『名探偵コナン 緋色の弾丸』のブランド力を揺るがしかねない小学館で相次ぐ不祥事

「真実はいつもひとつ!」
おなじみ『名探偵コナン』の主人公・江戸川コナンの決め台詞です。アニメ化されて30年経った今も、ファンを増やし続けているモンスター級のコンテンツです。
4月10日(金)より最新作『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』が公開されるのに合わせ、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では春の『名探偵コナン』まつりを開催中です。
4月3日(金)に放送されるのは、シリーズ第24作目となった『名探偵コナン 緋色の弾丸』(2021年)です。劇場版ならではの大掛かりな舞台設定となっており、『ハイウェイの堕天使』で活躍する女子高生探偵の世良真純がフィーチャーされています。
メガヒットを続ける劇場版『名探偵コナン』の人気ぶりを改めて探ってみましょう。
時速1000キロで走る弾丸列車が謎解きの舞台に
物語の主舞台となるのは「真空超電導リニア」。新名古屋-芝浜間をわずか25分で走るという夢の交通機関です。最高速度は時速1000キロに達することから、ジャパニーズ・ブレット(日本の弾丸)と呼ばれています。
実際のリニアも品川-名古屋間の開通が2027年に予定されていましたが、工事の遅れから2034年以降の開業と大幅にずれ込んでいます。そんな未来のインフラを、江戸川コナン(CV:高山みなみ)はひと足早く体験することになります。
世界的なスポーツの祭典「WSG東京」の開催に合わせ、「真空超電導リニア」が開通することから少年探偵団は興味津々です。そんな折、WSGのスポンサーを務める大企業の経営者たちが次々と拉致される事件が起きます。
FBIのすご腕スナイパー・赤井秀一(CV:池田秀一)と共に、コナンはこの事件を追うことになります。
赤井秀一のおかしな家族構成
本作の大きな見どころは、『名探偵コナン』の人気キャラクターである赤井秀一とその家族が勢ぞろいする点です。赤井秀一の変装したキャラである大学院生の沖矢昴(CV:置鮎龍太郎)に加え、赤井秀一の弟で、プロ棋士の羽田秀吉(CV:森川智之)も名古屋に来ています。
毛利蘭の同級生で、女子高生探偵の世良真純(CV:日高のり子)もこの事件を追っています。世良真純は、赤井秀一と羽田秀吉の妹です。そして、世良真純がバイクの後ろに乗せている小さな女の子は、3人の母親である赤井メアリー(CV:田中敦子)。メアリーは「黒ずくめの組織」によって、コナンと同様に子どもになっています。
赤井秀一が米国のFBI所属なのに対し、赤井メアリーは英国の秘密情報部MI6の一員です。世良真純と赤井メアリーは、赤井秀一の変装した別キャラ・沖矢昴のことは知らないという設定です。ビギナーは押さえておきたいポイントです。
名古屋にいる赤井秀一はコナンをどう援護する?
連続する拉致事件を捜査するコナンは、次に狙われるのは国際WSG協会の会長であるアラン・マッケンジーだとにらみます。アランは「真空超電導リニア」に乗車するため、名古屋に来ていました。そしてコナンの推理どおりに、アランは名古屋で姿を消します。
アランはどこに消えたのか? 犯人は誰なのか? 事件を解く鍵は「真空超電導リニア」にあるに違いないと、コナンは直感します。不審な事件が続くことから「真空超電導リニア」は無人で運行されるのですが、コナンと世良真純は出発間際のリニアに飛び乗ります。時速1000キロで無人走行するリニアの中で、コナンと世良真純は意外な犯人と対決することになります。
名古屋にいる赤井秀一は、リニアに乗ったコナンたちをどう援護するのか。赤井秀一のスナイパーとしての超絶テクニックが披露されます。
もしも、ハリウッドが『コナン』を実写化したら……
脚本家の櫻井武晴氏は、『名探偵コナン 純黒の悪夢』(2016年)や『名探偵コナン ゼロの執行人』(2018年)など、劇場版がメガヒットするようになった重要作を手掛けてきました。ハリウッド映画ばりのスケールの大きなアクション&サスペンス大作を得意としています。
仮に劇場版シリーズを実写化したら、どのくらいの製作費になるのでしょうか。ハリウッド映画を参考に考えてみました。巨大観覧車が脱輪した『純黒の悪夢』ですが、SF映画『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』(2007年)でもロンドンの巨大観覧車が外れるシーンがあります。『銀河の危機』の製作費は1億3000万ドルでした。
今回のリニアが主舞台となる『緋色の弾丸』は、トム・クルーズ主演のアクション大作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(2023年)を参考にしてみましょう。クライマックスで走行中の列車を大破させた『デッドレコニング』は、製作費2億9000万ドルでした。ハリウッドが『名探偵コナン』を実写化したら、とんでもない金額になることは間違いありません。
劇場版『名探偵コナン』は、そんなハリウッド超大作級のエンタメ作品を毎年公開し続けているわけです。子どもの頃からコミックやテレビで親しんできたコナンたちがスクリーンで大活躍する姿は、親になって我が子を連れて映画館に通うようになったオールドファンにとっては感慨深いものがあるようです。
大きな欠陥が問われる小学館のビジネスモデル
世代をこえて支持される『名探偵コナン』は、ブランド化されており、その人気はファンの期待を裏切らないことが前提となっています。家族で出掛けても、気軽にひとりで入っても、満足感を与えてくれる人気のファミレスか回転寿司みたいな存在でしょうか。毎年、話題の新メニューが発表されれば、常連客としては気になるのも当然でしょう。
ファンとの信頼関係があってこそ、ここまでの大ヒットシリーズとなった『名探偵コナン』ですが、版元である小学館で不祥事が相次いでいるのが気になります。先週放送の『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』(2006年)の紹介記事で触れた「マンガワン」事件もそうですが、2023年にTVドラマ化された『セクシー田中さん』(日本テレビ系)では、原作者の芦原妃名子さんが放送終了後に自死を遂げるという痛ましい事件が起きています。
2025年に出版された『ヘンなのはどっち? 反社会学2.0 タレント性加害、原作改変問題を見極める』(さくら舎)は、『セクシー田中さん』問題に言及しています。芦原さんの背中を押して死へと追いやったのは、ネット上に無知で無責任な書き込みをした人たちだと明言した上で、小学館側にも問題があった可能性を指摘しています。
漫画や小説の映像化はさまざまな契約が関わることから、専門知識や経験のある人物でなくては難しく、漫画の担当編集者が本業の片手間でできるものではないということです。小学館側のビジネスモデルに大きな欠陥があったのではないかと、『ヘンなのはどっち? 』では述べられています。
一ツ橋に巨大な自社ビルを構える小学館は、子ども向けの雑誌や書籍で歴史を重ねてきた老舗出版社です。「マンガワン」事件や『セクシー田中さん』事件は直接的に『名探偵コナン』の人気に影響を与えることはないにしても、小学館への読者の信頼が揺らぐことは『名探偵コナン』のブランド力も左右することになりかねません。
小学生の江戸川コナンが高校生の工藤新一に戻るまで、まだまだ時間が掛かりそうです。『名探偵コナン』が無事に完結するためにも、小学館は淀んだ空気を一掃してほしいなと思う次第です。
(文=映画ゾンビ・バブ)
