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芸人の「いい人」化に大きなリスク よゐこ・濱口優のパワハラ疑惑報道でも浮き彫り

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濱口優(写真:Getty Imagesより)

 今月16日、よゐこの濱口優が「パワハラ疑惑」を報じられ、ネット上で驚きの声が広がった。「裏表のない天然キャラでいい人」というイメージが強かっただけに、そのギャップに衝撃を受けた人が続出したのだ。事の真偽は別にしても、近年はイメージと異なるスキャンダルが報じられるとダメージが大きくなる傾向が強まっている。

 最近は「クズ芸人」が人気になる一方で、サンドウィッチマン、やす子らを代表に「いい人」イメージが定着している芸人もいる。世間からは「人を傷つけない」「悪口を言わない」といった印象を持たれており、それに対して彼らは一様に「芸人としてはやりづらい」と悩みを告白している。さらに、濱口のようになにかスキャンダル報道があったときに「ギャップの大きさ」でダメージが増してしまう恐れもある。

 濱口の「パワハラ疑惑」報道の影響や、芸人に「いい人」イメージが定着することのリスクについて、お笑い事情に詳しい芸能ライターの田辺ユウキ氏が解説する。

よゐこ・濱口「パワハラ報道」の影響は

 濱口のパワハラ疑惑は、今月中旬に「女性セブン」(小学館)が報道。記事によると、濱口はマネージャーに対し、大勢のスタッフがいる前で激しく罵倒したり、台本が気に入らないとドタキャンをにおわせたり、機嫌が悪いときに無視したりといったパワハラ的な言動を繰り返していたという。結果、これまで20名近くのマネージャーが離脱し、それが長年所属していた松竹芸能を昨年末に退社した原因になったと伝えられている。

「濱口さんの報道については、事実関係がはっきりと分かっていませんが、テレビ番組をはじめとするメディアに関しては『疑わしさがあるなら起用を控えておこう』というリスクヘッジが働くのではないでしょうか。タレントを起用する放送局や企業として、現在の流れ的にも、社内外で調査の必要性を求める声が強く出るはず。

 話が大きくなると、やはり番組への出演を一旦取りやめせざるをえない。そうなると、騒動の真相にかかわらず、イメージダウンなどの影響が出ることは必至。ネットニュースやSNSでは、もともとの話に尾ひれが付いて広がることは間違いないと思います」

 この報道を受けて、ネット上では「まさか濱口が…」「そんな裏の顔があったならショック」といった声が相次いだ。濱口の「いい人」というパブリックイメージが傷を広げている印象がある。濱口はどのように対応すべきか、田辺氏はこう指摘する。

「大切になってくるのは、濱口さんサイド、そして出演番組がはっきりとコメントを出すこと。調査をしているのであれば『こういった騒動が起きていますが、現在調査中です』と進捗を報告するべきですし、番組出演などを変わらず続けるのであれば『調査中の段階ですが、番組出演は一旦続けさせていただきます』などと伝えるべきでしょう。

 こういった騒動が起きた以上、各週刊誌や記者が取材をさらに進めると思います。昨今の芸能界の状況からも、週刊誌の報道・取材姿勢がかなりアグレッシブになっていることは確か。そこでの続報が、濱口さんにとって致命傷にもなりかねない。濱口さん本人や関係者の耳に騒動が届いているのであれば、真偽は分からずとも、だんまりは避けるべきでしょう」

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バッテリィズ・エースも…「いい人」化のリスク

 「いい人」イメージは好感度や大きな仕事につながる面があるが、芸人としてやりづらくなる可能性があり、さらに今回のような報道に見舞われたときのことを考えると大きなリスクにもなる。

だが芸人の「聖人化」は本人の意思と無関係に進行する。最近では『M-1グランプリ2024』で準優勝したバッテリィズのエースの「いい人」エピソードがファンらの手によってSNSで広く拡散された。このリスクについて、田辺氏はこのように論じる。

「バッテリィズのエースさんはその芸風や、2024年末に放送された『M-1グランプリ2024 アナザーストーリー』での言動から、特に『いい人芸人』の印象が付いてしまいました。『アナザーストーリー』では、ちゃんとヘルメットをかぶって自転車に乗り、ご近所さんにあいさつしながら路地を通り抜ける映像がTikTokで拡散され、『この人は、絶対にいい人』みたいなコメントが多数ついていましたし。

 確かに取材で実際にお会いしてもテレビで見たとおり、純粋な方です。相方の寺家さんと漫才の構造について細かく話し込んだあと、エースさんに『いかがですか?』と話を振っても、『僕は分かりません!』と返ってきましたし(笑)。一方でめちゃくちゃギャンブル好きで、芸人仲間からお金を借りたりしている一面もあります。

 エースさんに限らず、あまりに『いい人』のイメージが広がりすぎると、そういう本来の人間味が発揮できなくなるかもしれません。そうなるとバラエティ番組などでのトークの幅にも制限が出てくるのではないでしょうか」

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「いい人」イメージで失われる人間味

 さらに、田辺氏は別の芸人を例に「いい人」イメージのリスクを解説する。

「過去に芸人Aさんを取材したとき、同行したメディアの編集担当者がその方の大ファンで『Aさんのお話を聞いていると改めていい人感が伝わってきます!』とベタ褒めしていたんです。でも私はそのAさんについて、女性関係のよくない話を聞いていたので、編集担当者による『いい人』というベタ褒めにまったく同調できませんでしたし、Aさんも『自分はいい人ではない』という自覚があったためか、途端に話が窮屈になってしまい、堅い内容のインタビューになってしまったことがありました。

 芸人ってどこかにクズな要素があるものだと思っているのですが、最近は多くの事務所で養成所システムが浸透していて、そこでコンプライアンスや礼儀なども教え込まれ、クズな部分が矯正されることもあるでしょう。その延長で『いい人』化することもあるかもしれませんが、そうなると本来の人間味が失われたり、『いい人』として支持してくれる人たちのことを意識しすぎて萎縮したりして、キャラクターが狭まる可能性があるのではないでしょうか」

(文=佐藤勇馬)

協力=田辺ユウキ
大阪を拠点に芸能ライターとして活動。映画、アイドル、テレビ、お笑いなど地上から地下まで幅広く考察。

佐藤勇馬

1978年生まれ。新潟県出身。SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。著書に『ケータイ廃人』『新潟あるある』がある。

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最終更新:2025/01/31 20:00