジャーナリストの青山和弘)

 だが、一人で抱え込んで他人のいうことを聞かない高市首相は、自身の体調も含めて、危ういところにあるというのである。

 彼女はかねてから関節リュウマチにかかっているが、診断が遅れたため片脚は人工関節だと明らかにしているそうだ。

 だが、夜は疲れ切って、ろくに睡眠もとれていないと官邸の関係者がいっている。このままでは、脳梗塞で倒れた石橋湛山のように健康問題で退陣を余儀なくされるかもしれないというのである。

 それよりも、高市首相が師と仰ぐ安倍元首相も、最初の時は持病の悪化という理由で退陣したではないか。

 師同様、1回退陣して、再起を期した方がいいのでは、高市早苗さん。

 今週最後の特集は、高市政権が打ち出している「積極財政」は、途方もない巨額なものになったが、それで国民の暮らしはよくなるのか、かえって苦しくなるのではないかと疑問を投げかけている文春の特集。

 日本経済新聞ネット版(12月11日 19:16更新)から引用する。

《2025年度補正予算案が11日、衆院を通過した。自民党と日本維新の会の与党に加え、国民民主党や公明党などが賛成し衆院本会議で可決された。12日から参院で審議を始める。17日に会期末を迎える今国会で成立する見通しだ。
補正予算の一般会計総額は18兆3034億円に上る。24年度補正予算案と比べ31%増加し、新型コロナウイルス禍後で最大の規模となった。
補正予算案は物価高対策を盛り込んだ総合経済対策の裏付けとなる。26年1〜3月の電気・ガス料金を支援する費用を計上した。自治体向けの支援金も拡充し、おこめ券などの配布を促す。高市早苗政権が掲げる「危機管理投資」や防衛費も含む。
予算案は16日の参院本会議で成立する見通しだ。与党は衆院で過半数に達したものの、参院では下回る。国民民主と公明党との協力を得て過半数を確保する。》

 成立はしたが、アベノミクスの生みの親である浜田宏一は、「サナエノミクス」では日本は不況になってしまうと、文春で大批判している。

 伝説的な経済学者はアメリカからリモートで取材に応じたそうだ。アベノミクスの功の部分を縷々述べた後、その当時と今は日本の状況が変わってしまったという。

 少し長いが浜田の言葉を引用してみたい。

「現在の為替は、百五十円台/ドルを推移している。極端な円安が続き、生活必需品やエネルギーの価格を押し上げ、庶民の生活を圧迫しています。円安が輸出を促進する場合もあるが、深刻な人手不足が続く日本ではそうはいきません。国内で作られた財やサービスが海外に買い叩かれ、国内への供給は減る。供給が減るとさらに物価が上がり、悪循環に陥っているのです。インフレ局面では株価は一時上昇しますから、企業家や投資家は喜ぶでしょうが、庶民の賃上げは追いつかない。三%のインフレが三年続けば約十%ですが、そのスピードで賃金が上昇するとは思えませんよね。ツケは庶民に回ってくる。安倍さんの時代とは状況が真逆です。今必要なのは、これ以上の日本の安売りではない。インフレ・円安局面への経済対策です」

 金利については、今の日銀はサボっているように思えるという。

「私はかつて、大規模な金融緩和を安倍氏に提言した立場です。しかし、今の日本に必要な政策は真逆。金融の引き締め、つまり市場に出回るお金の量を減らし、金利を引き上げる金融政策です。為替を是正するのは外為市場に介入できる財務省の仕事だと思われがちですが、実際に為替レートに最大の影響力を持つのは日銀。貨幣そのものの供給量を調整できるわけですから。物価の番人である日銀がまず、責任をもって直ちに利上げに踏み切らないといけません。今の日銀はそれをサボっているように見える」

 利上げに関しては、最近の新聞論調も「日銀利上げ方向か?」と、ようやく利上げに踏み切るのではと見られているようだが。

 サナエノミクスで財政出動路線を明確にし、予算の64%を国債発行で賄うといっていることに対しては、手厳しい。

「率直に申し上げて、行き過ぎている、というのが私の見方です。もちろん財政赤字は常に悪というわけではなく、企業が成長のために借金をしてでも投資を行うのと同様、国家も長期的な利益のために赤字を活用すべき局面もあります。防衛費なども、残念ながら国際情勢に照らし増額が避けられない部分がある。しかしながら、人手不足などの供給制限がある現在のような状況で財政赤字を濫用し、大規模な財政出動をすることは、今、日本経済の最大の問題であるインフレをさらに助長する。とんでもないことです」

――どういうことでしょう。

「例えば、補正予算に盛り込まれたガソリン減税は望ましいやり方ではない。そもそも、インフレ下では必然的に税収が増えますが、『自動安定化装置』が働き、景気の過熱を緩やかにしていく。税収が増える中で歳出を固定したり制御したりすれば、自動的に一定程度、インフレ抑制になる。しかし、そこで減税に踏み切ればどうなるでしょうか。ましてや個別のガソリン減税だとどうか。もちろん対症療法的にガソリンは一時安くなりますが、ガソリン利用者の負担だけが軽くなれば、結果的に車の利用も増えてガソリンの消費が加速し、かえってインフレを強めかねない。すると国民全体の負担は増える。全くの筋違いの政策です」

 自治体が自由に使える地方への交付金や子供一人当たりに2万円の給付などについても、

「まさに交付金は、物価高対策にはなりません。むしろ、物価高促進策と言っていい。交付金をその地域の振興に使うというなら分かります。しかし、物価高対策として各地で減税やクーポン給付などを実施し、“家計の助け”のために使えと言うなら、まさにバラマキです。政府が借金してまで市場のお金の量を増やし、そのお金が使われれば、インフレはますます加速します。2万円給付も同様です。配って物価が下がることはない」

――サナエノミクスが金融を引き締めず、さらに積極財政に向かうのであれば、日本はどうなりますか。

「物価が上がってもその分賃金を上げてもらえないのだから、労働者はどんどん損をする。今のままの積極財政ではさらなる家計の圧迫を引き起こすでしょう。日本は不況になり、国家の基盤が揺らぐ。金融を引き締め、しっかりと緊縮財政に向かわなければ、“高市不況”がやってくる可能性があるということです」

 安倍の恩師である浜田の直言を、高市首相はどう聞くのだろう。それとも今は、聞く耳を持たないのだろうか。

 日本の舵取りを高市早苗なんかに任せるんじゃなかったと、国民が悲嘆に暮れる日が来ないことを祈りたいが。(文中敬称略)

(文=元木昌彦)

 

元木昌彦

編集者。「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"。

元木昌彦
最終更新:2025/12/16 18:40