リリーフとして「復活」を遂げたドジャース・佐々木朗希の来季への懸念点…WBC辞退と年間稼働への道筋

異次元の才能を持ちながら、ポテンシャルをうまく活かせていないというレッテルと背中合わせの佐々木朗希。
今シーズン終盤、彼が見せたリリーフとしての復活は、多くのファンの度肝を抜くと同時に、来季に向けた新たな議論を呼ぶものとなった。
ポテンシャルの片鱗は見せたものの、同時に浮き彫りになった課題……。今回は、佐々木朗希の現在地と、来シーズンに向けた展望ついて分析していく。
リリーフ転向で見せた「出力」の高さ
まず評価すべきは、リリーフ転向後に見せた圧倒的なパフォーマンスだろう。佐々木は右肩のインピンジメントで60日IL入り。復帰に向けた3Aリハビリ登板の初期は内容がなかなか安定せず、苦しんでいたが、ドジャースはレギュラーシーズン終盤にリリーフとして試す判断を下した。
その結果、先発として長いイニングを投げる際のペース配分から解放されたことで、本来の出力が戻った。
常時150km/h後半を超えるストレートと、鋭く落ちるフォークのコンビネーションは、MLBのトップクラスの打者から見ても、脅威そのものだった。四球率は改善し、奪三振率が上昇した。
リリーフとしての佐々木はポストシーズンには欠かせない投手になった。制御の必要がない短いイニングであれば、佐々木の出力は間違いなくメジャー級であり、その点において「復活」という言葉は決して過言ではない。
先発へのこだわりから一時的に離れ、自身の最大の武器である球速とキレを最大限に活かせるポジションで結果を残したことは、佐々木自身のメンタルにとっても大きなプラス材料となったはずだ。
イニングマネジメントのジレンマと体力面の課題
しかし、手放しで喜べないのが体力面の問題だ。ポストシーズンでリリーフの結果が出たとはいえ、それはあくまで限定的な起用で成り立っていることを忘れてはならない。
佐々木の場合、単に投げれば圧倒的という段階を超えている。来季に向けて最も重要なのは、登板間隔の固定化とイニングの積み上げだ。
どれだけ一時的なピッチングのクオリティが高くても、イニング数や安定感が伴わなければ先発投手としての価値は最大化されない。ここは避けて通れないアップデートのポイントになる。
ここで最も懸念されるのが、体力面の課題だ。短いイニングの全力投球とはいえ、ポストシーズンのパフォーマンスを見ると、終盤は疲労の蓄積が見え隠れする場面があった。
怪我明けのことは理解できるが、戦い抜く体力が依然として不足している事実は否めない。レギュラーシーズン終盤からポストシーズン中場まで一時的なリリーフ転向は成功したが、それはあくまで短期的な対症療法であり、根本的なフィジカルの弱さが解決されたわけではないのだ。
来季、先発ローテーションとして君臨するためには、この出力に対するリカバリー能力の向上が不可欠となる。オフシーズンのトレーニングでどこまで身体をビルドアップできるかが、来季の成績を左右すると言っても過言ではない。
◾️WBCと年間稼働への覚悟
最後に、来年開催されるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)への対応について触れておきたい。
結論から言えば、今年の怪我があったこともあり、辞退する方向で調整が進むのが妥当であり、また賢明な判断だろう。
現在の佐々木に必要なのは、チームの一員としてシーズンを通して一軍で投げ抜く実績だ。WBCに合わせて早めの調整を行うことは、あまりにもリスクが高い。
周囲の期待や批判はあるだろうが、来年こそは一年間ローテーションを守り抜き、規定投球回、あるいはシーズン通しての貢献を果たすこと。それが将来的に成功するための最低条件であり、ファンへの最大の恩返しとなるはずだ。
佐々木はまだ「完成形」に到達していない。素材のポテンシャルは日本人投手で歴代屈指。だが、来季はパフォーマンスの絶対値よりも、積み重ねられる身体が最大の焦点になる。
来季、イニングを積み、どれだけ連続性のあるパフォーマンスを見せられるかのその答えが、佐々木の将来を大きく塗り替えていくことになる。佐々木にとって、キャリアの分岐点となる重要な一年になるだろう。
(文=ゴジキ)

