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“アウトローのカリスマ”瓜田純士、かく語りき

瓜田純士が大ヒット映画『爆弾』を観て怒り爆発!「これ作った奴らを爆破させてやろうか」

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絶賛の中でロングラン公開中の『爆弾』(画像右は本作ポスター)。瓜田夫婦の審判はいかに?
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“アウトローのカリスマ”こと瓜田純士が森羅万象を斬る不定期連載。今回のテーマは、大ヒット公開中の日本映画『爆弾』だ。「佐藤二朗の演技がすごい」「山田裕貴がハマり役」「終始ハラハラドキドキが止まらない」などの絶賛の声が相次いでおり、瓜田も喜び勇んで劇場入りしたが、終わってみれば浮かない顔。「多くの人を敵に回してしまいそうだけど……」と前置きしてから、忖度なしの“爆弾発言”を投下した!

 映画『爆弾』は、2023年の「このミステリーがすごい!」「ミステリが読みたい!」で1位を獲得した呉勝浩の同名ベストセラー小説を、『帝一の國』『キャラクター』などで知られる永井聡監督が映画化したもので、爆弾事件を予告する謎の男(佐藤二朗)と刑事(山田裕貴ら)が、取調室で心理戦を繰り広げるサスペンス。

 

 公開から2カ月近く経過した現在も、SNSの口コミ効果で満席の上映回が続出するなど、好調を続けている。「面白いという評判は俺の耳にも入ってる」という瓜田純士と、「熱量の高いオススメを知人から受けた」という瓜田の妻・麗子は、期待に胸を膨らませながら劇場入り。だが、その数時間後にエンドロールが流れ始めると、夫婦はすぐさま席を立ち、不満顔で劇場を後にした。そんな二人を追いかけつつインタビューを開始。

※ ※ ※

――いかがでしたか……?

瓜田純士(以下、純士) こんなこと言ったら多くの映画ファンや出演役者を敵に回してしまいそうだけど、不満が山ほどありますね。

瓜田麗子(以下、麗子) 私もや。これをオモロい言うて喜んでる奴らを引きずり回したい(笑)。その上で、「どこがオモロいん? なんかちょっとええ格好してオモロい言うてんのちゃうか?」と問い詰めたいです。


――何が不満だったのでしょう?

純士 「佐藤二朗の演技がすごい」とか「スリリングで面白い」という評判を耳にしてたから、期待して来たんだけど、まず、彼の怪演を見せつけたいという監督の意図に付き合わされる時間があまりにも長すぎてウンザリしてしまいました。

 確かに佐藤さんの演技はすごい。それはわかるんだけど、警察組織の描き方があまりに杜撰だし、その他のディティールの詰めも甘すぎるから、「すべてが劇団っぽい」と感じてしまいました。

――劇団っぽい?

純士 一番の見せ場と言える刑事と爆弾予告犯のやり取りさえも、まるで「演劇」みたいだったんですよ。舞台演劇の中の取り調べシーンを延々と見せられた感じ。

「佐藤二朗に任せれば怪演してくれるだろう」という監督の期待と、「自分の演技力をフルマックスで出してやろう」という佐藤さんの意気込みが、作品を飛び越えて透けちゃってる感があって、物語に入り込めなかったのもありますね。最初から最後まで喜怒哀楽全開の怪演が続くから、イッセー尾形の単独ライブを見てるのと何も変わらないんですよ。


――(笑)。

純士 でも、役者のせいじゃなく、監督のせいだな、と俺は思います。佐藤さんに限らず、役者はみな与えられた役目を全力で演じただけだと思うから。

――この映画には原作小説もあるのですが、そちらは読みましたか?

純士 原作があるのは知らなかった。じゃあ、監督のせいとは限定せず、その原作を映画化した製作陣のせいと言い直しますが、リアリティが求められるサスペンス映画なのに、あらゆる描写にリアリティがないことに苛立ちました。どうリアリティがなかったのかについては後述しますが、とにかく、あんな非現実的な設定の中、あのテンションの芝居を見せられても、演技力があるだけに余計に浮いちゃうというむなしさがありましたね。

麗子 私も原作は読んでないけど、少なくとも映画のストーリーは、幼稚臭くて全然アカンかった。でも佐藤二朗さんに関しては見直したけどな。これまでは正直、あの人がちょっと苦手やったんですよ。わざとボケをかましてるような演技があまり好きじゃなくて。でも今回は良かった。「あんな演技もできるねんや」と思って、めっちゃ深みを感じたわ。やのに、あの相手の眼鏡刑事……「BreakingDown」のよしきまるみたいな顔したモジャモジャ頭、あれ誰?

