実写映画『ゴールデンカムイ』が地上波初放映 「製作委員会」の限界を感じさせた興収結果

シリーズ累積発行部数3000万部突破という大ベストセラー漫画を実写化したのが、山崎賢人主演映画『ゴールデンカムイ』(2024年)です。明治時代末期の北海道を舞台に、アイヌの埋蔵金をめぐるサバイバルアクションものとして話題を呼びました。
原作の面白さから、実写映画版『ゴールデンカムイ』もかなりの数字を記録することが期待されましたが、興収結果は29.6億円。コケてはいないけど大ヒットとは言えない、実に微妙な数字でした。
2月20日(金)の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)は、放送枠を35分拡大して『ゴールデンカムイ』を地上波初放映します。ただし、ノーカットとは謳っていないので、ヒグマが人を襲うなどの過激なバイオレンスシーンは部分的にカットされているかもしれません。
この機会に、なぜ実写版『ゴールデンカムイ』は微妙な結果に終わったのかを考えてみたいと思います。
アイヌの埋蔵金をめぐるサバイバルバトル
主人公は日露戦争帰りの元兵士、杉元佐一(山崎賢人)です。ロシア軍との激戦地となった「二百三高地」の攻防を生き残り、「不死身の杉元」という異名を持っています。北海道で砂金採りをしていた杉元は、アイヌの隠し埋蔵金の噂を耳にします。網走監獄を脱獄した24人の囚人たちの身体に彫られた刺青をつなぎ合わせると、埋蔵金のありかが分かるというものです。
野生のヒグマに襲われた杉元は、アイヌの少女・アシㇼパ(山田杏奈)に助けられます。この一件から、雪山でのサバイバル術に詳しいアシㇼパに協力してもらい、共に埋蔵金を探すことになるのでした。
しかし、埋蔵金を欲しているのは杉元たちだけではありません。日露戦争で脳を負傷した鶴見中尉(玉木宏)のいる日本陸軍最強の「第七師団」、箱館戦争で死んだはずの「新選組」の副長・土方歳三(舘ひろし)らも埋蔵金を狙っています。埋蔵金を資金にして、北海道に新しい国家を立ち上げるという壮大な野望を彼らは抱いています。
開拓時代の北海道で、杉元&アシㇼパ、鶴見中尉、土方歳三らが三つ巴のバトルを繰り広げます。
グルメ映画としては合格点だが……
実在した「日本の脱獄王」白鳥由栄をモデルにした白石由竹(矢本悠馬)、北海道民を震え上がらせた「三毛別羆事件」など、実際に起きた事件を脚色して盛り込み、虚実が入り混じるスリリングな冒険談となっています。
とりわけ、原作の大ヒットによって広く知られるようになったのが、アイヌ文化です。大自然と共に生きる少女・アシㇼパの知恵がなければ、不死身の杉元でも雪山から生還することはできなかったでしょう。
アシㇼパが「チタタプ、チタタプ」と口ずさみながら調理するアイヌ料理は野生味たっぷりで、実に美味しそうです。杉元ならずとも、食事の際には「ヒンナ、ヒンナ」と大自然の恵みへの感謝の言葉を口にしたくなります。
野田サトル氏の原作は、アイヌ文化をポピュラーなものにした功績は大きなものがあります。実写版も、グルメ映画、またアイヌ文化の入門編としては評価してもいいかもしれません。
発表時に聞かれた「また山崎賢人なのか」という声
では、本日の本題である実写版『ゴールデンカムイ』の興収結果が微妙なもので終わってしまった件についてです。
有料放送局のWOWOWが製作幹事社となり、原作の出版元である集英社、配給の東宝らが組んで盤石の「製作委員会」を組み、大ヒットを目論んだ実写版『ゴールデンカムイ』でした。しかし、この「製作委員会方式」が逆に足枷になったように感じます。
一流企業同士が手を組むことで相乗効果をもたらし、興収的成功を収めてきた日本独自の映画システムである「製作委員会方式」ですが、複数の企業が出資しているため、合議制で製作は進められます。つまり、冒険することはできないのです。
実写版『ゴールデンカムイ』は誰が杉元を演じるのか、発表前はかなりの話題となりました。しかし結果は、やはり人気コミックの実写化映画『キングダム』(2019年~)やNetflixシリーズ『今際の国のアリス』(2020年~)に主演し、ヒットに導いた実績のある山崎賢人に落ち着きました。
WOWOWが社運を賭けたとも言われる大作映画ゆえに、コケることは許されません。アクション大作の経験が豊富な山崎賢人だから、大きな事故もなく無事に撮影が進んだとも言えるのですが、主演俳優の発表時に「また山崎賢人なのか」という声があったことは確かです。
山田杏奈演じるアシㇼパ、大谷亮平演じる谷垣源次郎、大方斐紗子演じるフチ、といったキャスティングはハマっていたと思うのですが、杉元は山崎賢人以外の選択肢はなかったのか。せめてアニメの声優やハリウッド映画のように、オーディションをやるべきだったのではないでしょうか?
原作至上主義者たちが重視する、原作どおりの展開
1990年代以降の日本映画界を支えてきた「製作委員会方式」ですが、そろそろ新しい映画づくりに取り組むべき時代に来ているのではないかと思います。「製作委員会方式」は、あくまでもリスク分散するための守りの製作スタイルです。
ロマン溢れる冒険映画をつくるのなら、観客をもっとワクワクさせてくれるキャスティングに挑んで欲しいものです。
近年の漫画実写化案件は、原作キャラのイメージにあったキャスティングが重要視されています。その点、杉元役の山崎賢人は、冬山でのアクションなど大いに体を張っているのですが、新鮮味が感じられなかったわけです。本人の責任ではないので、その点では気の毒です。
原作至上主義者たちが次に重視しているのは、原作どおりの物語となっているかどうかです。原作ファンからそっぽを向かれることは、避けたいところ。その結果、今回の実写映画版はコミック全31巻あるうちの最初の3巻~4巻までを描いたところで終わっています。
一本の映画としては、ひどく中途半端な終わり方をしています。「続きはWOWOWを観てね」というわけです。
埋蔵金をいちばん欲しているのは誰?
WOWOWでは2024年10月~12月に連続ドラマ『ゴールデンカムイ 北海道刺青囚人争奪編』全9話が放映され、次週の『金曜ロードショー』でダイジェスト版が放映される予定です。実写版『ゴールデンカムイ』は、WOWOW加入のための販促ツールとなっています。
今夜の『ゴールデンカムイ』は、連続ドラマ『北海道刺青囚人争奪編』や3月13日(金)に劇場公開される『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』の予告編にすぎません。劇場料金を払い、WOWOW加入料を払い……。いったい、どれだけファンからお金を搾り取るつもりなのでしょうか。
1991年に開局した当時は、良質の映画や自社製作のオリジナルドラマを数多く放送するなど、とても魅力的なコンテンツが満載だったWOWOWですが、最近はすっかり冒険心を失った放送局になってしまったように感じます。全31巻ある『ゴールデンカムイ』をどこまで実写化する体力があるのかも気になるところです。
埋蔵金をいちばん欲しているのは、実はWOWOWなのかもしれません。
文=映画ゾンビ・バブ
