KIBA x ANCHANG インタビュー対談後編 ~お金を払うとかライブ会場に行く、そいうことを含めて音楽には価値がある

――ライブの時の動画などの無断撮影に対して、お二人はどういう意見をお持ちですか? 賛成ですか、反対ですか。
ANCHANG:どっちもですね。どっちもありだけど、生の圧力感、振動とかは生のライブでしか味わえないじゃないですか。YouTubeとかの良くないところは評論家になってしまうことですね。あとね、お金を使うか、使わないかですごい壁があるんですよ。これをすごく感じます。
YouTuberのイベントとか行くと、YouTuberのバンド系の人たちのイベントにすごい集まるけど、そういう人たちがライブやるって言ったら、誰も行かない。
やっぱり音楽には実は価値があるから、お金を払うとか、ライブの会場まで行くとか、そういうのを含めてなんですよね。だから撮ってもらって配信するとかぼくは良いんですけど、それを許してしまうと、価値が薄れるような気もするし、あるべきものが悪い方向に伝わる可能性もあるなと思います。
――KIBAさんはどうですか?
KIBA:好きにすりゃあいいけど、もっと生で観てとは思う。画面を観てるより、俺を観てるほうが楽しいと思う。それだけで、あとは好きにすればいいかな。
――オフィシャルで撮影を禁止するとか、そういうわけではない?
KIBA:分かんない。してるかもしれない。知らない。
ANCHANG:一応レコード会社というか、流通会社というのがあるので、禁止してると思いますよ。著作権的な部分がどうしてもあるので。オープンにしても良いかなとはぼく個人は思う面はあるけど、それでお仕事してる人がいるっていう意味では自分から良しとすることはできないかな。
――バンド内でみんなで話し合ったりするんですか?
ANCHANG:そうですね、SEX MACHINEGUNSは特に面白いですよ。どんどん映像出したほうがいい派と、出したらあかん派と。
KIBA:ぼくはサポートメンバーとしゃべってて、「KIBAさん、TikTokでその衣装で踊りませんか? 絶対ウケますよ」みたいなこと言われますね。そしたら「そう? 教えて、分らんから」って感じです。観たことないし、TikTok。
ANCHANG:KIBAさんは誰かに勝手にやらされてしまうみたいなの、向いてると思います。
KIBA:ただぼくはTikTok観たことないですし、それ以外もよく分かってないなと思うことは多いんだけど、唯一思ってるのは、昔の人で写真撮ったら魂を抜かれるって撮らなかった人がいたじゃないですか。そんな風にはならないようにしようって。なんか目の前に新しいものがあって、面白そうならやればいいじゃんくらいの感じで、なんとも思ってない。
ANCHANG:ネタみたいな話があって、ぼくらの著作権的なこと全部任せて、流通もやってもらっている会社があるんですけど、宣伝の若い女の子が「TikTokやった方がいいですよ」と。で、やったんですよ。『みかんのうた』を全員バラバラで。やったら、びっくりするほど回らなくて。「何で?」っていう話になるじゃないですか。俺らがウケへんだけとかじゃなくて、要はお客さんの年齢層が高いから、見方がわかんないっていうオチがあった。もちろんそれを広げていくのも必要なんですけどね。そういうことも起こるんやと(笑)
KIBA:世代的にね、そういうことでしょうね。

――それを踏まえて、若い層にどうやってアプローチしていくかみたいなことは、考えたりするんですか?
ANCHANG:お仕事的部分でいくと、若い層を取り込まなあかんとか、新しいファンをっていうのもあるけど、それを狙う必要はないかな。
先輩とか、おじさんとかにね、「ディープ・パープルを聴かないとだめだよ」と押し付けられたってね、若い子はなんか、こんなん嫌やってなりますよ。ぼく自身もそうですもん。嫌だ、こんな古い音のバンドと、当時は思って。いまは勉強したから、すごいなっていうのが分かりますよ。でも当時はね、そんなん聴いてられへんと思ったんと一緒で、押し付ける気はないですね。
――SEX MACHINEGUNS、もしくはANCHANGさんとして、ミュージシャンの展望というか、いま後の目標的なものってありますか?
ANCHANG:地道にできたらいいですが、物質的にというか、SEX MACHINEGUNSを武道館でやりたいなと。もともとの夢がそこなんで。
――それは現メンバーのSEX MACHINEGUNSとしてという意味でしょうか。
ANCHANG:いまのSEX MACHINEGUNSというよりも、バンドという意味で、大きいくくりで考えてですね。ぼく自身の人生もそうですけど、千人くらいの前でやったら気持ちええやろなと。千人くらいの前でいえーいって言ったら、俺にいえーいと返してくれるっていう環境にすごい憧れたんで。それができるように続けられたらいいなって。
――前回のインタビュー時でKIBAさんは解散ライブはやらないっておっしゃっていたのがとても印象的だったのですが、そのお考えは変わってないですか?
KIBA:そうですね。やらずに済ませたい。もう次は出来ないってところまでやれたら、一番幸せやから。
ANCHANG:もう、次ないなっていうとこまで行ったらいいんじゃないですかね。できるとこまでやる、行けるとこまで行く。元々SEX MACHINEGUNSのスタイルもそうですもん。行けるとこまで行ったなと。こんなしました、あれしました、あれやりました、これやりました、みたいなことやって、やり切ったなと思ってもうすることがないなってなったらぼくも辞めてええかな。
(文・構成=編集部)