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KIBA x ANCHANG インタビュー対談後編 ~お金を払うとかライブ会場に行く、そいうことを含めて音楽には価値がある

ANCHANG(SEX MACHINEGUNS)
ANCHANG(SEX MACHINEGUNS)

ANCHANG:でしょ? すごかったですもん。むしろ話しかけてはいけない感じでした。

KIBA:それはね、自分なりに理由はあったのよ。非社交的っていうか、人見知りが強かったからしゃべるんが苦手で、本当に。バンドって、だいたい得意なものしか出さないでしょ。だからぼくはしゃべるのが苦手だし、逆にこの苦手なものを前面に出してみようと思って、しゃべらなくなったの。そうしたら得意なことだけ出してる他の人とは違うことができるって考えて。

ANCHANG:いやでも、本当にすごかったです。当時の衣装も天草四郎みたいな感じでね。呪われたらあかん! って、すごく覚えてます。

KIBA:いまでもバンド数が多い楽屋とかでは、隅の席に座って壁の角を四時間くらい見てるよ。しゃべらないで済むし、ここを見ていたいって。

ANCHANG:でもいま全然違うじゃないですか。みんなKIBAさんKIBAさんってね。

KIBA:しゃべりかけてくれたら、そりゃ拒否しないし、楽しくしゃべる。けど自分からしゃべっていくかって言われたら、たぶんいまでもほとんどない。

――ANCHANGさんがまだメジャーとか行く前だと、まだ上下関係が厳しい世界でしたか?

ANCHANG:厳しいどころではないです。恐ろしい。出来れば目を合わさないように。はい、そういう時代です。しかもね、ビジュアル系でも、ハード系のバンドの人は怖い人が多かったですね。

――ANCHANGさんから見て、KIBAさんのボーカルスタイルをどう感じられますか?

ANCHANG:これね、すごく覚えてるんですけど、1回ぼくはサラリーマンになってるから、バンドの状況が一瞬わからなくなった頃に、NOISYとかSUSSYとかと、どういうバンドがいま世の中あるの? みたいなことを聞くじゃないですか。そこで出てきたのがGargoyleだったんです。

 「これめちゃくちゃかっこいいんだけど、ぼくはこのボーカルが嫌なんです。地獄みたいな声をしてるんです」ってSUSSYが言うんですよ。「地獄みたいな声ってどんなや? ほんまや!」って(笑) でもね、唯一無二なんですよ。結局キャラクターっていうのが大事だなっていうのをね、すごく感じていますね。

KIBA:俺に歌の上手い下手は言うなよ?(笑)

ANCHANG:歌上手い下手じゃなくてね、説得力じゃないですか、結局のところ。変な話、歌じゃなくて、しゃべりでもなんでもいいんですけど、そこに入ってくる声と入ってこない声。逆に地獄みたいな声だってSUSSYが言ったってことはすごいことなんです。

――確かに……KIBAさんのボーカルは、日本におけるデスボイスのはしりみたいなものですよね。

ANCHANG:説明しやすいし、それはそのキャラクターがあるし、他にそんな声出す人がいるかって言ったらいないわけですよ。

KIBA:これね、真面目な話をすると、数年前1人になって最初は楽しくやってたんだけど、ぼく1人ってことは歌下手やったらまずいのか?って思った時期があったんですよ。それでちゃんと歌うかと思ってやってみたら……ダメでしたね。楽しさがやっぱり減る。

ANCHANG:なるほどね。

KIBA: ライブやってる楽しさがこんな減るんや、と。ぼくが本来やらなきゃいけないことはこれじゃないって、やってて思ったんですよね。これじゃなく、自分の楽しさをぶつけていくっていうか。そこで勉強になったのは、これからも歌を上手くとは思わないでやっていかないと、ってこと。

ANCHANG:それは正解ですね。

KIBA:上手い人はたくさんいるんで。

ANCHANG:そうですよね。

KIBA:ちょっと前にぼく、たまたまTHE WILLARD(※1982年結成のパンクバンド)の最近のライヴをYouTubeか何かで見たんですよ。ぼくが若いとき、バンドをやるより前にTHE WILLARDがデビューして、その頃ボーカルの方は歌を上手く歌うタイプじゃない、だけどともかくかっこいいみたいに思ってて。そのスタイルが全然変わってなかった。

 それで40年とかやってるって、なんてかっこいいんだって、震えたわけ。上手くて40年より、もっとかっこいい。これでやり続けるってすごい覚悟やなって。ご本人に自分の歌は上手くとかじゃなく、こうだっていうのがきっとあるんだろうなって、すごく感動した。

――KIBAさんから見て、ANCHANGさんのボーカルスタイルはどう感じられますか?

KIBA: SEX MACHINEGUNSは演奏とか、楽曲とかは「これぞ、メタル」っていうか、メタルのど真ん中っていうか、言い方は分かんないけど。ANCHANGの歌もいわゆるメタル的なハイトーンで。でも歌詞だけちょっと外れたところにいて。もし歌も違ってたら、いまみたいなフィールドにはいなかったかもしれないね。

 歌詞以外はメタルとしてきちんとしたものを提供してる。でも一個だけ外してる感じがSEX MACHINEGUNSの面白さなんじゃないかな。あれもこれも散らばってたら何のバンドかわからなかったと思うんだけど、そこは忠実にメタルとしていいものを提供しているというのは大事なのかもと思います。

――ANCHANGさんのそのハイトーンはどうやって身につけたのですか?

ANCHANG:当時ビジュアルブームなんで、みんな「ローラ♪」みたいな歌い方するやつが多くて、なんか飛び出さなあかんなと。同じようなことやっててもしゃあない。かと言って、KIBAさんみたいな歌い方ができるわけもないし。じゃあ高い声、気持ちはやっぱりメタルなんで、時代的にはビジュアル系かもしれんけど、じゃあハイトーン出そうと。高い声の練習だけして。実際、何であんな高い声で歌うんですか? と言われたりもしたけど、人と同じことしてもしょうがないんで。

――自分の一番歌いやすいキーだから高音にしているわけではないと。

ANCHANG:そうですね、どちらかと言えば苦しいです。普通にしゃべってたら声自体は低いほうなんで。

KIBA:確かにそうだね。

KIBA(Gargoyle)、ANCHANHG(SEX MACHINEGUNS)
KIBA(Gargoyle)、ANCHANG(SEX MACHINEGUNS)

最終更新:2025/12/30 16:00