フジテレビ、異例のロングラン会見直後に韓流番組放送のなぜ?
元タレント中居正広氏の女性トラブルを巡る一連の対応が世間から猛批判を受けているフジテレビが1月27日、東京・台場の同局で記者会見を行った。
同月17日の会見とは異なり参加するメディアに制限を設けず、カメラ撮影も可能な“オープンな形式”で行われたこの日の会見場には200近いメディア媒体、400人を超える取材陣が集結。
午後4時にはじまった会見は日付をまたいだ後も続き10時間を超える異例のロングラン会見となった。
会見では出席者の一人となった港浩一社長、嘉納修治会長の辞任も発表され、新社長に『Dr.スランプ アラレちゃん』や『ドラゴンボール』、『ちびまる子ちゃん』などの同局の人気アニメをプロデュースした清水賢治専務が就任することも明らかに。
港社長は「人権侵害が行われた可能性がある事案。それに対して社内での必要な報告、連携が適切に行われなかったこと、中居氏に適切な検証を行わず番組出演を継続したこと、タレントや関係者との会食のあり方について検証できていなかったことなど、対応に至らない点があった。願わくば(被害女性)ご本人に会い、直接おわびしたい」などと発言。
また、同月17日に行った先の会見の参加者を記者クラブ加盟社など一部のメディアに限定し、かつテレビカメラを入れない形で行ったことについて、「テレビ局としての透明性や説明責任を欠くものだった。これまでカメラを向けて疑惑を追及してきた弊社が、メラから逃げたと言われても仕方のないことだった。メディアの信頼性を揺るがした。私が最終的に会見の形を判断した。大きな間違いだった」などと謝罪した。
他方、中居氏の女性トラブルへの関与が報じられている同局の局員のA氏に関してはトラブル発生当日の食事会には関与していないと認定し、「守りたいという気持ちはなかった」などとコメント。
23年6月のトラブル以降も『だれかtoなかい』が約1年半にわたって放送が継続されたことについては「女性のコンディションを考慮し、刺激にならないように」と説明。
そのうえで、「番組の終了に時間がかかってしまったことはとても反省している。人権に関する意識が不足していたと思うし、結果的に社内ガバナンスがきかなかったことも大きな問題とした。
今後に関して港社長は「第三者委員会の調査に全面的に協力し、真実の解明と再発防止、企業風土の刷新に尽力したい」と話した。
会見後の同月28日には中居氏に関する一連のスキャンダルを報じてきた「週刊文春」(文藝春秋)が昨年12月26日発売号で伝えたフジ社員の関与についての記事の内容の一部訂正を発表し、謝罪。
当該記事ではトラブルの発端となった食事会について女性が“フジ社員”に誘われたとしていたが、その後の取材で“中居氏”に誘われたことなどが判明したと説明し、波紋を広げている。
スポーツ紙の芸能担当記者は明かす。
「会見では『文春』の当初の報道をもとにした『フジの社員とされるA氏が中居氏と女性とのトラブルにどこまで関与していたのか』や『局による女性社員を使ったタレント等への接待の実状』に関する質問が続出していましたし、『文春』が会見前に記事の内容を訂正していたら、だいぶ会見の様相も変わっていたと思われます。もっとも、トラブル発覚後も『だれかtoなかい』の放送を継続したことに関する港社長の『女性のコンディションを考慮し、刺激にならないように……』という説明については首をかしげる向きも多く、今後もこの騒動の動向が世間の大きな注目を集めることになるでしょう」
3月末に予定されている第三者委員会の調査の結果によってトラブルの真実がどこまで明らかにされるのか非常に興味深いところではあるが、フジの混迷ぶり(?)はくだんの会見後にも表れていたという。
「この日フジでは当初の番組予定を変更し、27日の午後4時から翌28日の午前2時30分頃まで会見の模様を中継し続けていたのですが、会見終了直後に韓国番組を放送したことにSNS上では『さすがはフジクオリティー』、『意地でも韓流押しなのね』などのツッコミが殺到して話題になりました」(テレビ誌ライター)
会見直後に放送されたのは韓国の人気タレントたちが神奈川・江の島でラーメン屋をオープンするドキュメンタルバラエティー番組『兄弟拉麺』。
本来の番組編成上では28日の午前1時55分から放送される予定だった番組が、会見が長引いたことで放送開始時間を後ろ倒しにした結果と推察されるが……。
「フジといえば2011年に“韓流ゴリ押し”批判が噴出し、抗議デモが起きるなど社会問題にまで発展しましたからね。あれから14年、再び局の不祥事が世間を騒がしている真っただ中に、悪い意味で絶妙のタイミングで韓国バラエティーを放送したわけですから当時の騒動を知る視聴者からすると『本当に懲りないね』といった声が噴出しても仕方のないところですよね。そもそも、この日の会見の中継番組によって当初の予定どおり放送されなかった番組は『兄弟拉麺』だけではないですし。ちなみに“韓流ゴリ押し”の抗議デモが行われたのも、この日の会見と同じお台場のフジの本社です」(同テレビ誌ライター)
フジの迷走もここに極まれりといった観もあるが、芸能ジャーナリストの竹下光氏もこう語る。
「近年において韓国ドラマやK-POPアーティストが日本でも一定の人気やニーズを抱えているのは事実ですし、そうしたコンテンツを重宝しているテレビ局はフジだけではありません。実際にSNS上の意見を見ても、そのこと自体の良し悪しを問うというよりも、『よりにもよって何故会社が未曾有の危機的状況にある中、わざわざ自局に対して不信感を持つ一部の視聴者やアンチを逆なでしたり、刺激したりするようなことをするんだろう』といった疑問やあきれる声が多く見受けられます。番組編成上の都合で仕方がない部分もあったのかもしれませんけど、少し考えれば一部の視聴者からこうしたツッコミが入ることは容易に想像できそうなものですけどね。せっかく今回の長時間の会見を評価する声も出ているのに、本筋とは関係ないところでこうしたことが話題になっていること自体、何だかもったいないですよね」
世間から猛批判を浴びた先の港社長(※当時)による1回目の会見しかり、今のフジにはもう少し視聴者感覚を意識する姿勢が必要なのかもしれない。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)