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『地面師たち』で話題の小池栄子、インフルエンサーMEGUMIの生みの親

イエローキャブ元社長・野田義治が振り返る60年の芸能“裏方”人生、そして最後の仕事・正統派俳優をプロデュースする理由

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イエローキャブ元社長・野田義治が振り返る60年の芸能裏方人生、そして最後の仕事・正統派女優をプロデュースする理由の画像1
野田義治氏(写真:伊藤凌)

女性の水着グラビアを扱う雑誌が日本で誕生してから約半世紀。グラビアアイドルとして人気に火がつき、芸能界で活躍するようになったタレントや俳優は数知れない。斜陽の出版業界にあってもデジタルを含むグラビア写真集は比較的好況であり、近年のSNSでの「グラドル」の多様な活躍ぶりなどを見ても、“水着グラビア=オワコン”とは言い難い。そこで、かつてイエローキャブの取締役社長として、グラビアアイドルを発掘・プロデュースし、90年代に日本の「巨乳ブーム」を牽引した野田義治氏にインタビューを敢行。芸能プロモーター・実業家として業界を見続けてきた同氏に、現在の水着グラビアを取り巻くビジネス環境などを聞いた。

20年近く巨乳タレントは受け持っていない!?

――野田さんは今年1月、自身の芸能事務所「サンズエンタテインメント」に所属する俳優・タレントのマネジメントを行う会社を新たに設立しました。

野田義治氏(以下、野田) どうしても、僕の“巨乳プロデューサー”としてのイメージが、担当するタレントのイメージを邪魔してしまうときがあるので、新体制へ移行することにしました。

――かとうれいこ、細川ふみえ、雛形あきこ、山田まりや、小池栄子、佐藤江梨子、MEGUMIといった数々の巨乳タレントを売り出し、いち時代を築いたからこその功罪ですかね。

野田 功罪というか、今となっては罪ですよ(笑)。実はもう20年近く巨乳の女性は手がけていないんです。MEGUMIが最後ですね。

――“元祖巨乳アイドル”とも言われる堀江しのぶさんを担当されたときも、当初は巨乳で売り出すつもりはなかったとか。

野田 「少しぽっちゃりして、ふくよかだな」というくらいの感覚で、しばらく巨乳とは気付かなかったくらいです。当時は胸が大きいアイドル歌手はさらしを巻いて、巨乳を隠していたような時代でもありましたからね。

――リアルタイムでイエローキャブの時代を知る男性からすると、野田さんは日本の水着グラビアにおける巨乳女性の地位を確立させた重要人物のひとりだと思います。

野田 女性の水着グラビアというのは、青年マンガ誌などでも当時はほぼなかったですからね。男性誌にはAVメーカーなどから無料で提供されるヌード写真を誌面に載せていましたが、そこにタレントの水着写真で対抗しようということだったんです。それまで誰もやっていなかったことに携われたという意味では、なかなかスリリングで面白い時代でしたよ。

――巨乳に興味がなくなったわけではないんですか?

野田 そもそも昔から僕は巨乳路線ではない子も普通に受け持ってきたんですよ。ただ、興味もなくなっています。エロというものに対する興味自体が……。

昔は胸の張りと形をチェックするお仕事もあった

――インターネットには野田さんが新人タレントの面接の際に「胸の張り・形を水着や服の上から触って確認していた」という情報があるんですが、これは本当なのでしょうか?

野田 はい。そういうこともありましたね。やはり、偽物をつかまされたことが一度あったのと、寄せて上げる「インチキブラジャー」がはやっていた頃は、脇の下の肉を持ってきていないか確認するために触っていました。

――触っていたんだ! よく、誰にも恨まれませんでしたね(笑)。

野田 いや、イメージがひとり歩きしているのですが、「触った」といっても別にわしずかみしていたわけではないですよ。承諾をもらって脇の下に少し手を入れさせてもらっていました。まぁ、本当に大きい子は乳が横に出ているから当たっちゃいましたが……。

――やっぱり、触っていたんだ! ちなみに、スカウトや新人面接では、どういう点を重視していたのでしょうか?

野田 最初はやはり、顔です。

――身も蓋もないですね。

野田 美人かどうかはあまり関係ないです。かわいいかどうか。

――野田さんは所属タレントの整形手術、画像処理ソフトでの修整も認めないことでも有名です。

野田 最近の水着グラビアの世界では整形や豊胸も少なくないようですが、それは僕の美学には反しますね。顔もそうですけど「将来、オギャーっと生まれた赤ちゃんが最初に食いつくところなんだから、イジくっちゃダメ」というのが僕の考えです。それに、昔は豊胸技術も未熟だったため、不自然なバストになってしまったのです。そのため、受け持った子には「無いなら無いで別にどうってことない」と、話していましたね。「それはそれで好きな人いるんだから」ということです。

――Netflixの『地面師』で話題の小池さんに、かつて豊胸手術疑惑が噴出した際は、野田さん自らワイドショーに出演して、疑惑を否定したこともありました。なんというか、平和な時代ですね。

野田 ある芸人さんから小池が「なんか入れているのだろう」とイジられたときは、「冗談じゃねぇよ!」と、レントゲン写真を撮って見せたこともありました。当時は豊胸するとレントゲン写真に白いモヤが写ったんです。

小池栄子とMEGUMIの共通点

――グラビアアイドルになる前、小池さんが巨乳に強いコンプレックスを抱えていたといった話は、当時から世間で割と有名だった記憶があります。

野田 胸が大きいことを恥ずかしいと感じる女性は今より多かったですよ。そのため、初めはみんな水着になることを嫌がりました。しかし、「せっかく親からもらった宝物なんだから、どうしてそれをコンプレックスに感じるんだ!」と、説得しました。そんな小池もグラビアをやっている頃から、般若の顔にも仏の顔にも見える顔立ちだったため、役者としてのポテンシャルを感じていました。とはいえ、ここまで芝居がうまくなるとは僕も思わなかったです。

――MEGUMIさんは今、美容系インフルエンサーとしても大活躍されていますね。

野田 思わず「お前が美容?」と言ったぐらい、僕のなかのMEGUMIのイメージとは結びつかなかったです。当時は体型が隠れるジャージみたいな地味な服をよく着ていたため、胸の大きさもなにもわからず、女性らしい華やかさとも無縁でした。

――2人ともグラビアアイドル時代以上に活躍されていると思いますが、最近お会いする機会はありましたか?

