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小学館「マンガワン」事件、元横綱照ノ富士「弟子殴打」騒動、テスラ自爆営業…週刊誌が暴く“組織の病”

 さて、昨年1年間で、戦場で殺されたジャーナリストは129人にもなり、過去最多になったといわれる。

 その多くがイスラエルによる攻撃によるといわれている。

 そこに日本人ジャーナリストはいないようだが、元々既存のマスメディアは、自社の記者を危険地域などに派遣しないから、死ぬはずもない。

 だが、今回のトランプ大統領によるイラン攻撃は、事前に情報を掴んでいるところはどこもなかった。

 まだ情報は入ってこないが、何人かのジャーナリストも亡くなったのではないか。

 この戦争が始まる4日前だったが、NHKの川島進之介テヘラン支局長が反政府デモを取材したためであろう、イラン革命防衛隊に拘束されてしまった。

 川島が2月23日から収容されているのは「エビン刑務所」だそうだが、ここは去年6月のイスラエルによる爆撃で狙われたという。刑務所を混乱させて、囚人を解放し、現体制を揺さぶる目的があったといわれているそうだが、今回の爆撃ではどうなったのか?

 川島は新潮によれば、茨城県の私立茗溪学園高等学校を卒業後、筑波大学に進学。NHK入局後は、沖縄放送局を皮切りに、山口、東京などで勤務し、その後インドネシア・ジャカルタに赴任。帰国後は鳥取勤務を経て、昨年9月にはテヘラン支局長に着任していたという。

 NHK関係者がこう話している。

「彼は現地のペルシア語は話せませんが、英語は堪能。40代半ばで、仕事一筋。実は、少なくともイラン攻撃が始まるまで、外務省はイラン当局などを通じて彼の身の安全を確認できていたようです。そのため、政府とNHKは当局を刺激せず、水面下で解放交渉を進めるべく、彼が拘束されたこと自体の公表も控えていたのです。しかしイラン攻撃後、テヘラン市内に安全な場所はない。彼の身が心配です」

 川島の父親はこう新潮に語っている。

「本人は子供の頃から報道に興味があってね。自分の意思で行っていますし、リスクは理解していたでしょう。(NHKからは)本人が拘束されたその日のうちに連絡はいただきました。一日でも早く解放される方法として、何がいいのか。話し合った結果、対応は外務省とNHKに任せています。われわれは素人だから信じるしかありません。自分らが現地に行っても、会えるわけじゃない。いい報告を待つだけ。無事を祈っていただければ幸いです」

 私も無事に解放され、帰国することを祈りたい。

 ところで、今回のトランプとネタニヤフのイラン攻撃は苛烈を極めているようだが、イランの同盟国である中国が沈黙しているのはなぜだろう。

 西側諸国だけではなく、プーチン大統領でさえ批判しているのに、習近平国家主席は沈黙したままである。

 トランプ大統領の恐ろしさに震えてしまったのだろうか。その疑問に、ニューズウィーク日本版が答えてくれている。

<中国がイラン現体制を支援しないのは、意思の問題か、能力の問題か>と問う。

《アメリカとイスラエルがイランの指導部と軍事力を壊滅させた。

 それにもかかわらず、中国が目立った対応を取っていないことから、中国は同盟国にとって信頼できる存在なのかという議論が起きている。

 一部の論者は、アメリカがベネズエラの元大統領ニコラス・マドゥロを拘束した際にも同じような議論が起きたと指摘。今回の対応から、中国は世界各地で軍事力を展開できるアメリカには対抗できないこと、また中国が中東・北アフリカ地域でのアメリカの影響力に切り込もうとしてきた試みの限界が明らかになったと主張している。

 中国は、イランの核計画をめぐる交渉が続いていたにもかかわらず実施された攻撃と、最高指導者アリー・ハメネイの暗殺について、アメリカとイスラエルが国際法に違反したと非難している。しかし観測筋は、公的な抗議以上の支援が見られない点を指摘している。

