「最近は激シブ系にハマっています」――昭和ラブホ愛好家&Z世代のゆななが語るラブホテルの栄光と衰退

全国各地の昭和時代に建てられたラブホテル(昭和ラブホ)を205軒巡り、客室やポートレートを撮影している平成生まれの昭和ラブホ愛好家・ゆななさん。
回転ベッドや壁一面の鏡張りなど、現在は新設が難しい意匠が施された昭和ラブホの魅力に取り憑かれ、今年1月には2冊目の著書となる『昭和ラブホへ、20代女子がひとりで巡った205軒』(二見書房)を上梓した。
湿度高めのサブカルチャーなテーマながら、SNS総フォロワー数は現在約10万を数える彼女。Z世代女子が、コストを度外視したバブル時代の豪奢な昭和ラブホにハマる心理などを聞いた。
昭和ラブホで“お姫様気分”を味わう女たち
――ゆななさんは2018年、大学4年生のときに昭和ラブホ巡りを始めたそうですね。
ゆなな 高校生の頃から純喫茶などのレトロなスポットが好きで、大学では吉原遊郭についても勉強していました。通っていた大学が渋谷に近かったので、円山町のホテル街も比較的身近だったんです。そんなあるとき、インターネットを見ていたらスペースシャトル型のベッドがある昭和ラブホを見つけて、「まだこんな場所があったなんて!」と身体中に電流が走りました。まずは都内にある昭和ラブホから攻めていこうと、蒲田にある“全部屋・鏡張り”が売りの「ホテル ニューアリス」へ足を運びました。
――まだ現役で営業している昭和ラブホが都内にもあるんですね。
ゆなな 都内ではかなり珍しいです。すぐにひとりでそのラブホを訪ねて、写真を撮りまくってSNSに投稿しました。それがきっかけで昭和ラブホの沼にハマりました。回転ベッドやエアシューターなど、今の時代にはない設備が私にはとても新鮮で、むしろ新しいものに感じたんです。特にバブル時代は、1部屋に何千万円もかけたラブホもざらにあって、良い意味でのバカバカしさに惹かれました。
――身も蓋もないですが、どれだけ贅沢で手の込んだ内装でも、結局、部屋の中でやることは同じという気もしますが……。ゆななさんのSNSは、同世代の若者や女性のフォロワーも多いのでしょうか?
ゆなな インスタグラムは6対4くらいで男性が少し多いですね。年齢層は20代から50代まで、本当に幅広いです。
――女性は昭和ラブホにどんな魅力を感じるのでしょうか。よく“非日常感”と言いますが、男女で違いはありますか?
ゆなな 人それぞれですが、「天蓋ベッドだとお姫様気分を味わえる」「お城みたいな外観のラブホにときめく」という女性のフォロワーさんは多いです。千葉県・柏にはロココ調の部屋をコンセプトにした、総工費36億円の「ホテル ブルージュ」というホテルがあるのですが、そこは本当にお姫様気分を味わうのにぴったりですね。
――ベルサイユ宮殿のような世界観に浸れて、しかも手頃な価格で泊まれる施設となると、確かにラブホくらいしかないかもしれません。
ゆなな 世界観を崩さないようにエアコンも埋め込み型を採用していたり、椅子などの家具や調度品も手彫りだったりして、“映える”ラブホです。電話がダイヤル式の白電話だったりと細部まで作り込まれているので、コスプレイヤーの撮影にも人気がありますし、映画のロケにも使われています。
昭和のラブホはコスト度外視? エアシューター絶滅も危惧

