『名探偵コナン 隻眼の残像』、シリーズ歴代ナンバーワン発進のワケ――映画興行収入ランキングトップ10


最新の全国週末興行成績ランキング(興行通信社調べ、4月18~20日)で、人気アニメーション作品『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』(4月18日公開)が初登場1位を獲得した。新作が公開されるたびに大きく盛り上がる『コナン』シリーズだけに、今回も公開前から注目を集め、スクリーンの多くを同作に使う劇場が多かった影響もあって、スクリーン数が激減したディズニーのミュージカル・ファンタジー映画『白雪姫』(3月20日公開)は、上映5週目にしてトップ10圏外となった。
『名探偵コナン 隻眼の残像』、初登場1位! 公開3日間の興収は歴代ナンバーワン
4月21日発表の全国週末興行成績ランキングで首位に立った『名探偵コナン 隻眼の残像』は、漫画家・青山剛昌氏が「週刊少年サンデー」(小学館)にて連載中の『名探偵コナン』のアニメ映画シリーズ最新作。私立探偵・毛利小五郎(声優・小山力也)、長野県警の警部・大和敢助(声優・高田裕司)と諸伏高明(声優・速水奨)がキーパーソンとなり、同県の雪山で起きた過去と現在の事件を描いている。
監督は『名探偵コナン ゼロの執行人』(2018年公開)などの演出に携わった重原克也氏が務め、脚本は同作のほか実写作品『相棒』や『科捜研の女』(ともにテレビ朝日系)シリーズなどを手がけてきた櫻井武晴氏が担当している『隻眼の残像』。全国385スクリーンと大規模で封切られ、初日から3日間で観客動員231万5000人、興行収入34億3900万円を記録した。
映画ライターのヒナタカ氏はこの成績について、以下のように語る。
「公開3日間で34億円という成績は『コナン』シリーズで歴代ナンバーワンであり、日本の映画史上でも『劇場版鬼滅の刃 無限列車編』(2020年/最終興収404.3億円)に次ぐ歴代2位の大記録です。シネコンでは1日20回以上は当たり前、40回以上も上映する劇場がありながらも、ほぼ満席の回が相次いでいました。毎年春に新作が公開されている『コナン』映画ですが、『ファンが卒業しない』と言われており、大人から子どもまで分け隔てなく、1年に1回映画館に足を運ぶ、もやは『国民的イベント』となっていますし、今後もこの傾向は続くでしょう」
なお、鑑賞済みのネットユーザーからは、「個人的には去年のほうが好み」「雪山を舐めすぎだと思った」という厳しい意見があるものの、「見応えがあって大満足」「今年のサスペンス要素好き」などと好意的な感想のほうが目立っており、「『100万ドルの五稜星』の記録を塗り替えるのでは」と予想する者も。
ヒナタカ氏は、『コナン』映画がファンに支持され続けている理由について、このように分析する。
「今作は、毛利小五郎と長野県警メンバーが中心で“渋め”の印象があるのですが、かえってそれが女性や大人のコアなファンを惹きつけたといえるかもしれません。何より近年は『アクションの見せ場』『キャラクター同士の尊い関係性』などの魅力をしっかり打ち出しており、期待に毎回応えてくれるからこそ、必ず劇場に足を運びたくなるのでは」
前作『100万ドルの五稜星』が叩き出した最終興収158億円はシリーズ最高興収となり、国内で上映された映画の歴代興収ランキングでも14位にランクインしている。13位のジェームズ・キャメロン監督作品『アバター』(09年公開/最終興収159億円)超えにも期待がかかる。
初登場4位『劇場版 僕とロボコ』、『名探偵コナン』と同日公開の“自虐”宣伝で注目集める
そんな『隻眼の残像』にV7を阻止された『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』(3月7日公開)は、今回初めて2位にランクダウンしたものの、累計興収は42億円に迫っている。ミュージカル・ファンタジー映画『ウィキッド ふたりの魔女』(3月7日公開)は前回に続いて3位をキープし、累計興収30億円を突破した。
4位にはアニメ作品『劇場版 僕とロボコ』(4月18日公開)が初登場。原作は、宮崎周平氏が「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の同名ギャグ漫画で、22年12月から23年6月にかけてテレビ東京系でテレビアニメ化。チョコレートプラネット・松尾駿が声優を務めるユニークなメイド型ロボットOM(オーダーメイド)のロボコと平凡な少年・ボンド(声優・津田美波)の騒がしい日常が描かれている。
今回の劇場版では、幾重もの世界線(マルチバース)でそれぞれ活躍するロボコたちが集結。王道バトルの世界線のロボコ役は田中真弓、本格SFアクションの世界線のロボコ役は千葉繁、ラブコメの世界線のロボコ役は上坂すみれ、昭和ギャグ漫画の世界線のロボコ役は野沢雅子と、豪華声優陣がキャスティングされ、宇宙海賊の大幹部様役でチョコレートプラネット・長田庄平も出演している。
「公開3日間で興行収入6,200万円という数字は物足りなくも思えますが、全国150館での公開と中規模ですし、想定の範囲内の成績ではあると思います。原作からしてパロディが多めのギャグ作品で、テレビシリーズは各話3分間と短い内容。今回の映画も上映時間が64分とコンパクトですし、同じく『ジャンプ』作品である前述の『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』や、歴代興収ランキング21位の『劇場版 呪術廻戦0』(21年/最終興収138億円)との単純比較はできないでしょう」(前出・同)
そんな『僕とロボコ』は、もともと24年冬に公開予定だったものの、「より多くの人に楽しんでいただける作品を目指し、さらなるクオリティアップを図るため」に公開を延期した結果、『コナン』と同日公開となったが、「制作側はそれを自虐し“ネタ化”していることも特徴的」(同)だという。
「例えば、映画の予告映像では、ロボコが『あの名探偵の映画と公開日が同じらしい』と言及しており、アニメ公式Xでは担当者が初日にコナン映画を見たことを報告。原作者の宮崎氏は『隻眼の残像』のメインビジュアルをオマージュしたようなイラストを描き下ろしています。また、ロボコを演じている松尾氏は、公開記念舞台挨拶で『コナン』映画をライバル視していましたね。こうした宣伝に十分な効果があったかどうかは微妙なところですが、一定の注目度は間違いなくありましたし、応援したくなった人は多いはず」(同)
同じく4月18日公開のアニメ作品『鬼滅シアター -「鬼滅の刃」特別編集版 劇場上映-/鼓屋敷編』は、初登場10位をマーク。漫画家・吾峠呼世晴氏が「ジャンプ」で連載していた『鬼滅の刃』のテレビアニメ版の一部で構成された同映画は、7月18日に公開予定の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章』に向けた1週間ごとの限定上映企画の第3弾。全国33スクリーンでの小規模上映にもかかわらず、見事トップ10入りを果たした。
なお、上映11週目を迎えた『ファーストキス 1ST KISS』(2月7日公開)は今回9位、上映9週目かつ全国85スクリーンと小規模で奮闘中の『映画 ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』(2月21日公開)は今回8位と、いずれも強さを見せ続けている。
全国映画動員ランキングトップ10(4月18~20日、興行通信社調べ)
1位:『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』
2位:『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』
3位:『ウィキッド ふたりの魔女』
4位:『劇場版 僕とロボコ』
5位:『アマチュア』
6位:『片思い世界』
7位:『教皇選挙』
8位:『映画 ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』
9位:『ファーストキス 1ST KISS』
10位:『鬼滅シアター -「鬼滅の刃」特別編集版 劇場上映-/鼓屋敷編』