 一部の中国研究者によれば、これは中国の大国としてのイメージと、信頼できるパートナーという評価に長期的な損害を与えたという。元駐中国アメリカ大使のニコラス・バーンズはXに「中国は、ロシアと同様に、権威主義的な同盟国にとって頼りない友人であることを示しているのである」と投稿した。

 本誌は在イラン中国大使館にコメントを求めている。

 しかしこの解釈は、中国共産党の計算をアメリカの視点で見ているにすぎないと、カーネギー国際平和財団の研究担当副会長エバン・A・ファイゲンバウムは批判する。

「西側の戦略家の多くは、中国がアメリカのように振る舞うことを期待しすぎている。そして中国がアメリカのように振る舞わないとき、それを意図的な選択ではなく戦略的失敗と結論づけ、中国が後退を余儀なくされたと解釈するのだ」

 ハメネイやマドゥロを救済することは、中国の中核的な安全保障利益に資さなかっただけとファイゲンバウムは主張する。

 中国がイランに対して用いる「同盟国」という言葉は、安全保障までカバーしている日米同盟の「同盟国」という言葉と比べてはるかに軽い。そもそも、中国は北朝鮮以外のいかなるパートナーに対しても正式な防衛義務を負っていないのだ。》

 中国にとってイランは単なる石油産出国。それ以上ではないのだろう。また、中国がイランに対して支援したくても、その能力がないからだと断じる者もいる。

《独立系ジャーナリストで中国問題の論評者であるテレンス・シェンはXに「大国は支配を求めるのである。問題は、中国がはるかに弱く、同盟国を真に守ったり救出したりする能力を欠いていることである」と書いた。

 また別の論者は、中国人民解放軍は依然として強力ではあるものの、基本的には自国周辺での作戦を想定した軍事力にとどまっていると指摘する。海軍も主に近海で活動する規模であり、米軍のように海外の基地網を使って、この地域で長期間にわたり軍事力を展開できる体制は整っていないという。》

 今年中にトランプ大統領と習近平国家主席は会談するといわれている。習近平は日本のような小国には大柄な態度をとり、様々な嫌がらせをしてくるが、アメリカ、それもトランプ大統領のような相手には、“平然”を装うことしかできないのだろう。

 しょせん、アジアの中の大国でしかなく、トランプ大統領やプーチン大統領とは格が違う。今回のイラン攻撃は、中国という国の弱さも露呈したといわざるを得ないのではないか。

 さて、以前からその確執が噂されている故・三笠宮寛仁親王の妃である信子さん(70)と長女の彬子さん(44)の母と娘だが、3月1日夕刻に札幌市のホテルで開かれた「第97回宮様スキー大会国際競技会」の賜杯授与式でそれが露呈したと文春が報じている。

 授与式には彬子さんも出席するはずで、席も2つ用意されていたそうだ。だが、結局、彬子さんは姿を見せず、信子さんが受賞者たちに授与したそうだ。

 式の関係者も全然知らされずに、式が始まる直前のドタキャンだったそうである。

 宮内庁は「御都合によりお取りやめになりました」と回答したが、三笠宮家関係者は文春に対して、こう打ち明けたという。

「実は、彬子さまはギリギリまで苦慮しておられたのです。ですが、皇族としての筋を通すには、式典を欠席するしか方法がないと判断された」

 母と娘がここまで断絶するには、長い歴史があった。

 夫・寛仁親王は癌闘病の末に薨去され、その後、母の百合子さんが三笠宮家の当主となった。

 一方で信子さんは、夫婦仲が冷え切った寛仁さまのもとを離れ、旧宮内庁長官公邸に一人で住んでいた。

「彬子さまは父の寛仁さまにつき、信子さまとの母娘関係は断絶状態になりました。寛仁さまの薨去後、彬子さまと瑶子さま、信子さまは、三笠宮家に合流。しかし、二四年に百合子さまが薨去されると、三笠宮家の当主はしばらく空席になっていました」(皇室担当記者)

