香川照之、広末涼子が声優で地上波カムバック 『名探偵コナン 失踪事件』と消えた監督の謎

今週の『金ロー』はSNSを賑わすことになりそうです。1月23日(金)の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)は、『名探偵コナン 江戸川コナン失踪事件 史上最悪の二日間』になります。2014年にTVアニメ2時間スペシャルとして初放映された作品で、ゲスト声優として香川照之と広末涼子が出演しています。
銀座の高級クラブでのトラブルが報道され、香川照之は2022年秋からCMやテレビのレギュラー番組を降板していましたが、歌舞伎界では市川中車として大いに活躍中です。2025年にはWOWOWの連続ドラマ『災』に主演しており、2月には『災 劇場版』が公開される予定です。今回の『名探偵コナン』の再放送は、地上波復帰へのいい緩衝材になりそうです。
広末涼子は2025年4月にトレーラーとの追突事故、および搬送先の病院で傷害事件を起こしています(傷害容疑については後に不起訴処分)。彼女もワイドショー以外での地上波テレビの出演は久々です。
クセの強いゲスト声優を迎え、今回の江戸川コナンはどんな事件に巻き込まれるのでしょうか?
「伝説の殺し屋」に拉致されるコナン
阿笠博士宅のお風呂が故障したことから物語は始まります。江戸川コナン(CV:高山みなみ)は灰原哀(CV:林原めぐみ)たちと近所の銭湯へ行くことになります。「見た目は子ども、心は大人」な灰原哀の入浴シーンは、大きなお友達へのサービスショットでしょうか。
男湯にひとりで入ったコナンは、怪しげな男が脱衣所のロッカーを使って荷物の受け取りをしているのを目撃します。身の危険を感じたコナンは洗い場へと駆け込みますが、運悪く足を滑らせて転倒。失神したコナンは、怪しい男たちに車で拉致されてしまいます。
怪しい男たちは、裏社会で「伝説の殺し屋」と噂されるコンドウ(CV:香川照之)と「アドリブのタツ」と呼ばれるタツ(CV:草尾毅)でした。コナンは車の中で目を覚ましますが、自分の名前さえ覚えていない記憶喪失状態です。コナンはそのまま彼らのアジトへと運ばれます。
そのころ、毛利探偵事務所をひとりの女性・水嶋香苗(CV:広末涼子)が訪ねてきます。雑誌の編集をしている香苗は結婚を約束している相手がいるのですが、浮気をしていないかどうか調べてほしいという依頼でした。
伝説の殺し屋・コンドウ、記憶喪失になったコナン、浮気調査を依頼した香苗……。一見すると接点のなさげな3人の行動が、次第にひとつに収斂されていくことになります。
「どんでん返しの名手」が書いたシナリオ
ふだんの分かりやすい謎解きに比べると、『江戸川コナン失踪事件』はかなりテイストの異なるエピソードとなっています。時間軸がシャッフルされ、物語の視点はコナンだけでなく、複数の人物にわたっています。事件も指示役が誰か分からない「トクリュウ」型犯罪を扱っています。
今回の脚本を担当したのは、「どんでん返しの名手」として知られる内田けんじ監督です。ミニシアター系で公開された『運命じゃない人』(2005年)が高く評価され、大泉洋主演の『アフタースクール』(2008年)も評判になりました。
堺雅人、香川照之、広末涼子をメインキャストに迎えた『鍵泥棒のメソッド』(2012年)は脚本の完成度の高さから、海外でも人気の高い作品です。売れないダメ役者の桜井(堺雅人)が、銭湯で転んで記憶を失った裏社会の男・コンドウ(香川照之)と生活を入れ替えるというサスペンスコメディでした。婚活中の雑誌編集者・香苗(広末涼子)が物語のキーパーソンです。
香川照之、広末涼子がゲスト声優を務める『江戸川コナン失踪事件』は、『鍵泥棒のメソッド』の後日談となっています。『鍵泥棒のメソッド』で結ばれたはずのコンドウと香苗のその後が描かれているわけです。ぼろアパートで暮らす桜井も後半にちょっと登場しますが、残念ながら声優は堺雅人ではありません。
14年間、新作から遠ざかっている内田けんじ監督
記憶喪失というドラマチックなモチーフを扱った『江戸川コナン失踪事件』ですが、いつもとテイストが大きく異なるためか、ファンからの評価はいまいちなようです。『鍵泥棒のメソッド』を観ていたミニシアター好きな人たちにはスピンオフ作品として楽しめる内容ですが、多くの『名探偵コナン』ファンは『鍵泥棒のメソッド』をそれほど熱心には観ていません。
ミニシアター系で高い評価を受けた作品をメジャー向けの作品に仕立て直しても、ヒットするとは限りません。客層の違いもあり、そこは簡単ではないところです。
TVドラマや実写映画のシナリオライターとして活躍した野沢尚氏を脚本家に迎えた劇場版『名探偵コナン ベーカー街の亡霊』(2002年)は、シリーズきっての名作となっています。マンネリ化を防ぐためにも、新しいクリエイターの参加は欠かせません。
ただ、『江戸川コナン失踪事件』に関しては、『鍵泥棒のメソッド』のスピンオフではなく、オリジナルの新作エピソードのほうがよかったように思います。内田けんじ監督のような才能のある人材が、一回きりの参加で終わったのは残念に思えます。
内田けんじ監督は脚本の緻密な完成度を誇る一方、寡作なことでも知られています。おそらく、自分が200%自信が持てる脚本でない限り、作品にはしたくないのでしょう。
2024年に亡くなった中村靖日さんの主演映画『運命じゃない人』の追悼上映会には登壇した内田監督ですが、監督作は『鍵泥棒のメソッド』から14年、脚本も『江戸川コナン失踪事件』から12年ごぶさたしていることになります。
まぁ、長谷川和彦監督のように『太陽を盗んだ男』(1979年)からずっと新作を撮らず、伝説化している巨匠もいるわけですけどね。長谷川監督いわく「企画を考えているうちは、まだ現役監督だ」そうです。
放送30周年を迎えた『名探偵コナン』の最終回が先か、内田けんじ監督のカムバックが先か。内田監督の帰還を、気長にお待ちしていま~す。
文=映画ゾンビ・バブ