純士 山田裕貴くんね。『東京リベンジャーズ』でドラケンを演じてたじゃん。

麗子 ああ、あの子か。その山田くん演じる類家刑事と、佐藤さん演じるスズキが高度な心理戦を……ってことなんやろうけど、下手したら孫とおじいちゃんぐらいの年齢差があるじゃないですか。だから、貫目が全然釣り合ってなくて、ちっとも渡り合えてない。一つになれてない印象を受けましたね。あんな軽い感じの若い子が、切れ者の心理捜査官みたいな役職についてるのも不自然。無理がありすぎるわ。

純士 それを言うなら、あんな高度な心理戦をできるスズキが、ホームレスなんかしてねえよ、ってのもあるよね。あれだけ頭がキレるなら、もっと悠々自適な暮らしをしてるだろって。

 でもね、類家もスズキも悪くない。繰り返しになるけど、悪いのはあんな設定で演じさせた作り手たちなんですよ。

――「あんな設定」とは?

純士 実際の警察でそんなことあるわけねえだろ! ってことが多すぎる。まず、類家の勘だけがやたらと鋭く、その読みがズバズバ当たり、彼の一挙手一投足に全刑事が注目して、いちいち右往左往するのが変。警視庁ほどの大組織が、たった一人の若手刑事の意見に振り回されるはずがねえだろ。

麗子 ホンマや。たいした人生経験も積んでない青臭い刑事が、なんであんなに影響力持っとんねん。

純士 制服警官の男女コンビが令状も持たずにいろんなところにズカズカ入り込んだり、勝手に爆発物処理をしたりしてるのもウソ臭くて見てられなかったな。

麗子 私はあのコンビのこと、好感を持って見とったけど、所詮はアヒル(制服警官)やもんなぁ。

純士 相棒(坂東龍汰)が大ピンチになったときに、女性警官(伊藤沙莉)が気丈に振る舞ってたけど、あそこは泣いて声が震えて、尻餅ついて小便漏らすぐらいのことをさせないと、異常事態の緊迫感が伝わってこないでしょう。おまけに彼女、一介の交番巡査に過ぎないのに、取調室にまで無断でズカズカと上がり込んでくる。んなわけあるか! スズキの演技にばかり力を入れてないで、そういう細かいところもリアルに描いてほしかった。

 そもそも、酒屋で暴れただけのスズキをいったい何時間取り調べしてるんだ? って話ですよ(笑)。シャバではあれこれ事件が起きてたけど、その間、スズキは一睡もせず、ずっと取調室にいたじゃないですか。細かいことを言うようだけど、今の警察の取り調べって深夜はやっちゃダメで、1日8時間までとかっていう原則があるんですよ。なのに、そういうのを丸ごと無視したような描写が多かったから、「ウソ臭いな、昭和の広島県警じゃあるまいし……」と、見ててシラケてしまいました。

――その他の刑事役についての印象は?

純士 加藤雅也さん演じる長谷部刑事は、きっと無骨で正義感も強かったから、染谷将太くん演じる等々力刑事から慕われていたんでしょう。そんな長谷部が事件現場で変態的なことをしてしまい、週刊誌に報じられるという展開だったけど、そのネタをリークしたのは長谷部の性癖の悩み相談に乗っていたカウンセラーだった、という設定がお粗末すぎる。そんな職業倫理のないカウンセラー、いるわけないでしょ。それに、長谷部を変態キャラに落としてしまうよりも、もっと硬派な設定、例えば「上司の不正を告発しようとして左遷されてしまった刑事」みたいにしたほうが話の筋も通ったのに、って思いました。

 映画のスパイスとして、変態キャラをどうしても入れたかったのかもしれないけど、変態行為がバレたあともなお、等々力が長谷部を尊敬し続けてるというのも無理がありますよね。

 長谷部の家族もおかしい。一家の主人が変態だということが発覚し、家族が破綻するみたいな話だったけど、「主人以外の家族はまとも」という前提があるからこそ、破綻したわけじゃないですか。なのに、残された家族のその後の行動が、ちっともまともじゃない(笑)。道理の通らないことばかりしてやがるんですよ。

麗子 家族は似たもん同士やねん。

純士 だとしても、「まともな家族の中におかしい奴が一人だけいた」っていうふうにしなきゃダメですよ、倫理として。じゃないと、こっちは納得も共感もできない。「変態性癖のある刑事が」みたいなフレーズを使いたかったのもしれないけど、その設定にしたせいで、ストーリーが破綻してしまった。こんな作品のためにあんな変態役をやらされた加藤雅也さんが可哀想ですよ。

