CYZO ONLINE > 芸能ニュース > 『おむすび』振り返り【糸島編その1】

『おむすび』どうしてこうなった? 6週間かけてギャルになった米田結【糸島編その1】

橋本環奈(写真:サイゾー)
橋本環奈(写真:サイゾー)

 10月にスタートしたNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』。ネット上では毀誉褒貶が飛び交っておりますが、ここではドラマ愛ゆえにわりと厳しい意見を書き連ねてまいりました。

 年末年始のお休みですし、この1週間は『おむすび』前半戦を振り返ってみたいと思います。

 1月6日から始まる後半戦を前に、これまでを振り返りつつ気持ちを整えておきましょう。少し厳しいことも言うかもしれませんが、それも愛ゆえに……。

「ギャルになる/ならない」で6週間

 単純に長いよね。いちおう朝ドラが始まる前に予備知識としてコンセプトとか設定とか大まかなプロットを眺めたりするわけですが、そのどれを読んでも「ギャルが栄養士になる」と書いてあるわけです。

 当然、初回に登場した黒髪清楚な橋本環奈演じる米田結がギャルになることはわかっている。ルーリー(みりちゃむ)率いるハギャレンに誘われて、断り続けるというくだりだけで5週間、ようやくパラパラショーまでたどり着いたと思ったら「やっぱりギャルやめる」で、さらに1週間。こんなに話数を使う必要があったのかなと思ってしまうのです。

 ここが長く感じたのは、とにかく結という主人公の主体性のなさなんですよね。人としての主体的なメッセージを発してこない。やってることといえば書道王子の風見先輩(松本怜生)に顔を近づけられてポヤーンとすることと、あとは例の「米田家の呪い」による人助け。

 ハギャレンへの拒絶から入団に至る経緯も、まずはスズリン(岡本夏美)が栄養失調で倒れたところを助けて友達になり、続いてルーリー(みりちゃむ)が深夜徘徊で補導されたところを助けに行って、パラパラショーへの出演を決める。都合よく誰かに不幸が起こって、それを結が助けることでしか物語が展開しない。さらに、この行動が結自身の「助けたい!」という強い動機ではなく、自ら「呪い」「血筋」によるものだと説明してしまっているので、どこまでいっても「しょうがなくやってる」「嫌々やってる」というニュアンスから逃げられなくなってしまった。

 そのニュアンスが爆発したのが、第16回の「結ちゃん、アユにブチ切れる」の回でした。

 カリスマ・アユ(仲里依紗)の御帰還に興奮したハギャレン一同が米田家に押し掛けてきて、ギャルの伝統を守ってきたことを伝えた場面です。

「てかさ、ギャルとかもうやめなよ、超ダサいから。あとその『ハギャレン』って、死ぬほどハズいから、とっとと潰しちゃいなよ」

「この子たち、結の友達なの? あんたさ、もっと付き合う子、考えたほうがいいよ」

 アユの言い草もひどいもんですが、そう言われた結が涙ながらに反論します。

「こうなったの全部、お姉ちゃんのせいなんやけど。お姉ちゃんがリーダーやったけん、仲間になってほしいって頼まれたんよ」

「助けてほしいって頼まれたの、断れるわけない」

「こうなった」は明らかに被害者の立場からの言葉だし、「断れるわけない」は例の呪いです。ここ、お芝居としては前半のハイライトになるべき橋本環奈の超熱演シーンだったわけですが、その内容が「全部ずっと嫌々やっています」という告白だったのはゲンナリだよね。芝居の熱量とメッセージの方向性が合ってない。目の前で、仲良くなったと思ってる友達に「こうなった」なんて言われちゃったハギャレンたちのお気持ちは察するに余りあるところです。ここが「結、主体性がない」というこのパートの欠点の極みです。あえてそうしたと言われればそうなんだろうけど、性格悪く映っちゃってるし、結果おもしろくないんだから失敗としか言えない。

 その勢いで「マキちゃんのことも……!」なんて震災についてのトラウマを語り出すわけですが、これもなぁ。しんどいのよなぁ。

こじつけられる阪神・淡路大震災

 このドラマの土台、根本であるはずの阪神・淡路大震災についても、単なるこじつけとして引き合いに出されるシーンがありました。

 海辺で翔也に震災のトラウマを語るシーン。翔也の「いつも寂しそうにしている」という言葉に反応して語り出すわけですが、このときの結は風見先輩の清楚系彼女の存在にヤラれているだけで、震災のことなんて一切考えていなかったはずなんです。ただ、風見先輩という第1の男との恋愛が終わって、翔也という第2の男にバトンタッチするためだけに、震災が引き合いに出されている。

 糸島フェスの後にパパ(北村有起哉)が飲んだくれて何か言って、それをきっかけに結がハギャレンも書道もやめてしまうというくだりもありました。家で野菜の出荷作業をしているところにまた翔也がやってきて、結は「全部消えちゃうから……」などとまた震災のトラウマを語り出す。

 ここも、パパに心配をかけたくないから辞める、という話であって震災は関係なかったはずなのに、しれっと話のすり替えが行われていたシーンです。

 構図としては、結の震災のトラウマを唯一理解してくれたのが翔也だったという形で成立していますし、結果的にその部分で結婚までいくわけですから必要なシーンであることは間違いないのですが、震災についての扱いに軽さというか「便利に使いやがって」という印象が強く残る場面でした。このドラマの震災に対する「本気度」の部分で、大いに疑問の浮かぶ一幕です。

結果、なんでギャルになったんだっけ

 さんざん引っ張っておいて、ギャルになった決定的な転換ポイントは全然印象に残ってないんですよね。

 確か、アユが出演していたカラオケビデオが浜崎あゆみだったから「アユさんは本物のギャル!」ということになり、結は幼少期にセーラームーンが好きだったから「ギャルやれば?」という話だったような。このへんはもう筋立てがむちゃくちゃすぎて、丸めて飲み込むしかなかった気がします。

 そんなこんなで無事ギャルになった糸島編の前半を振り返りました。いちばん好きだったシーンは、フェス当日に米田家で準備していたときのすっぴんのタマッチ(谷藤海咲)! かわいかった!

(文=どらまっ子AKIちゃん)

◎どらまっ子AKIちゃんの『おむすび』全話レビューを無料公開しています
第1話~第56話
https://note.com/dorama_child/m/m4385fc4643b3
第57話~
https://cyzo.jp/tag/omusubi/

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子。1977年3月生、埼玉県出身。

幼少期に姉が見ていた大映ドラマ『不良少女と呼ばれて』の集団リンチシーンに衝撃を受け、以降『スケバン刑事』シリーズや『スクール・ウォーズ』、映画『ビー・バップ・ハイスクール』などで実生活とはかけ離れた暴力にさらされながらドラマの魅力を知る。
その後、『やっぱり猫が好き』をきっかけに日常系コメディというジャンルと出会い、東京サンシャインボーイズと三谷幸喜に傾倒。
『きらきらひかる』で同僚に焼き殺されたと思われていた焼死体が、わきの下に「ジコ(事故)」の文字を刃物で切り付けていたシーンを見てミステリーに興味を抱き、映画『洗濯機は俺にまかせろ』で小林薫がギョウザに酢だけをつけて食べているシーンに魅了されて単館系やサブカル系に守備範囲を広げる。
以降、雑食的にさまざまな映像作品を楽しみながら、「一般視聴者の立場から素直に感想を言う」をモットーに執筆活動中。
好きな『古畑』は部屋のドアを閉めなかった沢口靖子の回。

X:@dorama_child

どらまっ子AKIちゃん
最終更新:2024/12/30 14:00