マ・ドンソク大好き芸人が語る“中毒性”「もはや家系ラーメン」…最新作『悪魔祓い株式会社』の新境地

韓国俳優のマ・ドンソク(54)が企画・原案・主演を務めたホラーアクション映画『悪魔祓い株式会社』が12月12日から全国公開され、熱心なファンが劇場に足を運んでいる。
マ・ドンソクといえばゾンビや極悪犯、殺人鬼など、どんな強敵でも腕力でねじ伏せるキャラが“看板”だ。一方で人情派、ハローキティ好きでキュートな笑顔を見せる人物像がギャップ萌えを呼び、“マブリー(マ・ドンソク+ラブリー)”の愛称で女性はもちろん男性陣の心もつかむ。
無敵キャラ爆走! マ・ドンソクがオカルトホラーに殴り込み
本作でマ・ドンソクは、「悪魔祓い株式会社」の社長・バウ役。悪魔崇拝のカルト集団の台頭で混乱した社会を正すため、悪魔と交信するエクソシスト・シャロン(少女時代/ソヒョン=34)、情報収集担当・キム(イ・デビッド=31)とチームを組み、迫りくる邪魔者を拳で叩きのめすという内容だ。
これまで、どんなに「それはさすがに無理だろ……」という危機状況でも、かつどんな相手でも怯むことなくバッタバッタと殴り倒してきたマ・ドンソク。仲間をイジったりボソッとギャグをつぶやいたりしながら、結局最後はマ・ドンソクが悪いヤツを叩きのめすというお決まりの痛快劇は、時として「マンネリ」とも評されたものの、今度はオカルトホラーに殴り込み。「悪魔」という超常存在とどんな対決を見せてくれるのかと、ファンは胸を踊らせた。
ただしいざ公開されると、マ・ドンソクの強さにすっかり鍛えられてしまったファンのなかには、「もっとできたはず!」と言わんばかりの物足りなさを訴える声も出てくるほど。我々は、一体マ・ドンソクに何を求めているのだろうか。

マ・ドンソク大好き芸人が力説、“拳使い”ならではの「体温」
マ・ドンソクが世界にその名を轟かせたキッカケは、『新感染ファイナル・エクスプレス』(2016)だ。
時速300km以上で走行中の高速鉄道の車内を舞台に、ゾンビパンデミックに巻き込まれる人々の死闘を描いた同作でマ・ドンソクは妊娠中の妻を守り、ゾンビと素手で戦う役が主役超えの注目度。スピード感あふれる演出と胸アツの人間ドラマが熱狂を呼び、全世界興行収入1億4000万ドル(約149億円、当時)を記録。これまでのゾンビ映画にない痛快な映像体験は、新感覚「ホラーの帝王」の異名を持つ作家、スティーブン・キングも絶賛した。
そんなマ・ドンソクの大ファンを公言する“映画バカ芸人”あんこさんは、『新感染』でマ・ドンソクが魅せた「ぶっきらぼうで無骨な男が愛妻家という意外性」「次々襲いかかるゾンビ軍団に身一つで立ち向かう姿」にノックアウトされて以降、『犯罪都市』シリーズでドハマリし、マブリー沼から抜け出せない一人。世界には著名なアクションスターが何人もいるが、あんこさんが「もはや“推し”」というマ・ドンソクならではの魅力とは?
「シルヴェスター・スタローン(79)とかアーノルド・シュワルツェネッガー(78)とか、これまでの“マッチョ”代表の俳優は、銃火器や刃物など、大体金属系の武器を駆使して戦うのが鉄板でした。でも、マ・ドンソクの武器は“拳”。自分の得意分野を取り入れたボクシングスタイルで、マッチョ系のなかでも新しい路線を作ったんじゃないかなと。武器を使う相手に体ひとつで乗り込むって、桁違いのエネルギー量でカッコいいし、やっぱり見ている方に伝わる熱量も違うんですよね」(あんこさん、以下同)
マ・ドンソクが繰り広げる肉弾戦は、戦う時にも“体温”が通う。
「マ・ドンソクが暴力を使うのは基本的に誰かを守るためで、ちゃんと意味があるんです。ただただ敵地で大暴れをするわけじゃない。奥さんのため、子供のため、周りの人のため。しかもマ・ドンソクって“丸い”んですよね、体格が。その丸みが包容力を感じさせるし、かつ“守る”ための力だから、自分もマ・ドンソクに守ってほしいなって思わせられちゃう」

