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『金ロー』を独自視点からチェックする!【73】

貴公子ティモシー・シャラメの甘いミュージカル 『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』

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『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』[DVD]

「プリンス・オブ・ハリウッド」と呼ばれている現在進行形の映画スター、ティモシー・シャラメ。少年のようなルックスですが、2025年12月で30歳となりました。

脳内天国『チャーリーとチョコレート工場』

 2月13日(金)の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)は、ティモシー・シャラメが主演したミュージカル映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(2023年)です。撮影時のティモは25歳でした。軽やかなダンスと歌声を披露しています。

 これからのハリウッドを担うティモの経歴と併せて、地上波初&ノーカット放映となる『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のチェックポイントを紹介します。

ジェンダーに関係なく愛される新時代のスター

 ルックスだけでなく、性格もいいことで知られるティモシー・シャラメ。母親と姉はダンサーで、ティモもダンスが得意です。

 クリストファー・ノーラン監督のSF映画『インターステラー』(2014年)では、マシュー・マコノヒーの息子(少年期)を演じ、ルカ・グァダニーノ監督の『君の名前で僕を呼んで』(2017年)で年上の男性に惹かれる少年を演じ、一躍ブレイクします。ジェンダーに関係なく人気があるところが、今どきのスターだなと感じさせました。

 ハリウッド超大作『DUNE デューン 砂の惑星』(2021年)に主演する一方、再びルカ監督と組んだR18映画『ボーンズ アンド オール』(2022年)ではカニバリズム(人肉食)のキャラクターに挑むなど、ハードな作品にも取り組んでいます。

 さらに『名もなき者 A COMPLETE UNKOWN』(2024年)では若き日のボブ・ディランという難易度の高い役に挑戦し、楽器演奏&歌唱を見事に完コピしてみせました。しかも、アフレコではなく、同録で撮影しています。役づくりに真摯に向き合う姿勢も、高く評価されています。

 最新主演作『マーティ・シュープリーム世界をつかめ』(3月13日公開)では、コロナ期間中に『名もなき者』のギター演奏と並行して卓球の特訓に励み、その成果を作品に活かしています。アカデミー賞主演男優賞に『君の名前で僕を呼んで』『名もなき者』に続き、ノミネートされています。

 今のハリウッドは、ティモを中心に回っていると言っても過言ではないでしょう。

ジョニー・デップが演じたウォンカとは別キャラ

 そんなハリウッドの貴公子が主演した『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は、先週放映された『チャーリーとチョコレート工場』と違って、万人向けのマイルドな内容となっています。

 チョコレート工場を経営するウイリー・ウォンカの青年時代を描いた作品ですが、ジョニー・デップが演じたウォンカのような変人キャラではありません。ロアルド・ダールの児童文学『チョコレート工場の秘密』の前日談として楽しみましょう。

 ティム・バートン監督作のような毒要素は控えめとなっており、新時代のハリウッドスターであるティモシー・シャラメのキュートさを愛(め)でる作品となっています。

チョコレートのように甘いミュージカル

 若き日のウォンカ(ティモシー・シャラメ)が、まだチョコレート工場を開く前の物語です。チョコレート職人であるウォンカは、自分のお店を持ちたくて、有名チョコレート店の集まる街を訪れます。

 ところがその街は、夢を見ることが禁じられており、お店を開きたいと考えていたウォンカは警察に罰金を支払うはめになってしまいます。

 すっかり所持金がなくなったウォンカは、後払いOKな宿屋に泊まりますが、翌日になって膨大なサービス料金を請求されます。ウォンカは仕方なく、宿屋の地下にある洗濯工場で働くことに。そこには孤児のヌードル(ケイラ・レーン)をはじめ、借金を背負った人たちが過酷な労働を強いられていたのでした。

 しんどい日々を送る少女・ヌードルを励ますため、ウォンカは「ポータブル工場」を開き、その場で作った特製チョコレートをプレゼントします。ヌードルは初めて口にするチョコレートの美味しさに驚くのでした。

 ウォンカとヌードルが夜の動物園で歌い踊るシーンが、実にファンタジックに描かれています。甘いチョコレートと同じように、ミュージカル映画にはつらい現実をしばし忘れさせてくれる効能があるようです。

ハートウォーミングな作風の『パディントン』の監督

 ティム・バートン監督が撮った『チャーリーとチョコレート工場の秘密』がビター風味のブラックチョコだとすれば、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は口溶けのいいミルクチョコレートでしょう。

 本作を撮ったのは、やはり英国の児童文学の実写化『パディントン』(2014年)、『パディントン2』(2017年)で知られるポール・キング監督です。南米のペルーからロンドンにやってきたメガネグマのパディントンが、人間社会に打ち解けていく様子を描いたハートウォーミングなコメディ映画でした。

 ちなみに『パディントン2』で悪役を演じたヒュー・グラントが、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』では小人のウンパルンパに扮しています。

 英国で多くの人に愛されている『パディントン』の原作者のマイケル・ボンドは、第二次世界大戦のロンドン空襲で焼け出された子どもたちが地方へと疎開する姿をヒントに、パディントンを創作しています。

 家庭の暖かさを知らずに育った少女・ヌードルに、ウォンカが優しく接するところは、『パディントン』の世界とつながるものを感じさせます。

チョコの味を知らないカカオ農園の子どもたち

 ヌードルはウォンカに出会うまで、チョコレートを口にしたことがありませんでした。生まれてからずっと働き詰めのヌードルは、西アフリカで今なお学校に通うことなくカカオ農園で働く子どもたちを投影したキャラクターでしょう。

 朝から晩までカカオ農園で働く子どもたちは、生涯一度もチョコレートを口にすることがないと言われています。一枚のチョコレートを買うだけの経済的余裕が、彼らの家族にはないからです。

 コンビニやお店に並ぶチョコレート菓子を手軽な値段で楽しめる背景には、労働者搾取や経済格差という苦~い現実もあるのです。また、ヌードルたちが働く洗濯工場は、1990年代までアイルランド各地に実在した「マグダレン洗濯所」がモデルだと思われます。行き場のない少女たちが修道院の洗濯所で無報酬で働かされ、修道院は私服を肥やしていたそうです。

 ポール・キング監督は『パディントン』『パディントン2』の子熊のパディントンを移民として描き、外国人ヘイトの問題についてやんわりと言及しています。『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』も、チョコレート組合が警察と手を組み、若くて才能のあるチョコレート職人のウォンカを締め出すなど、既得利権の独占にこだわる保守的な社会を風刺した内容になっています。

ジョニー・デップとの意外な接点も

 最後に余談を。人気者のティモはセレブ実業家のカイリー・ジェンナーとの交際が今も続いていますが、以前は女優のリリー・ローズ=デップと付き合っていました。

 リリーはジョニー・デップとヴァネッサ・パラディとの間の娘です。ウォンカ役以外にも、意外な接点があったティモとジョニデでした。

 ジョニデとティム・バートンは交際相手が変わるたびにイメージが大きく変わっていきました。好青年のティモも、30代になって変わっていくのでしょうか。

 映画産業のメッカ・ハリウッドがこれからどうなっていくのかと同じように、ティモシー・シャラメの今後にも注目したいなと思います。

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(文=映画ゾンビ・バブ)

映画ゾンビ・バブ

映画ゾンビ・バブ(映画ウォッチャー)。映画館やレンタルビデオ店の処分DVDコーナーを徘徊する映画依存症のアンデッド。

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最終更新:2026/02/13 12:00