吉田正尚が出場決定! 2026年WBCから見る侍ジャパン──王者として連覇するための展望

2026年のWBCで、侍ジャパンはもはや「挑戦者」ではない。
2023年大会で世界一に立った日本は、次の大会では研究され、対策され、想定される側として大会に入る。これは称号であると同時に、最大のハンディキャップでもある。
2023年の勝利は奇跡ではない。だが同時に、再現が保証された勝ち筋でもない。だからこそ2026年は、「熱量」や「物語」ではなく、最初から最後まで勝利に対してどれだけ貪欲で、かつ冷静に戦略を組めるかが問われる大会になる。
王者の日本は“研究される側”として戦う
前回大会は、圧倒的な投手力と野手陣の日本らしい戦い方で世界一になった。特に2023年大会で日本が見せた強さは、大谷翔平を軸にした圧倒的な象徴性、投手層の厚みを生かした分業制、そして守備と走塁で流れを逃さない短期決戦対応力にあった。
問題はそれらすべてが「次は対策される前提」に変わったという点だ。2026年は相手も「日本の投手はこう攻める」「日本の野球はこう防ぐ」というデータを持って挑んでくる。
相手はもう日本を「怖い国」ではなく、「倒すべき王者」として準備してくる。2026年の侍ジャパンに必要なのは、2023年の再演ではなく、一段階更新された勝ち方である。
自分たちの野球を押し通すのではなく、相手の対策をさらに上回る後出しジャンケンができるか。ここが連覇へのスタートラインだ。
そのうえで、大谷翔平はチームの象徴であり、世界大会の顔である。だが2026年大会で重要なのは、「どう使えば最も勝率が上がるか」を大会前に決め切る勇気だ。
打撃専念なのか、限定登板なのか、大会終盤(準決勝・決勝)に照準を合わせるのか……。これらを大会前に明確に定義し、現場の混乱を排除すべきである。
特に投手としては、大会終盤の切り札としての価値を最大化させるなら、大会序盤での無駄な消耗は避けることが必須だ。
状況を見て決めるのは、短期決戦では遅い。大谷の価値は物語性ではなく、期待値の最大化にある。感情が入る前に、冷静なプランを終えておく必要がある。
それだけではない。今大会も投手陣は豪華で、先発陣には山本由伸、菊池雄星、菅野智之といったMLBで活躍を見せている投手が並ぶ可能性が高い。しかし、彼らを安易な序列で決めるのはナンセンスだ。短期決戦では、エース順=勝率順ではないからである。
確実にゲームを作るタイプ、要所で三振が取れる高い奪三振率を誇るタイプ、失敗をしないピッチングをするタイプなど、役割は状況によって変わってくる。
重要なのは「誰が一番すごいか」ではなく、「どの局面で最も勝率を上げられるか」で役割を振ることだ。対戦カードの特性と球数制限に合わせた「用途別」の配置が、短期決戦のマネジメントにおいて不可欠である。
第二先発やリリーフの起用法は? 打線に必要なのは“得点の再現性”
国際大会の勝負所は、4〜6回の谷間にもある。ここをどう埋めるかで、ブルペンの消耗、連投リスク、想定外の継投崩壊が決まる。
だからこそ、伊藤大海のように回跨ぎでも高品質で消化できる投手は、戦力ではなく「保険」として必須になる。そのほかにも、前回大会を経験している髙橋宏斗や、先発からリリーフまでをこなせる北山亘基、平良海馬の起用法やパフォーマンスも鍵になるだろう。
また、「7回はこの人、8回はこの人」という固定観念は、球数制限のあるWBCではリスクでしかない。重要なのは、高いレバレッジを分散できる配置だ。誰がどの局面で出てきても役割を遂行できる準備と、連投を前提としない柔軟な継投策が、不測の事態を防ぐ。
前回大会も、守護神や勝ちパターンといった固定された起用法はほとんどなく、フェーズごとに柔軟な采配で勝ち上がった。固定は安定を生むが、同時に脆さも生む。王者であるほど、選択肢は多く持たなければならない。
国際大会で初見の投手に対し、大味な野球を期待するのは分が悪い。大谷や鈴木誠也、近藤健介のような選手を軸に据えつつ、前回大会での源田壮亮のような存在も不可欠である。
また、前回大会では途中から吉田正尚を4番に据えたように、4番打者を固定することに固執せず、得点期待値の最大化を優先すべきだろう。
ときには四球を選んで次につなぐ、あるいは相手の失投を確実に仕留める。一振りの魅力だけでなく、相手バッテリーにストレスを与え続ける「立ち居振る舞い」を含めた攻撃プランが求められる。
2026年WBCで問われるのは、才能の量ではない。ましてや感動の再演でもない。問われるのは、どこまで「勝つこと」に対して非情になれるかだ。
王者とは、もっとも強いチームではない。もっとも想定が深く、もっとも無駄を嫌い、もっとも冷静に勝率を積み上げられるチームである。
大谷の起用法、先発陣の用途別配置、ブルペンの分散設計、打線の再現性……。それらはすべて、「勝った後に美しく見える物語」ではなく、勝つ前に決めておくべきプランだ。
2023年、日本は世界一になった。2026年、日本が連覇を果たすとすれば、それは歓声ではなく、準備の積み重ねによってだろう。
王者とは、感情を排し、最後に勝ち切れる存在である。
(文=ゴジキ)