 そして25年9月30日。宮内庁で7年ぶりに皇室経済会議が行われ、

「議題は不在が続く三笠宮家の当主問題でした。その結果、当主は、百合子さまの葬儀の喪主も務められた、彬子さまに正式決定しました。そして別居中の信子さまは、独立して新しく宮家を創設して、その当主となられることが発表されました」(同前)

 これで決着したかに見えたお家騒動だったが、信子さんが創設した「三笠宮寛仁親王妃家」という名称が再び母娘の関係に深刻な亀裂を生んだというのだ。

 そして先の賜杯授与式で、「今大会でご臨席を賜るお二方のうち、ノルディックコンバインド競技の三笠宮杯については、現当主の彬子さまに授与していただくのが自然だろうということになりました。その想定で、宮内庁に草案を提出しました」(札幌市関係者)

 しかし、宮内庁からお伺いを立てられ、信子さんは血相を変えたという。

「三笠宮杯の授与に関しては、絶対に譲りません」

 兄の麻生太郎の名前も出したとか……。

「彬子さまが三笠宮杯の授与者が信子さまとなったことを知らされたのは、札幌入りしてからだったそうです。彬子さまとしては、当主であるご自身が会場にいながら、三笠宮杯を授与しないのでは、道理が合わない。彬子さまは最後まで懊悩されたようですが、やむを得ず授与式欠席を選んだのです」(三笠宮家関係者)

 まっこと、尊いお方たちの考えることは、私のような下々にはわかりもうさん。

 ところで、WBCが始まった。日本は台湾、韓国、日曜日の夜のオーストラリアにも勝って、準々決勝進出を決めた。

 だが、内容はかなりお粗末だというのが、私の見方である。特にオーストラリア戦は、1点リードされ、追いつくのにかなり苦労した。

 オーストラリア側が投手の数が足りず、どう見ても二線クラスの投手がフォアボールを大量供与しているのに一本が出なかった。

 吉田のホームランで逆転し、リードを広げたのに、9回は大勢が2本のホームランを浴び、結局1点差の辛勝だった。

 前回のような勢いがないのは、地味な井端弘和監督のせいなのだろうか。これでは、マイアミで始まる決勝ラウンドでは苦労するだろう。

 日曜日には大相撲春場所が始まった。綱とりに挑む大関安青錦が見事な初戦を飾り、横綱大の里が無様に負けた。

 日本中、いや、ウクライナ中が安青錦に声援を送っている。

 そんな相撲界で、また暴力沙汰が起こった。それも元横綱の照ノ富士の伊勢ヶ濱親方(34)が、弟子の伯乃富士(22)を殴っただけでなく、酒瓶で殴打したといわれるのだから凄まじい。

 せっかくの安青錦人気で沸く大相撲に水を差す形になった。

 新潮によれば、

「伊勢ヶ濱部屋が大阪入りする直前に、後援会関係者も交えた酒席が開かれました。太いタニマチとして知られる人物も女性を伴って参加し、会は途中まで大いに盛り上がった。しかし酔った伯乃富士がその女性に絡むなど失礼な態度を取り、それを見た親方が激怒。殴打したといいます」(事情を知る部屋関係者)

 伯乃富士の顔面は腫れ上がり、目も開けられないほどだったという。

「もともと酒癖が悪いといわれる伯乃富士ですからね。彼にも問題はあるのでしょう。とはいえ、親方の取った行動も叱責などというレベルを完全に超えていた。連れの女性にちょっかいを出され立腹するタニマチを見て、相当慌てた様子だったそうです。よほど大事な相手だったのでしょうね」(同)