 染谷くんも実力ある役者ってことは知ってるけど、先述の違和感があるから、今回の役どころは魅力的じゃなかった。彼演じる等々力が、途中で何かを思い出して、アメリカ映画みたいに急に車をUターンさせるシーンがあったけど、ああいうのも陳腐。あと、伊勢刑事(寛一郎)がトイレの中でスズキに掴みかかるシーンがあったでしょ? ああいうのって昔から刑事もののお約束みたいになってるけど、あのタイミングであんな勝手なことする刑事なんているわけないから、ウソ臭いったらありゃしない。演技力の無駄遣いだと感じました。

『あぶない刑事』とか『踊る大捜査線』みたいなエンタメに振り切った刑事ものや、ドリフの刑事コントとかなら、そういう陳腐さや警察描写のデタラメさも受け入れられるんですよ。でも今作みたいにガチトーンでガチテーマに取り組むんだったら、あらゆる描写にリアリティを出してくれないと。

 細部までちゃんと調べて、矛盾のない、ちゃんとしたディティールの中で物語が進んでいれば、すべての俳優たちの演技も光ったのに。そこが残念だし、腹立たしいです。

――渡部篤郎さん演じる清宮刑事の印象は?

純士 あぁ、なんかいましたね。あの役は別に誰でもいい。「俺に任せろ」と言わんばかりに颯爽と出てきて、最後はダメダメでメンタル崩壊する役なんて、本来もっと目立ちそうなもんなのに印象が薄かったですね。

麗子 登場人物が多すぎるからやない? あんだけ人がようけおったら、誰が主役なんかもようわからんかったし。類家が主役なんやとしたら、正直、物足らへんかったわ。

――その他の不満点は?

純士 YouTubeで配信された犯行予告動画に対する一般市民の反応が、昭和とか平成初期っぽいと感じました。90年代の渋谷で若者がポケベルに群がる感じ。今の時代、街じゅうのみんなが足を止めて一つの動画に群がって騒ぐことなんてないから。今作のモブ描写は「あ、ウルトラマンだ!」と言って空を見上げる奴らみたいになっちゃってた。現代の話なのに、すごく古臭く感じました。

 あと、取り調べで真剣な掛け合いをしてる最中に、刑事たちの端末の通知が何度も鳴って、そのたびに一斉に画面を見たりするのも、今どきの描写のつもりなんだろうけど、ダサくてコントじみてましたね。

――良かった点は?

純士 オープニング付近でスズキの髪の毛を誰かが切ってて、そこにクレジットが出てくるのは格好いいと思いました。その伏線も回収されたし。

麗子 カメラワークと映像と、編集と音響は良かったですね。というか、グロさと音響でだいぶハッタリ利かせてる感もあったけどな(笑)。私、HSP(感受性が高く、環境刺激に敏感に反応する人)っぽいとこがあって、ちょっとした物音でもすぐに飛び上がっちゃうんですよ。この映画は爆発音がすごかったから、「うわ、うわ、うわ」って、何度も激しく飛び上がったわ。

――音響によるビックリではなく、サスペンス的な意味でのビックリやドッキリはありましたか?

麗子 ないなぁ。謎解きも、さっぱりわからんかった(笑)。まったくわからない引っ掛け問題を延々と、7割ぐらいの尺を取ってやられたやん。あれ、ついていかれへんくて退屈やったわぁ。


純士 その答え合わせを類家がずっとやってたじゃん。でもそれも、「お前は原作を読んでるから答えを知ってるだけだろ」って感じで、「なるほど、そうきたか」という面白みはまるでなかったですね。「予測不能なストーリー展開」という触れ込みだったけど、不条理な行動をするキャラが多いので、そりゃなんでもありだろうし、どうなっても別に驚かない、って感じですね。

――原作はミステリーとして高い評価を受けているのですが……。

純士 原作を読んでないので断言はできないけど、おそらくこの作品は、映画『羊たちの沈黙』みたいな路線を狙ったんじゃないですかね。アンソニー・ホプキンス演じるシリアルキラーで精神科医のレクター博士と、ジョディ・フォスター演じるFBI訓練生のクラリスが心理戦を繰り広げる物語だけど、あれ、最高にヒリヒリして面白かったじゃないですか。

――はい。レクター博士は独房のガラスを隔てた向こう側にいるのに、「いつかここから出てくるんじゃないか」「何かとんでもないことが起きるんじゃないか」という緊張感がありました。

