KIBA x ANCHANG インタビュー対談後編 ~お金を払うとかライブ会場に行く、そいうことを含めて音楽には価値がある

――SEX MACHINEGUNSがメジャーデビューした当時を振り返ってみて、いまでもメタルバンドでメジャーデビューとか、メタルで商業的な成功は可能だと思いますか?
ANCHANG:可能だし、いわゆるラウド系って名前を変えたりしているだけでデビューしているバンドもいますよ。マキシマムザホルモンなんてメタルじゃないかって感じだし、いろんな方法論があるんじゃないかな。で、この企画がサイゾーさんだから言いたいなと思うところがあるんですけど、日本人めちゃめちゃメタル好きなんです。ただ日本人が日本人のバンドを否定する傾向についてです。
外人すごいと思っていて、日本人はまだまだみたいな感覚がある。でもそこは違うよと言っておきたいんです。これはおそらく長い歴史の評論家たちが「外人すごいんだ! 外人のライブ観に行けよ!」と言い続けたみたいなところがね、無きにしも非ずかな。
――SEX MACHINEGUNSで『BURRN!』(※日本を代表するヘヴィメタル専門誌)に出たことはあるのですか?
ANCHANG:ありますよ。あ、当時の『BURRN!』は出なかったですよ。
――Gargoyleはありますか?
KIBA:出たことあるかもな、くらいです。
ANCHANG:難しいところですよね。確かに洋楽に勝てない部分もちろんあるけど、演奏力とかに関してははるかに日本人の方が良かったりしますから。でもボーカルとかになってくると、どうしても体の違いがあったりね。
――体格差ということでしょうか。
ANCHANG:あの声を出せるにはあの体が必要みたいなところも正直あります。あとはジャパメタ(※国産のメタルの意味。ジャパニーズメタルの略称)とかメタルがさっき言ったダサいっていうのがあるから、好きなんだけど、表に出ようとしないっていうか、難しいから出来へんよな、みたいな部分もある。
そのせいか、プロのミュージシャンってメタル好きやけど、優しい音楽やってる人が多いじゃないですか。好きなくせに。この概念的なところは崩れないといけないかなと思う一方で、それはそれで音楽だし良いんじゃないかとも思います。
KIBA:ぼくはそれで良いと思います。上手いのに他の音楽に行ってくれたおかげでぼくらの席がある(笑)どんどん行ってくれ、こっちは好きなものをそのままやりますって。
――CDから配信に音楽の主体が変わってると思うんですけど、このことについて、収益面だったりとか、バンドをやっていくうえで変化を感じますか?
ANCHANG:ぼくは特殊な考え方かもしれないですけど、音楽でお金取ろうと思ってないというか、むしろなんでもいいから音楽を聴いてくれよと思うんですよね。いわゆるサブスク的なものが流行るとか、CDが売れないとか、ぼくには全く関係ないんです。
変な話、コピーでもいいしYouTubeでもいいから、とにかく曲を聴いてくれ、と。そっちのほうが100倍嬉しいです。実際、サブスクはちょっと難しいなと感じてます。始めはね、良いなと思ってたんですよ、誰でもひょいひょい色んな曲聴けるから。だけど、アルバムがあっても、この曲とこの曲の人気曲だけ聴いたらええわっていう人たちが増えてしまいましたよね。
何でも聞けるけど、何にも聴いてないっていう時代っていう意味では、良くないなって思います。お金に関しては何とも思わないし。そこはね、自称ライブバンドなんで、最終的にはライブ来てくれて、自分の曲知ってくれてたら良いです。
――バンドの運営の仕方に変化はありますか?
ANCHANG:プロモーションがなくなりましたね、とにかく。当時東芝EMIっていう会社で単純に宣伝費をいっぱいかけてもらってたんですよ。例えば、テレビに出るとかラジオ番組持つとか、雑誌に出るとかです。
雑誌の取材なんて1日3つ4つとかありましたから、「何の取材だったの?」みたいなことが当時はしょっちゅうありました。だけどそれが一切なくなって、いまは何が良いかって、SNSじゃないですか。だけどSNSも全く同じ現象が起こってて、世の中の人が興味あるものしか見なくなってますよね。「SNSで広げたほうがいいよ」って言われるんですけど、全然広がらへんやん。
KIBA:向こうから来てもらわないかん。
ANCHANG:ぼく自身がそうですもんね。DIY見だしたら、DIYしか見いへん。その隣のものは見ないっていう時代なんで。これはね、何でも手に入れやすく見れるし、情報が入るのに、むしろ入らなくなってきた。そういう変化はありますよね。
だからぼくはGargoyleを知ってるから「Gargoyle何してるのかな?」とか、ツイッターとか見たりとか、昔のメンバーの人が出るんだとか、ライブやるんだとか分かるじゃないですか。でも、変な話、LUNA SEAの情報とかは見ないわけですよ。CM見たらマックのCMでなんかLUNA SEAみたいなのが出てるやん、みたいな。
――プロモーションの力っていうのはSNS全盛のいまでも必要だなって感じられるということですか?
ANCHANG:必要だなというよりは、一長一短なんですけど、また口コミの時代に戻ったのかなと思いますね。結局誰かが言わなかったら、SNSもYouTubeも見ないわけですよ。ということはね、KIBAさんまた地獄の声の時代が……。
KIBA:来るかもしれない(笑)
ANCHANG:結局情報が溢れてますからね。ぼくの勝手な考えですけど、良いライブをしていても、なかなか映像も上がらないし、出てもこない。Gargoyleやっぱりすごいぞ、KIBAさんすごいぞっていう情報がちょっとずつ口コミレベルにまた戻ってきてるのかな。
KIBA: SNSを介した口コミっていうことだよね。
ANCHANG:そうですね。ちょっと観てみてっていうのが逆にできるから。