 伊勢ヶ濱から相撲協会に連絡があり、大阪から急遽帰京し、事情聴取を受けたという。

「親方としてあるまじき行為」といわれる伊勢ヶ濱親方の行動の背景について、カネが絡んでいると協会関係者はこう話している。

「伊勢ヶ濱部屋は墨田区にある5階建てマンションに居を構えていますが、両国に新しい部屋を造る計画が進行中です。建設費用20億円を超えるビッグプロジェクトであるにもかかわらず、当初の予定より大幅に遅れ、親方は焦りを募らせていました。そんな中、有力タニマチの離反を招きかねない軽率な振る舞いを弟子がするのを目にし、思わず自制心を失ってしまったのではないか」

 6階建て程度のビルに、親方はサウナや飲食店を入れる計画だというのである。相撲部屋をビジネスにするなど、協会側はとんでもないと、これにクレームをつけたそうだ。

 弟子を改名させたり、タニマチが力士を食事に連れ出そうとすると、「連れ出し代」として年間30万円を請求するそうだ。

 人間万事カネが全て。そんな伊勢ヶ濱親方だから、ビジネスがうまくいかなくなりモヤモヤが溜まって、暴力沙汰になったのではないかと新潮は見ているようだ。

 だが、相撲界最大の部屋を潰すということにはならず、相撲協会は処分発表を先延ばしして、ほとぼりの冷めるのを待つ考えのようだ。

 相撲界と暴力。この古くて新しい大問題を解消できない限り、大相撲人気は必ず陰りがまた来る。これは相撲界だけではなく、スポーツ界全体で考えるべきことであるはずだ。

 今週の最後の記事は、小学館の「マンガワン」事件。まあ「マンガワン」といっても、マンガに興味のない人には何のことかわからないだろう。

 まず「マンガワン」とは?からいこう。小学館がこう説明している。

「『マンガワン』は、小学館が提供するオリジナル漫画配信アプリです。最大の魅力は、毎日新しいエピソードが更新されること。朝の通勤時間や休憩時間に、新しいストーリーを読む楽しさは格別です。しかも、ジャンルも豊富で、恋愛、アクション、コメディ、ファンタジーなど、いろんなジャンルのマンガが揃っています。毎日違う物語に触れることで、日々の活力をもらえること間違いなしです」

 私のマンガ体験は「あしたのジョー」と「巨人の星」で止まっている。もう半世紀もマンガというものに触れていない。

 だが、今回の“事件”を知って、マンガの世界でマンガ家、原作者、編集者の関係は何も変わっていないと思った。

 それはともかく、「マンガワン」事件を文春で見てみよう。こう書きだしている。

「北海道の、とある芸術系高校の女子生徒だったAさんは、美術講師だった男に、高校一年時から繰り返し性的行為を強要されたとして、卒業後、損害賠償を求めて提訴した。二月二十日、札幌地方裁判所は男に一千百万円の支払いを命じる判決を言い渡した」

 この元講師には別の顔があった。山本章一という名で漫画家としても活動していた。Aに性加害を行っていた当時、山本は小学館の漫画アプリ「マンガワン」で『堕天作戦』というダークファンタジーを連載していたというのである。Aを凌辱している間も連載は続いていた。

 Aは、どのようにして山本に取り込まれていったのだろう。

 山本はAが通っていた高校のマンガ・イラストコースのデッサン講師を務めていたという。

「最初は普通に生徒と先生として会話をする関係でした」(A)

 だが山本は、「漫画の話をしてあげる」「業界の裏話を教えてあげる」といいながら接近してきたそうだ。

「『自宅まで送るよ』

 ある日、課題を終えて帰宅しようとするAさんに山本はそう声をかけた。Aさんが車に乗り込むと、いつの間にか自宅とは異なる方向の田舎道へ。人気のない場所に車を止めると、山本は突然Aさんにキスしようとし、無理やり胸を触ってきた。Aさんは驚き、その場ではうまく抵抗することができない。一言、『怖いです』と言ったが、山本は止まらず、長時間、Aさんの胸を触り続けた。

 後日、この日の出来事を『怖かった』と山本に伝えると、山本は『ショックだ』とAさんに言った。Aさんは、先生を不愉快にさせてしまったのでは、と逆に気に病むようになる」(文春)

