『M-1グランプリ』最下位芸人の系譜 2024年ママタルトの明日はどっちだ!?
「最下位取っちゃって、まーちゃんごめんね」
2日に放送された『芸人シンパイニュース』(テレビ朝日系)で、ママタルト・大鶴肥満は“恩人”マルシアと念願の初対面を果たしていた。
昨年の『M-1グランプリ』(同)は、前年王者・令和ロマンのドラマチックな連覇で幕を閉じた。2位となったバッテリィズはエースというニュースターの存在をこの国に知らしめ、3位の真空ジェシカも4年連続4回目のファイナルで初の最終決戦に進出し、その実力を示している。
1位がいれば、10位もいる。今回の『M-1』で最下位となったのはママタルト。190kgを超える巨躯で縦横無尽にステージを駆け回る大鶴肥満に、神戸大学出身のインテリである檜原洋平が長フレーズでツッコむスタイルの漫才は多幸感にあふれ、東京のライブシーンでスベっている姿など、ほとんど記憶にないコンビだ。
史上最多の1万330組がエントリーした『M-1』で選び抜かれたファイナリスト10組。上位0.1%に満たない上澄みである。それでも、全国放送での最下位という結果にはネガティブなイメージが付きまとう。
多くの芸人が言う。
「8位や9位なら最下位がいい。ネタにできるから」
すでに『水曜日のダウンタウン』(TBS系)など多数のバラエティに出演し、テレビ朝日では『研修テレビ!!』というレギュラー番組も持っていたママタルトだけに、今回の最下位という結果もトークの“武器”として使いこなしていくに違いない。
過去20回開催されている『M-1』では、延べ20組の最下位コンビが生まれている。今回は、『M-1』で最下位を取った後に活躍を見せているコンビをピックアップしてみたい。
2001年大会 おぎやはぎ
第1回大会に登場したおぎやはぎ。第1回大会では地方会場でモニター観覧している一般審査員の投票も反映されるシステムだったが、当時まったくの無名だったおぎやはぎは大阪会場で100票中9票しか入らないという伝説的な惨敗を喫する。
だが、一般投票がなくなった翌年には4位に入り、露出を増やしていくと、05年には現在でもMCを務める『ゴッドタン』(テレビ東京)が放送開始。10年代に入ると数々のゴールデン番組でMC台に立つようになり、現在は“上がり”の芸人として若手からの羨望を集める存在になった。
2003・2004年大会 千鳥
03年、04年と2年連続でトップバッターを引き、2年連続で最下位に沈んだ千鳥。03年の敗退時には「これで最後のテレビになるんかなぁ」(大悟)というセリフを残して姿を消したが、計4回のファイナル進出は9回の笑い飯、5回の麒麟、和牛、ハライチに次ぐ成績だった。
今や押しも押されもせぬトップオブトップに君臨している千鳥。『せやねん!』(毎日放送)、『なるトモ!』(読売テレビ)など関西の情報番組における独特なロケで名を上げ、上京後には『ピカルの定理』(フジテレビ系)の終了や『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「帰ろか千鳥」回が放送されるなど停滞期もあったが、間もなく完全ブレークを果たしている。
2017年大会 マヂカルラブリー
準決勝では大ハマりした「野田ミュージカル」がまったくウケず、ネタ後の審査員コメントでは上沼恵美子に怒鳴られ、シャツを脱ぎすてて「マッチョッチョ」したものの、これまたスベリ倒して最悪の1日を過ごしたマヂカルラブリー。
だが、その後も挑戦を止めることなく20年大会で再びファイナル進出。せり上がりを土下座で上がってくるという完璧な伏線回収で観客の心をつかむと、一気に優勝まで駆け上がって見せた。
その後、翌年も「なんかヤバいやつ」というパブリックイメージが付きまとって思うように仕事量が増えなかった時期もあったが、徐々に野田の持ち前の上品さやクリエイティビティが知られるようになり、今では賞レースの審査員を数多く務めるなど信頼の厚い芸人となった。まだ4年前の話である。
2020年大会 東京ホテイソン
17年から19年の3年連続準決勝進出で業界内知名度を高め、20年に満を持してファイナル進出。アキナが現在でも語り継がれるほど盛大なスベリを見せたが8位、いまだに井口浩之が「20年は10位よりウケなかった」という定番フレーズを使い続けているウエストランドの9位を下回り、大会内ではいかにも印象の薄い最下位となった。
しかし、当時20代中盤という若さや清潔感、たけるの平場での立ち回りの達者さは20年大会以前から注目されており、いわばこの年のファイナル進出が最終チケットとなった形でブレーク。「テレビ出演本数ランキング」(ニホンモニター調べ)のトップ20に顔を出すなど、超売れっ子の仲間入りを果たしている。
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そのほか、南海キャンディーズ(05年)、ハライチ(15年)、ニューヨーク(19年)、ランジャタイ(21年)など、『M-1』最下位を経験している売れっ子は決して少なくない。
すでに今年末の『M-1』への再挑戦も表明しているママタルト。リベンジが楽しみだ。
(文=新越谷ノリヲ)