ただの暴力映画にはならない爽快感はもはや「デトックス」
マ・ドンソクが演じる役は、たしかな愛情のうえに成り立つ「正義」がある。どっしりとしたその構えは、多くの言葉がなくとも“弱き者”の味方になってくれる安心感を醸し出す。あんこさんにとって、そんなマ・ドンソク作品は「デトックス」なのだとか。
「妻を誘拐した組織と対峙する『無双の鉄拳』(2018)では、敵を持ち上げて天井に突き刺し、そのまま引きずるというギャグのような強さを発揮。車の中で戦うシーンでは、激しく揺れる車体を引きで映すことで壮絶な戦いを表現したりして、もうジュラシック・パークにいるかのような冒険感も味わえる。一作品のなかにハラハラ・ドキドキ、ワクワクといったテーマパーク感があって、想像を超えてくる演出にドーパミンが出っぱなしになります!
しかも倒す敵は、毎回誰が見ても擁護できないほど悪い(笑)。こんなやつ世に放っちゃダメだよって震え上がるような残忍な相手を拳1発で仕留めてくれる気持ち良さがある。容赦のない展開がひっくり返る爽快感はクセになり、もはやデトックス効果(笑)」
強さと優しさでサバイブするなかにも、“箸休め”がある。マ・ドンソク作品に今や定番ともいえる「ツッコミどころ」だ。
「『犯罪都市』では監視カメラに映らないように、ヘルメットをわざわざ被せてボコる。絶対叩く方が痛いだろうと思うんだけど(笑)、そういうツッコミどころがあるので、ただの暴力映画にはならないんですよね」
すっかり無双キャラを確立したマ・ドンソクの作品には、“見方”にもコツがあるという。
「みんなもう、マ・ドンソクがいれば問題は解決することはわかってる。そのうえで新作は、マ・ドンソクがどこに行ったらとか、何役をやったらっていう職業シリーズの大喜利なんです(笑)。マ・ドンソクが◯◯やってみた、さらに誰と一緒にいさせたらおもしろいか、を考えたら企画ができちゃう。だから、マ・ドンソクのパンチの数ばかりじゃなくて、その職業になったマ・ドンソクを楽しむのがポイントです!
あと、マ・ドンソクの“味”がだいぶハッキリしているので、案外相手役に注目してもおもしろいですよ。そこで緩急がつけられているので、マ・ドンソクの立ち位置と相手との関係性に注目するのもいいと思います」
まさに『悪魔祓い株式会社』で、マ・ドンソクは悪魔祓いの力を持たない社長役、ストーリーの中心となるのはエクソシスト、依頼人、依頼人の妹、という3人の女性たちだ。拳だけでは歯が立たないという(マ・ドンソクにとっては)未知なる状況を、どのように乗り越えるのかという“お題”は今までになく、その意味で本作は彼の新境地だった。
細かいことを考えたら負け! マ・ドンソク作品は「家系ラーメン」なのだ

映画評論家・前田有一氏も、マ・ドンソクの独自性として丸っこさ―“ガチムチ”さを挙げる。
「アメリカでは、アクションスターといえば腹筋が割れたムキムキの“四角い”体格。その点マ・ドンソクは筋肉の上に脂肪がついている“ガチムチ”です。これは世界を見ても珍しい。彼はずっとそういう体なんだけど(笑)、『新感染』、さらに『犯罪都市』シリーズが桁違いにヒットしたことで、遅咲きのブレイク。自分が活きるブランディングを把握したことで、2018年に映画会社『ビッグパンチピクチャーズ』を設立、企画段階から制作に携わっています」(前田氏、以下同)
マ・ドンソクの活きるブランディングとはつまり、「敵が刃物だろうが銃火器だろうが、最後はタコ殴りで解決する痛快さ」(前田氏)。
「そこまでの努力がなんだったんだというツッコミもセットで、ピンチを超えた丈夫さ、筋肉の過剰信仰がおもしろいところ」だという前田氏は、『悪魔祓い株式会社』についても「細かいことを考えたら負け」だとニヤリ。
「毎回、無愛想で意外と根は優しいキャラ。それが高校教師なのか刑事なのか料理人なのかという違いで、そうした無敵キャラの量産は、かつてのスティーブン・セガールに近いものがあります。その路線はもうブレないとして、“エクソシスト”という王道ジャンルに彼の持ち味である“タコ殴りキャラ”を配置するのは斬新なアイデア。しかも、マ・ドンソク映画はずっと実録もの、リアルの場での出来事という設定が多くて男臭かったんですけど、今度は女性が中心。なんとか変化をつけようとしていることがうかがえます」
いつものように、マ・ドンソクのマッスルを全開で活かした物語かと思えば、案外ちゃんとホラー。かといって、ど真ん中のオカルトものかといえばそうとも言い切れない。いいとこ取りをした(?)本作は、マ・ドンソクの“手探り”状態も漂わせつつ、続編をにおわせる。
「現象の細かい真相は全然明らかになりませんし、伏線も張りっぱなし。気持ちよくトリックを暴く展開も欲しいところですが、最終的にいろいろめんどくさくなって、超常現象すらもまさかの拳一発でぶっつぶす(笑)。いろんなツッコミどころすらもぶっ飛ばすのがマ・ドンソクの拳ですよね。ここまできたら、最後は“殴って終わり”という様式美を突き詰めてほしいところです」
もしマ・ドンソクの攻撃に物足りなさを感じるとしたら、それこそが“マブリー中毒”になっている証明だ。前出・あんこさんは、マ・ドンソク作品について「ニンニクを大量に入れた家系ラーメンみたいなもの」だとする。その心は、「いっぱい食べたら胃もたれするけど、ふと無性に食べたくなる。そしてその好みはめちゃくちゃ分かれる」。
現在は『犯罪都市』シリーズ5作目の制作を進めつつ、BLACK PINK リサ(28)との共演作となるアクション映画『TYGO』(英題)や、アドベンチャーゲーム『GANG OF DRAGON』出演など、活躍の場を広げているマ・ドンソク。中毒性を求めるファンに“味変”を提供しつつ、長く推し活ライフを楽しませてくれそうだ。

『悪魔祓い株式会社』
12月12日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中
企画・原案・制作:マ・ドンソク
監督・脚本:イム・デヒ
出演:マ・ドンソク、ソヒョン、イ・デヴィッド、キョン・スジン、チョン・ジソほか配給:ギャガ
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(取材・構成=吉河未布 文=町田シブヤ)