 山本は彼女から家族の話を聞き出し、彼女を家族から孤立させるよう仕向けたそうだ。彼女が山本とのことを家族に相談させないためだったようだ。

 そして山本の行為はさらにエスカレートしていった。彼女をホテルに連れ込み、性行為を強要し、彼女の裸の写真まで撮ったそうだ。

 その後、月に1、2回程度呼び出されたという。判決文の中には「被告はいわゆるスカトロ行為の性癖がある……」と書かれているそうだ。

 こうした山本の鬼畜の所業はAが卒業するまで続いたという。

 Aは今もPTSDに悩まされ、まともに大学に通うこともできず、突然フラッシュバックの発作が起きるため、バイトも続かないそうである。

 だが、山本から「ある連絡」が来て、彼女は警察に話すことを決意した。

「次の子を見つけた」

 これ以上、被害者を出したくないという思いからだった。2019年8月に警察に訴えたが、事情聴取で詳細に説明しているうちに記憶が蘇り、苦しさのあまり、「たばこが大量に入ったコップの水を飲み、自殺を図った」のだ。

「一命をとりとめたAさんの訴えによって、二十年二月、山本は児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)容疑で逮捕された。当時十六歳だったAさんの裸を撮影し保存した行為が違法だとして罰金三十万円の略式命令を受けた。

『本当は強制性交だとして刑事罰を受けさせたかったのですが、時効や証拠の問題があって……』

 この二十年二月の逮捕を受けて、『堕天作戦』は突如休載した」(文春)

 しかし、ここから小学館の“隠蔽工作”が始まったというのである。

 乗り出してきたのは小学館のマンガワンの編集者Xだった。

「X氏は大手ドラッグチェーンの元社長の息子です。16年に当時のマンガワン編集長・石橋和章氏の手引きで小学館にきました。当初はフリー契約でしたが、後に正社員となりました」(小学館関係者)

 “手引きで”といういい方は、石橋とXとの関係に含みを持たせているようだ。

 21年5月、山本とX、AとAの友人とでLINEグループをつくり、示談の話し合いをしていくことになったという。

 Aは山本が逮捕され休載になったことから、マンガワン編集部に連絡して、連載を再開しないよう要請していたという。だが、山本とXは、それを何とか取り下げさせたかったようだ。

 XはLINEでこういっていたという。

〈本件については小学館の法務部も去年の2~3月、山本氏が釈放された際に共有がされております。(中略)連載再開できるかは編集部・法務部・社長室などの判断によって決定になります〉

 編集部やXだけではなく、社内の枢要な各部署で情報共有していたというのだ。

 さらにXは、示談金についても、山本へ原稿料を払っている小学館からすると、おそらく300万円一括は難しい、連載が再開できなかったら山本からの月々の支払いもできなくなってしまうなどといったという。

 さらに、Xと山本側は、示談金150万円、山本の連載再開中止要求を撤回、この件の口外禁止という条件を出してきたというのである。

 Aは、連載を再開する場合は、事実に基づいた説明をしてもらうことを要求した。

 結局、Aは不信感を抱き、示談はしなかった。そして2022年7月に民事訴訟に踏み切り、4年後の今年2月に先の判決が出た。

 しかし、驚くことに民事の判決が出た1週間後に、小学館が「(マンガワン連載中の『常人仮面』の)原作者の一路一氏は、『堕天作戦』の作者である山本章一氏と同一人物です」と発表したというのだ。

 なぜ、小学館は山本のことを公表したのだろう? ここは謎である。

「『常人仮面』は二二年十二月からマンガワンで連載が始まった。つまり『堕天作戦』の正式な終了からわずか二カ月後に、山本を別の名義で再起用したというのである。さらに巧妙なことに、絵のタッチが一緒だといくら名前を変えても容易に山本だと露見するため、別の漫画家を立て、山本は『原作者』として起用している」(文春)

