ダルビッシュ有らを擁する2009年WBC日本代表 vs. 大谷翔平らを擁する2023年WBC日本代表――“史上最強投手陣”はどっちだ!?

日本プロ野球の歴史をひもとくとき、我々は常に「最強」という甘美な毒に冒される。
とりわけ、WBCという真剣勝負の舞台で世界の頂点に立った、2009年と2023年という二つの「投手王国」。このどちらが上かという議論に明確な答えは出ないが、最高に贅沢な泥仕合である。
この二つの時代を分かつ「スタイル」と「出力」の差を、冷徹かつ情熱的に解剖していく。
“崩れないこと”を最優先した成熟型ローテーションvs. “考える前に封じる”才能型ローテーション
ダルビッシュ有、岩隈久志の両輪を軸に、松坂大輔が「負けないエース」として君臨した2009年代表。その強みは、一言で言えば「完成度と安定感」だ。相手を力でねじ伏せるというより、1点を守り抜き、相手の嫌がる場所へ精密に投げ切る技術。まさに「勝つための最適解」を体現していた。
また、四球で自滅しないこと、試合中に修正できることなど、短期決戦で最も価値の高い能力を備えていた。国際大会では「良い投球」よりも「悪くならない投球」が重要になる。2009年代表は、その現実を熟知していた。
相手が何を狙っているのか。審判のゾーンはどこにあるのか。球が滑るなら、どこまでリスクを取るべきか──。勝つために“やらないこと”を決められる投手陣。それが2009年代表の本質だった。
対して、2023年代表は「考える前に封じる」才能型ローテーションと言えよう。大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希、そして精神的支柱として帰還したダルビッシュ。
こちらは「球威と球質」の暴力だ。160キロ超がデフォルトとなり、フォークのキレはMLB基準すら超越する。相手が分かっていてもバットが空を切る、圧倒的な「個」の集結。2023年代表は、戦術以前に物理的に打てない投手陣だった。
2009年代表は“適応力”、2023年代表は“出力”
2009年代表の強みは、圧倒的な「適応力」にある。WBC特有の滑るボール、広すぎるストライクゾーン、劣悪なマウンド。こうした条件に対し、2009年代表は精密なコントロールと変化球の出し入れで、まるで国内の試合かのように順応してみせた。
一方、2023年代表は投手陣全体で出力を押し出した。環境の変化など関係ない。160キロ超の直球と、高速で落ちるスプリットの波状攻撃があれば、どこのマウンドでも、誰が相手でも粉砕できる。現代野球が到達した一つの極致である。
ここに、「完成度の2009」と「才能の2023」という決定的な分岐がある。
また、リリーフ運用にも、時代の違いは色濃く表れている。
2009年は、馬原孝浩、藤川球児といったNPBで確立された役割をそのまま持ち込んだ「盤石の継投」。準決勝、決勝で見せたダルビッシュへのスイッチも、戦術的な「継投の必然性」に基づく、美しい流れだった。
一方、2023年は違う。準決勝で山本由伸をロングリリーフに回し、決勝の最後を大谷翔平が締めるという「超豪華リリーフ化」を敢行した。これは戦術を超えた「象徴性」の極致だ。エースが最後を締める──シンプルだが、これ以上ないほど残酷な回答だった。
2009年代表は、日本が誇る「緻密さ」を極限まで高め、国際大会という異質な環境において「最も勝てる確率が高い集団」だった。
2023年代表は、NPBのレベルがMLBと遜色ない領域まで進化したことを証明した、「純粋なスペックで歴代最高」の軍団である。
勝つための最適解を追求した2009年と、個の戦力値を極限まで高めた2023年。この二つの王朝がNPB史を二分している事実に、我々はただ感謝するしかない。
もし、この二つのチームが対決したら──。そんな妄想こそが、野球ファンに許された最高の贅沢なのだ。
(文=ゴジキ)

