低空飛行が続くフジテレビ、2024年は娯楽番組で視聴率2桁はゼロも“光明”が差した番組
かつては誰しも憧れる業界だったのに、今や完全にその威光を失ったテレビ業界。中でも凋落が著しいのがフジテレビだ。1980年代から90年代にかけて視聴率戦争で圧倒的な強さを見せ、2004年から2010年にも7年連続で視聴率三冠を獲得したが、近年はボロボロ。「振り向けばテレ東」と揶揄され、民放最下位に沈んだ時期さえある。「楽しくなければテレビじゃない」がスローガンだが、2024年も視聴率は厳しい数字だった。
広告関係者が言う。
「近年はテレビの視聴スタイルが変わり、世帯視聴率をチェックする意味は薄れつつありますが、それにしてもフジは数字が悪すぎます。2024年に視聴率が2ケタに乗ったのはたった4回。6月の『サッカーW杯予選 日本vsシリア戦』、10月の『ワールドシリーズ ドジャースvsヤンキース戦』の第1戦と第2戦、さらに『Mr.サンデー』が1回だけ2ケタでした。『27時間テレビ』『FNS歌謡祭』『THE MANZAI』も2ケタには届いていません。
フジの方針がコア重視で、世帯を気にしていないのは分かりますが、人口的にボリュームゾーンの団塊ジュニアが50代に達し、コアの定義は揺らいでいます。スポンサーの中には、世帯が悪い時にコアを持ち出すやり方を“テレビ局の方便”と捉える向きも少なくない。他局の人気番組はコアも世帯もきっちり取っており、“コアさえ良ければ”というセリフは言い訳にしか聞こえません」
都合が悪い時に別の指標を持ち出すのは責任転嫁の王道だ。フジテレビはその昔、「バラエティのフジ」と呼ばれたが、今や見る影もない。
「フジで頑張っているのは朝の情報番組ぐらい。ドラマもヒットが出ませんが、とりわけバラエティの惨状は目に付きます。24年スタートの『街グルメをマジ探索!かまいまち』『この世界は1ダフル』『ザ・共通テン!』は早くも打ち切り候補ですし、『呼び出し先生タナカ』は『めちゃイケ』の丸パクリ。『ネプリーグ』『ホンマでっか?TV』『奇跡体験!アンビリバボー』あたりは完全にマンネリです。頑張っているのは、“学校かくれんぼ”がクリーンヒットした『新しいカギ』、カラオケ企画が当たった『千鳥の鬼レンチャン』、『ドッキリGP』ぐらいじゃないでしょうか。
アナウンサーも元気がありません。フジといえば女子アナ人気ランキングの上位常連でしたが、最新のランキングでBEST10に入ったのは6位の井上清華のみ。テレ東でさえBEST10に大江麻理子と田中瞳の2人が入ったのに、フジが1人というのはあまりに寂しい数字です」(民放バラエティ番組制作関係者)
だが、惨状が続くなかで未来への光明が差した番組もある。
「大当たりするバラエティがない中で大健闘したのが『BABA抜き最弱王決定戦!』です。この番組は『VS嵐』内のコーナーが独立したもので、2024年は2回放送され、いずれも10%に迫る数字を獲得。25年の1月3日にも放送が予定されているので、新春からノッていけそうです。
そしてもう1つは、映画『踊る大捜査線』シリーズです。10月に2週にわたって過去の作品が放送されると、いずれも9%台をマークして強さを見せつけました。スピンオフ作品の『室井慎次 生き続ける者』がヒットし、2026年には新作映画の公開も決まっており、25年は全力で盛り上げていくでしょう」(同上)
何とか低空飛行からの脱出を試みるフジテレビ。復活のカギはどこにあるのか? エンタメウォッチャーの大塚ナギサ氏はこう話す。
「ここ数年のフジテレビの番組の中で “想定外のヒット”となったのが、『新しいカギ』。当初はスタジオコントがメインでしたが、“学校かくれんぼ”や“高校生クイズ何問目?”など、中高生が登場する企画が人気となり、そちらにシフトしていった形です。コロナ禍もあり、長らく視聴者参加型の番組はなかった中で、『新しいカギ』では出演者と視聴者がより直接的に関わる企画で成功したわけです。この視聴者参加型というスタイルには、まだまだ可能性があるかもしれません。
また、入社1年目の上垣皓太朗アナがブレイクしていますが、40代後半以上の中高年の視聴者からの支持が大きい。結局、現在の地上波テレビでは40代・50代以上の視聴者を味方につけないと、なかなか難しいということです。
そういった意味では、かつてのフジテレビの人気コンテンツを活用し、当時を知る中高年の視聴者を戻していく方法が現実的ではある。実際、『踊る大捜査線』の復活もそういった流れでしょうし、24年は明石家さんまさん主演の『心はロンリー気持ちは「…」』が21年ぶりに復活しました。また、新年には『週刊ナイナイミュージック』内で『めちゃ×2イケてるッ!』で人気だった企画“やべっち寿司”が、7年ぶりに復活します。
過去の人気企画・人気コンテンツを復活させる中で、再び大ヒットするものも見つかっていくのではないでしょうか。バラエティはもちろんですが、『古畑任三郎』や『救命病棟24時』などの人気シリーズが何らかの形で復活できれば、大きな話題になるはずです。素晴らしいアーカイブを持つフジテレビにとって、昭和・平成のコンテンツが再評価されているいまこそ、むしろ最大のチャンスだと思います」
2025年は堂々とスローガンを叫べる年になるか。
(取材・文=木村之男)