――昭和ラブホは1985年の新風営法以前に建てられ、大きな改装がされないまま往年の雰囲気を残している施設と定義されることが多いですが、そもそも回転ベッドはなぜ規制されたのでしょうか?
ゆなな 設置の基準が難しくなり、それを面倒に感じた経営者は回転ベッドを撤去したようです。あとは従業員の方が巻き込まれたり、挟まれたりする事故が昔は多かったそうです。それに、掃除やメンテナンスの手間が大きく、経営的にも非効率なので、回転ベッドも全面鏡張りの部屋も激減していきました。鏡張りの鏡が割れて取り替えるだけでも数十万円単位のお金がかかるらしいのですが、その割には2時間休憩で3000円くらいと、滞在費は安いですからね。
――なるほど。今の時代の経営感覚だと、エアシューターの代わりに自動精算機やキャッシュレスを導入して、コスト削減を図りますよね。
ゆなな エアシューターもどんどん取り壊されています。
――ビジネスホテルは部屋の仕様を統一して効率化していますが、個性の違う部屋を用意しているラブホだと、さらに手間がかかりそうです。
ゆなな 千葉市に「ファミー」という、お城の外観をした昭和ラブホがあるのですが、中華風の部屋や中世の宮殿のような部屋など、さまざまなタイプの部屋があります。最近の昭和ブームの影響もあって、あえて昭和レトロにこだわった部屋もありますね。
――新刊『昭和ラブホへ、20代女子がひとりで巡った205軒』では「王道系」「ゴージャス系」「激シブ系」「ギミック系」に分類して紹介されています。ゆななさんはやはりバブリーなゴージャス系がお好きなんですか?
ゆなな もちろん全部好きなんですが、最近はけっこう激シブ系にハマっています。激シブ系というのは極端に好き嫌いが分かれるんですよ。SNSに載せても「豆タイルは無理!」みたいな引用ポストをされたりします(笑)。
――昭和の良くない部分も含めての魅力ですよね。同じ令和の時代には再現できない“夢の空間”でも、激シブ系はより上級者向けというか……。
ゆなな ステンレスのバスタブや和式トイレも普通にありますし、友達に昭和ラブホが好きと言うと「普通に新しいほうがよくない?」と言われることも正直多いです(笑)。
――純喫茶が好きでも、トイレはウォシュレットのほうがいいですしね。
ゆなな 今回の本では、巡ってきた205軒の中からおすすめできる昭和ラブホを掲載しています。昭和レトロやバブリーな雰囲気に浸れることに加えて、接客対応や清潔感なども含めて安心して利用できるところを念頭に選びました。ただ、激シブ系の中には、人によっては宿泊利用が難しいと感じるようなホテルもあるかもしれません。
朝食バイキング付き・子連れOK! 自由すぎる台湾ラブホ

――インバウンドの文脈で日本独自のサブカルが見直されることも多いですが、日本のラブホ文化は海外でも再発見されているのでしょうか? テレビなどのマスメディアでは少し扱いにくいテーマという印象もあります。
ゆなな 私のフォロワーさんに関して言えば、ほとんどが日本人ですね。でも、この間、大きなスーツケースを持った外国人観光客のグループが、渋谷のラブホから出てくる場面を見かけたことはあります。「Booking.com」に掲載されているラブホもあるので、あまり意識せず宿泊施設として利用されているのかもしれません。
――そもそも世界にラブホという文化は存在しないのでしょうか?
ゆなな 特に台湾ではラブホ文化が盛んです。前著『回転ベッドを追いかけて』(hayaoki books)でインタビューさせていただいた、回転ベッドの考案者・亜美伊新(あみい・しん)さんは、台湾の設計士から「日本のラブホを参考にしてもいいか?」と聞かれたことがあると語っていました。実際に行ったことがあるのですが、しっかりとラブホ要素がありました。
――日本のラブホの回転ベッドが海を渡ったわけですね。
ゆなな 回転ベッドはありませんでしたが、ローションなども部屋に置いてあって、まさに“ラブホ”なのですが、フロントは普通のホテルと同じように丸見えで、しかも朝食バイキングがあるんです。
――利用者が同じ会場で朝ごはんを食べるんですか? 朝のお粥がよりおいしく感じそうです(笑)。
ゆなな 子連れのファミリーや男性のおひとり様もいて、台湾のラブホはすごく自由な雰囲気でした。近々また行く予定があるので、次は別のラブホにも行ってみようと思っています。
――えっ、台湾のラブホというのはその1軒だけではないんですか?
ゆなな 何軒かありますね。
昭和ラブホは誰が経営しているのか?

――昭和ラブホ愛好家として活動を始めた頃から振り返って、昭和ラブホ業界に変化はありましたか?
ゆなな 昭和ラブホを巡るようになって今年で8年目になりますが、その間だけでも軒数はかなり減っています。特にコロナ禍以降は顕著で、オーナーの高齢化と後継者不足が非常に深刻。特に昭和ラブホは、ほとんどが個人経営なんですね。例えばブルージュは、現在のオーナーさんのお母様が経営されていたホテルです。
――ラブホにまで少子高齢化の波が押し寄せているとなると、世知辛い話にも聞こえます。
ゆなな 個人経営のラブホは、世襲のような形で営業されているケースや、事業承継で続いているケースが多くて、オーナーさんも兼業のような形で経営されている方が多いですね。
――そうしたオーナーさんの年齢層はどれくらいの感覚ですか?
ゆなな 50歳以上が多い印象です。今年で92歳の方が経営・運営しているラブホもありました。
――92歳? 清掃などの業務もご本人がやっているんですか?
ゆなな 「旅荘 山楽」という川越のラブホなのですが、人を雇う余裕がないとのことで、基本的には奥様とお二人で、趣味で農業をしながらホテルの清掃などもすべてされているそうです。
――これはもう激シブ系ですね。
ゆなな 50〜60年前に現在のオーナーの親御さんが創業されたそうで、見た目はラブホというより民宿のような雰囲気ですが、部屋の中はちゃんとラブホテルでした。お子さんが3人いらっしゃるそうですが、全員ほかの仕事をされていて、後継者の候補はいないとのことです。
――厳しい現実ですね。
地方遠征で新しめのラブホも愛用

