ひょうろく、青木マッチョら…『ラヴィット!』&『水ダウ』からブレイク芸人続出の理由
恒例のオリコン「2024年ブレイク芸人ランキング」が昨年末に発表され、TBS系の『ラヴィット!』や『水曜日のダウンタウン』から生まれたブレイク芸人の躍進が目立った。両番組の「ブレイク芸人のつくり方」について、お笑い業界に詳しい芸能ライターが解説する。
同ランキングは、10~50代の男女1000人を対象にアンケートを実施。1位はソロでもグループでも引っ張りだこの男女トリオ「ぱーてぃーちゃん」(すがちゃん最高No.1、信子、金子きょんちぃ)、2位は『M-1グランプリ』で史上初の連覇を果たしたコンビ「令和ロマン」(高比良くるま。松井ケムリ)で納得の順位となった。
青木マッチョがブレイクした理由
そんななか、3位には『ラヴィット!』出演をきっかけにブレイクしたコンビ「かけおち」の青木マッチョがランクイン。今年4月からほぼ無名の状態で『ラヴィット!』にたびたび出演し、名前どおりのマッスルボディと「マッチョなのに脱がない」「マッチョなのに声が小さい」「何でもできると言いながら実際はできない」といったギャップで人気が沸騰。上半期の同ランキングでは圏外だったが、大躍進となった。
『ラヴィット!』発のブレイク芸人となった青木の魅力について、芸能ライターの田辺ユウキ氏はこう解説する。
「青木マッチョさんは、筋肉芸人が多い中、群を抜いて腕が太いことが大きな武器。『ラヴィット!』出演時、カメラの撮り方もあって、二の腕がびっくりするくらい太く見える場面があり、その画像がSNSで拡散されました。身体的特徴の一手だけでインパクトが強い。
あと『なんでもできる』と言いながら、実はできないビッグマウスぶりが面白がられていますが、それもあの腕の太さのおかげ。あの肉体は発言にも説得力を生みますから、弱い者がきゃんきゃん吠えるのではなく、強いけどきゃんきゃん吠えるというギャップが面白さにつながっています」
ひょうろく、みなみかわの躍進のワケ
同じく「上半期圏外」から躍進したのが、ランキング5位に入ったピン芸人・ひょうろくだ。『水曜日のダウンタウン』やさらば青春の光のYouTubeチャンネルへの出演をきっかけに注目され、若者世代を中心に支持が急上昇した。
「ひょうろくさんのすごさは奇人感、サイケデリック感だと思います。自身のYouTubeチャンネル『もち、ひょうろく』での名曲カバー動画はまさに彼のサイケなセンスが光っています。あと『怯え』というリアクションを武器にできたのがブレイクの大きな要因ではないでしょうか。
テレビ的なリアクションは『派手さ』『大袈裟さ』が求められますが、それは時として『作り物感』が出てしまいます。その点、彼をブレイクへと導いた『水曜日のダウンタウン』の臓器売買ドッキリでの『怯え』は、とてもリアルで素朴なもの。だからこそ、ひょうろくさんの『怯え』が視聴者に響いたのではないでしょうか」(同)
上半期と同じ6位をキープしたピン芸人・みなみかわは、『ラヴィット!』『水曜日のダウンタウン』の両番組への出演を重ねたことで安定した人気を獲得した。
「みなみかわさんはコンビ『ピーマンズスタンダード』の時代からめちゃくちゃ面白かったですし、『あらびき団』(TBS系)でよくやっていた『アイヒマンスタンダード』のネタも抜群でした。ピンになってからは、どのポジションでもこなせる『立ち回りのうまさ』が引っ張りだこの理由だと思います。もともと痛みを感じないという武術『システマ』の使い手として知られるようになりましたが、その『システマ』もバラエティ的に汎用性が高いものでした。
あと、キンタロー。さんが松竹芸能を退所した際に『円満退所って存在しない』とコメントしながら、そのあと自分も松竹を退所し、その言葉がちゃんとブーメランになった。推察ですが、そうなるように計算していたと思われます。立ち回りがうまいから伏線もいろいろ張れるし、そうなると回収係として番組に1度のみならず、2度、3度と呼ばれることになる。その『立ち回りのうまさ』が、ブレイクのきっかけになった気がします」(同)
ブレイク芸人のつくり方
最後に、旬のブレイク芸人を生み出している『ラヴィット!』と『水曜日のダウンタウン』の特色について田辺氏に見解を聞いた。
「あくまで私の考えですが、『ラヴィット!』は芸人の長所を伸ばすバラエティ番組だと思います。キャツミさんの『独学ピアノ演奏』なんかはそうですよね。あと賛否両論ある元和牛の水田信二さんの『きびしんじクッキング』もそうではないでしょうか。
逆に『水曜日のダウンタウン』は芸人の弱みや短所を伸ばす番組。たとえば、きしたかのの高野正成さんがやたら人情にもろい部分とか、そういう部分を引き出して、どんどん見せていく。ドッキリ企画が多いですけど、そういうときにどれだけ『弱い』か、もしくは『ブチギレられる』かという点が重要になります。
『ラヴィット!』は芸人の特技を披露する場であるのに対し、『水ダウ』は芸をさせずに人間性を引き出すのだと思います。ですから、活きがいい若手が出てきたらまず『ラヴィット!』で売り出し、またちょっと違う味わいを必要としたときに『水ダウ』に出られたらベストな気がしますね」
(文=佐藤勇馬)
協力=田辺ユウキ
大阪を拠点に芸能ライターとして活動。映画、アイドル、テレビ、お笑いなど地上から地下まで幅広く考察。