野田 現場の控え室などで話すことはありますね。MEGUMIは美容プロデューサーになっていますが、プロデューサーというのは僕たちの商売相手。これからは「仕事ください」と言わなくてはいけませんね(笑)。

――確かに、そういう関係性になりますね。

野田 みんなスゴいなと思いますよ。「こうしなさい」「ああしなさい」と言われて動くのではなく、仕事やスタッフを通じていろんなことを吸収しながら、能動的に考えて動くような存在になっています。

――巨乳グラドルとしての人気に留まらず、今も芸能界の第一線で活躍しているタレントの共通点などはありますか?

野田 監督やカメラマンといった現場のみなさんから、才能のヒントをもらうことが多かったと思います。本人たちもそれを素直に聞いて動く利口さがあるし、なによりズルくないんですよ。僕も「もし、ズル賢く動きたいなら、俺や周りのスタッフが気づかないくらい徹底的にズルくなれ」と言っていましたか。「簡単にバレるような、小ズルいことするのが一番ダメだ」ということですね。

「あくまでグラビアは入り口のひとつ」

――やはり、いち時代を築いた野田さんのプロデュース能力は秀でていたのですね。

野田 僕たちは結局どこまでいっても八百屋さんなんです。畑から引っこ抜いてきた大根をきれいに洗って、そのまま並べてみたり、たくわんに加工してみたり……。その間に本人たちにも栄養や旨みを蓄えてもらうということですね。

――もともとは野田さんも10代の頃は俳優志望だったんですよね。

野田 劇団の稽古に通いながら、歌舞伎町のモダンジャズ喫茶で働き始めて、そこでジャズバンドとかのブッキングを交渉するようになったのが、芸能マネージャーを始めたきっかけです。当時はタチの悪い人間ばかり交渉相手にしていましたね。

――そんな野田さんから見て、今のグラビア業界ってどう映っているんでしょうか?

野田 AKB48が分岐点だったと思いますが、どんな水着グラビアやったとしても、読者や業界の方に響きにくい時代ですね。ナショナルクライアントのキャンペーンガールがどんどんなくなって、同時に雑誌の部数も減ってしまっているので、なんともやりようがないです。

――その一方で人気グラビアアイドルが表紙の青年マンガ誌がコンビニに並ぶ光景や、SNSでは女性の水着写真は動物ネタと並ぶ鉄板コンテンツになっているような状況もあります。

野田 インターネットでバズったところで、芸能界のビジネスとしてどこまで成立するのかという話ですね。個人が上手にSNSをお使いになって撮影会を開けば、ある程度、簡単にお金にもなるでしょう。しかし、僕自身は「“グラビアアイドル”というカテゴリは芸能界に存在しない。あくまでグラビアは訓練の場で入り口のひとつでしかあり得ない」と思っています。

――でも、タレント事務所にとっては難しい時代ですね。

野田 難しすぎます。単に水着グラビアを漫然とやって「楽しい」と満足していないで、5〜10年先を見据えて、次のステップを常に本人も事務所も考えないといけません。

――傘寿間近の野田さんですが、これだけのキャリアがありながら、現在も一貫してタレントの現場に同行されています。これだけ若い現場スタッフともフラットに接している人もまずいないと思います。

野田 まぁ、いないでしょうね(笑)。でも、僕は現場に必ず行きますよ。自分が俳優になりたくて入ってきた業界ですし、僕はこれしか仕事を知らないので(笑)。もはや、仕事と思うよりも、現場に身を置いておくことが好きなんです。

――新体制に移行した今でも、野田さんが寵愛している若手俳優の矢崎希菜さんの現場マネージャーは続けているんですか?

野田 そうですね。自分のキャリアの終盤に正統派をやりたいと思いました。矢崎とは出会って6〜7年になりますが、コロナ禍で腰を折られちゃったので、また改めて再始動という感じです。今、彼女には「成田屋十八番の『外郎売』をきちんと覚えれば、滑舌や表現力も自然と培われるはずだ」と言って、日本舞踊と殺陣をやらせています。子役出身でビジュアルもいいし、まだまだこれからの23歳ですからね。ちょっと、時間はかかるかもしれないですが、これからが楽しみな俳優ですよ。
(取材・構成=伊藤凌)

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(写真:伊藤凌)

野田義治(のだ・よしはる)

1946年生まれ、広島県出身。俳優を目指して18歳で上京。その後、渡辺プロダクションにスカウトされ、マネージャーとして活躍。1980年にイエローキャブを設立し、多くのタレントを育てた。2004年にイエローキャブを離れ、芸能事務所サンズエンタテインメントの代表取締役に就任。現在のサンズエンタテインメントは野田氏がプロデューサーとして仕事をする会社に。

伊藤綾

1988年生まれ。道東出身。大学でミニコミ誌や商業誌のライターとして活動開始。雑誌では「SPA!」や「サイゾー」、ネットメディア「キャリコネニュース」、「マイナビニュース」、「東洋経済オンライン」などで執筆中。さまざまな有識者の話を聞きつつ、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催中。

X:@tsuitachiii

最終更新:2025/01/13 16:51