『サザエさん』 “唯一のオリジナル声優”加藤みどり、業界関係者が「本物のプロ」と評すワケ


国民的長寿アニメ『サザエさん』(フジテレビ系)の公式ブログが6月1日に更新され、イクラ役などを担当した声優・桂玲子さんの降板が明らかになった。それに伴い、唯一のオリジナルキャストとなったサザエ役の加藤みどりさんについて、業界関係者は「本物のプロフェッショナル」と評す。
『サザエさん』イクラ役・桂玲子が降板――オリジナルキャストはサザエ役・加藤みどりのみに
長谷川町子氏の同名4コマ漫画を原作に、1969年10月からフジテレビ系で放送を開始し、昨年10月に55周年を迎えた『サザエさん』。今月1日、オフィシャルブログが更新され、メインキャラクターのイクラをはじめ、カオリ、リカ役の声優交代を発表。長年にわたり3人のキャラクターを声を担当してきた桂に代わり、平井祥恵(イクラ)、小白川愛菜(カオリ)、北原沙弥香(リカ)らがそれぞれの役を同日放送分から演じているとアナウンスした。
「声優交代の具体的な理由については言及されていないものの、桂さんは現在85歳と高齢のため、“世代交代”が目的であることは明らかでしょう。実際、これまでにサザエさん一家や親戚のノリスケ一家の主要キャラの声優は、高齢化や急逝に伴って2代目、3代目に引き継がれており、直近でいうと初代・タラオ役の貴家堂子さんが23年2月に87歳で亡くなったことを受け、同3月からは愛河里花子さんにバトンタッチ。初期から変わらず出演しているのは、サザエ役の加藤さんのみとなっています」(声優ライター・勅使河原みなみ)
そのため、ネット上では今回の桂さんの降板について「お歳を考えたら仕方ない」「年齢には勝てない」と納得しつつも、「かなりショック」「寂しい」との声が上がっている。
『サザエさん』加藤みどりは「“唯一無二”の存在」! 85歳でも「まったく衰えず」
そんな『サザエさん』だが、制作会社関係者によると、ベテラン勢が多いだけに、「現場全体に漂う緊張感が並大抵のものではない」という。
「長年続いている作品のアフレコ現場には、“暗黙の了解”のようなスタジオ内での決まり事が存在し、それを意識すると、我々スタッフもどうしても身構えてしまいます。05年にメインキャラクターの声優が一新される前の『ドラえもん』(テレビ朝日系)の現場も、非常に緊張感がありました。『クレヨンしんちゃん』(同)や『名探偵コナン』(日本テレビ系)といった国民的アニメの現場にも、同様の空気感が漂っています。若手声優がその中に入ると、80代前後のベテラン勢が築いてきた独特の雰囲気に飲まれてしまうことは少なくない。1998年5月当時、30代で2代目カツオ役を射止めた冨永み〜なさんも、当初はとても大変だったのではないかと想像します」(同)
なお、唯一のオリジナルキャストとなった加藤さんは、もともと女優を志し、アルバイト的な軽い気持ちでオーディションを受けたというが、「特に礼儀作法やプロとしての意識に対しては非常に厳しく、声優という職業に対する姿勢や、現場での礼儀に関しては、どこまでも妥協を許さない。業界内でも、『恐い』あるいは『厳しい』と評されることがある」そうだ。
「ただし、理不尽に怒ったりすることはなく、厳しさの根底にはきちんとした理由がある。確かな実力を持つ方だからこそ、時に厳しい立ち回りをしても、周囲から受け入れられるのだと思います。ドラえもんの声で知られる故・大山のぶ代さんや、『ドラゴンボール』シリーズ(フジテレビ系)の孫悟空を演じ続けている野沢雅子さんのように、まさに“唯一無二”の存在といえるでしょう。この世代の声優は、演技に対してそれぞれ明確な理念を持ち、現場でゼロから積み重ねてきたものの集大成を、今なお表現し続けています。加藤さんは85歳になった今でも、声質や滑舌がまったく衰えていません。まさに本物のプロフェッショナルです」
主演として長年作品を支えてきた加藤さん。今後も変わらぬ声でお茶の間を楽しませていってほしいところだ。