ゆなな 一方で、都市部のラブホ街にあるホテルは比較的大きな会社やグループで運営されていることが多いです。そんななか、歌舞伎町にも親から受け継がれた昭和ラブホがあります。そこのオーナーさんもガソリンスタンドを経営しながらの兼業だとおっしゃっていました。
――個人経営のラブホに兼業が多いのは理由があるんですか? 単純な興味だけでは続けられないような気もします。
ゆなな バブル期などの全盛期はラブホがかなり儲かったらしく、本業のかたわらで始める人が多かったそうです。全面鏡張りの部屋が流行していた時代は、斬新な内装のラブホや新規オープンのホテルが雑誌で紹介されて、車が行列してカップルが押し寄せることもあったと聞いています。
――なるほど。時代の変化という意味では、コロナ禍以降、ワーキングスペースとしてのビジネスプランや、推し活・女子会向けのプランを取り入れるラブホも増えている印象があります。
ゆなな そうですね。ただ、昭和ラブホではそういった取り組みはあまり見かけないです。
――ゆななさんの昭和ラブホ好きはレトロ趣味の一環だと思いますが、昭和ラブホ以外のラブホにはあまり興味はないんですか?
ゆなな そうですね……。ただ、昭和ラブホの取材で地方へ行くと、宿泊費を抑えるために新しめのラブホに泊まることはあります。特にビジネスプランは、昭和ラブホに泊まるより安いことも多いです。
――ホテルが少ない地方で安宿を探すと、ラブホがヒットすることはよくあります。
ゆなな 新しめのラブホは高くても1万円ちょっとですし、5000円〜7000円くらいでも部屋が広くてバス・トイレ別なので快適です。ただ、昭和ラブホはメンテナンスや清掃の手間がかかっていて設備も豪華なことが多いので、古いからといって必ずしも安いとは限らないです。
――205軒の昭和ラブホを巡ったということは、再訪を除いても年間平均で25軒ほど。月に2軒以上のペースですから、交通費の工面も大変そうです。
ゆなな 都内近郊はほぼ制覇していて、最近は深夜バスで地方へ行くことが多いです。近くにある気になる昭和ラブホを5軒くらいハシゴすることもありますし、下調べもかなり大変ですね。
――ラブホの情報ってネットでもなかなか出てこないですよね。
ゆなな 本当に営業しているのか分からないことも多いです。ブログなどがヒットすることもありますが、Googleストリートビューで外観やホテル名を確認して、「鏡張りや回転ベッドなど、昭和レトロな内装が好きなんですが、部屋はどんな感じですか?」と電話で直接聞くこともあります。
――行動的ですね。
ゆなな まだ47都道府県すべての昭和ラブホを制覇しているわけではないので、これからは九州の昭和ラブホを重点的にまとめていきたいと考えています。
将来の野望は私設の「ラブホ博物館」

――ゆななさんは会社員をしながら、昭和ラブホの愛好活動をされているんですよね?
ゆなな 実は最近、会社を辞めました。
――なんと。やはり両立は難しかったですか?
ゆなな しばらくは昭和ラブホ一本でやってみようと思っているんです。前の会社はリモートワークが一切できなくて週5日のフルタイム出勤。それでも、シフト制で平日に休みを取りやすかったので、大きな支障はなかったです。それに副業OKだったので、特定の上司には活動のことも伝えていて、有給と組み合わせて平日に連休を取りながら地方の昭和ラブホ巡りをしていました。
――そういえば前著『回転ベッドを追いかけて』の頃は、あまり顔出しもしていなかった印象です。
ゆなな 会社勤めを辞めたので、メディア出演やコラボも含めて活動の幅をもっと広げていけたらと思っています。また、インスタグラムの投稿では部屋のみを映す投稿がメインでしたが、今後は自分が出演してホテルを案内する動画を増やしていきたいです。
――“ラブホ女子”ブームは来ていますか?
ゆなな ジワジワですけど(笑)。私のXがきっかけで「昭和ラブホ巡りを始めた」と言ってくださる女性フォロワーさんもいて、すごくうれしいです。女性がひとりでラブホに入ること自体、ひと昔前ではあまり考えられなかったことですよね。
――確かに(笑)。
ゆなな 将来的には私設博物館をつくりたいという野望もあります。その計画に向かって、少しずつでも動いていきたいですね。
(構成:伊藤綾)
ゆなな
平成生まれ。ほぼ単身で北海道〜沖縄まで日本全国の昭和ラブホテルを200軒以上巡り、SNS、メディアでの記事執筆、ラジオ出演などを通じてその魅力を発信中。著書に『回転ベッドを追いかけて』(hayaoki books)、新刊に『昭和ラブホへ、20代女子がひとりで巡った205軒』(二見書房)がある。
X〈yunaaaa_a〉
Instagram〈yunaaaa_lovehotel〉
昭和ラブホ愛好家🏩ゆなな
https://www.youtube.com/@yunaaaa_lovehotel