純士 レクター博士がクラリスとの会話の中で、世間を騒がせてるバッファロー・ビルという殺人鬼の正体に関するヒントを散りばめていくというのが、今回の『爆弾』のスズキと類家の関係に似てますよね。あと、クラリスがバッファロー・ビルのアジトに単独で踏み込んでいくシーンも、『爆弾』の若手警官コンビが上司に無断で犯人のアジトに突入するシーンに似てる。でも、緊張感が雲泥の差なのは、なぜなのか。

 『羊たちの沈黙』は、事件の背景や、登場人物の人物像、捜査官の動きなどを、細部まできっちりリアルに描いたからこそ、レクター博士の怪演が光ったし、クラリスの心理状態も観客にヒシヒシと伝わってきたんですよ。それに引き換え『爆弾』は……って、話がまた元に戻っちゃうけど、スズキと類家の掛け合いをハイライトにしたいんだったら、こんな隙と矛盾だらけの物語にしたら絶対にダメ! それは役者に対して失礼ってもんですよ。

麗子 今日の純士は熱いなぁ。もしかして本気で怒ってる?

純士 めちゃくちゃ怒ってるよ。作り手を爆破させてやろうか! ってぐらいに。

麗子 オモロいけど、そんなこと言うたらアカン(笑)。

純士 日本を代表する役者たちが大勢出てて、みなさん素晴らしい演技力の持ち主なんだから、キャスティング次第ではものすごく面白くなったのかも、という思いはありますね。

――と申しますと?

純士 佐藤二朗さんみたいな「この人のことだから相当な怪演をしてくれるだろう」という期待値が高い役者は、ドハマリな役で使っちゃいけないのかも。『地面師たち』の北村一輝さんを見たときにも、同じようなことを俺は感じたんですよ。期待値が高いと、役者もその期待に応えようとして過剰演技になってしまったりして、むしろケチがつくことが多い。

麗子 私は佐藤さんに対する期待値が低かったから、今回めっちゃ良いと思ったけどな。

純士 うちの嫁はおそらく少数派で、世間の多くの人たちは、佐藤さんが怪演をする役者だということを知ってるし、期待値も高いんですよ。言い方を変えると、すでにある種の色がついてしまってる。だからこそ今回は、観客の期待を外すキャスティングにしたほうが良かったのかも。例えば、佐藤さんを刑事役にして、色のついてない役者を犯人役にする、とかね。そうすれば観客も、「へえ、こんな抑えめなトーンの天才刑事役もできるんだ」という新鮮な驚きを得られただろうし、色のついてない役者も脚光を浴びて、さらなる話題作になったんじゃないか、と。まあ、今さら言っても時すでに遅しですが。

――よっぽど不満だったのか、二人ともエンドロールを見ずに退席してしまいましたね。

純士 あのエンディングの曲にイラついて、一刻も早く逃げ出したくなったんです。

麗子 映画のテイストと曲が合わなすぎる。邪魔やったし、腹立ったな。

純士 曲そのものが悪いと言ってるんじゃなく、あの曲をなんでここに持ってくるの? というセンスに腹が立ちました。静と動で言うと、オープニングでは結構臨場感のある音楽を流してきて、ざわつかせる感じだったから、終わりは「静」にしなきゃダメだと思う。「ここであえてこういう曲を選ぶ俺って、イケてんじゃね?」という作り手の独りよがりな世界観に、観客がついていくと思ったら大間違い。まったくイケてねえよ。

――では最後に、この映画を100点満点で採点してください。

麗子 佐藤さんと、女性警官と、その相棒に1点ずつあげて、3点。音響とカメラマンも入れて、5点かな。

純士 点数をつけたくもないなぁ……。

麗子 あ、編集にも1点入れてあげな。私は6点で!

純士 やり方次第では100点にもなりそうな映画だったのに、細部を疎かにしやがったから、10点ですね。

※ ※ ※

 瓜田夫婦の合計点は連載史上最低レベルとなったが、SNS上では「日本映画史上最高傑作」などと大絶賛する声も多くあることを改めて付記しておこう。

(取材・文=岡林敬太)


映画『爆弾』
瓜田夫婦の採点(100点満点)

純士  10点
麗子   6点

岡林敬太

風俗情報誌の編集、実話誌の暴力団担当記者などを経て、ライターに。瓜田純士のYouTubeチャンネルのカメラマンも務める。

岡林敬太
最終更新:2025/12/25 13:00