 Aも全く知らず、これを隠蔽していたことに驚いている。

 だが、小学館がやっていたのはこれだけではなかった。

「実は山本だけではありません。マンガワンの別の作品においても、少女への性加害で逮捕された人間を、別のペンネームにして、密かに起用しているのです」

「別の小学館関係者からもたらされたこの情報をもとに取材を進めると、それはかつて『週刊少年ジャンプ』に連載されていた人気漫画『アクタージュ act-age』の原作を執筆していたマツキタツヤ氏のことだと分かった。今は八ツ波樹というペンネームで、マンガワンにおいて『星霜の心理士』の原作を担当している。

『マツキ氏は二〇年八月、路上で中学生の胸を触ったなどとして強制わいせつ罪で逮捕・起訴され、懲役一年六カ月、執行猶予三年の有罪判決を受けました。かなりの人気だった『アクタージュ』は集英社が当時、即打ち切りとしました』(前出・小学館関係者)

『星霜の心理士』はXの担当ではないそうだ。ということは、小学館では少女に対する性加害の前科があっても、お構いなしにペンネームなどで正体を隠し、起用することが当然のように行われていたということになる。

 今でも小学1年生などの学年誌を出している小学館に、あってはならない重大な不祥事である。

「すでに百人以上の漫画家が『マンガワン』から作品を引き上げるなど、大きな社会問題となっている」(文春)

 小学館は3月2日に声明を出し、「マンガワン編集部における作家・原作者起用のプロセスおよび編集部の人権意識を確認し、問題点を検証、原因を究明し、再発防止に向けた提言を得るために第三者委員会を設置する方針を決定いたしました」とした。だが、小学館に対する批判は日増しに大きくなるばかりである。

 Xや『星霜の心理士』の編集者、編集長の処分は当然だが、小学館としても、このようなことがこれまで繰り返し行われていたことへの「説明責任」を逃れるわけにはいくまい。

 だが、この事件の深層には、私の頃からあった、マンガ家、原作者、編集者の癒着関係がある。それに、私の頃と違うのは、出版社のマンガへの依存度が圧倒的なことである。

 一説にはマンガの売り上げは出版社の7割にもなるという見方もある。マンガ大手の小学館、集英社、講談社にとっては、マンガがコケたら社全体が傾くのである。

 小学館の最大の関心事は、被害者ではなく、マンガ家や原作者が離れないようにするにはどうしたらいいのかということである。

 講談社と小学館・集英社グループは、それぞれの社が抱えている有名マンガ家がいる。その人たちが他へ移らないようにつなぎ留めておくために、私がいた頃は、もはや書かなくなった老大家たちにも金を払っていた。

「巨人の星」や「あしたのジョー」の原作者である梶原一騎や、「子連れ狼」の小池一夫たちが出てきて、原作と絵の分業制が定着し、売れるマンガの原作を書ける作家たちの奪い合いも激化してきた。

 小説本は初版何千部の世界だが、人気のマンガ本は初版50万部、100万部という世界である。今や漫画担当の編集者は廊下の真ん中を歩き、週刊誌や小説誌の編集者は隅を歩く時代。

 銀座で呑めるのはマンガ編集者で、新宿のうら寂しい居酒屋で吞んでいるのが週刊誌編集者だろう。

 そうした出版社の“文化”が、マンガ編集者を慢心させ、マンガ家や原作者を増長させてきた。

 そのため、何をやっても、売れるマンガをつくればいいんだ、社の生き死には俺たちにかかっているという驕りになっていたのではないか。だから、法務部も、社の上司たちも、「あまりやり過ぎるなよ」とはいうだろうが、「やめろ」とはいえなかったのではないか。

 ここで一度、マンガ編集者とマンガ家、原作者との関係を見直す必要があると、私は考える。
(文中一部敬称略)

(文=元木昌彦)

元木昌彦

編集者。「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"。

元木昌彦
最終更新:2026/03/10 14:30