『ムショぼけ』『インフォーマ』最新コミック発売―創作の軌跡と次なる一手
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二十数冊も本を出版するとどうなるか。答えはシンプルである。発売日を迎えても誰からも「おめでとう!」の一言すら届かなくなるのだ。出版祝いなどをしてもらっていた頃が恨めしいではないか……。
『インフォーマ』Netflixでついに…
さて、気を取り直して話を進めたいと思うが、1月20日にマンガ『ムショぼけ』3巻が発売された。もう手に取ってもらえただろうか。まだの方はぜひこの機会に読んでみてほしい。あなたのその一冊が私を幸せにしてくれる。徳は積むべきであるぞ。まだまだ続く『ムショぼけ』ワールドを今回も堪能してもらえれば嬉しい限りだ。
そして、『インフォーマ』である。マンガ『インフォーマ』3巻も4月に発売予定なので、こちらも楽しみにしていてほしい。
ここから発売ラッシュで、5月には新しい小説を発売し、それに伴ってある告知もできると思う。今度の物語は泣けることをテーマにしているので、『インフォーマ』や『ムショぼけ』とはまた違った世界観を届けることができるのではないかと思っている。その話はこれから少しずつやっていければと思っているし、夏には新連載のリリースもできるだろう。
幸せなことである。唐突だが、このような状況を作り手として幸せなことだと実感している。Netflixにて現在、世界配信されている『インフォーマ−闇を生きる獣たち−』の続編を望む声を聞かせてもらうたびに、幸せを噛み締めている。具体的に続編についてはまだ動いてはいないのだが、漠然とした構想はある。こうすれば、前作を超えることができるのではないかと考えているし、超えていくのは他の作品ではない。これまでの自分自身であることは十分に理解している。
『インフォーマ』にしても『ムショぼけ』にしても、小説、ドラマ、そしてマンガで展開され、メディアミックスをかけている。作品としてとても恵まれているが、ただ言えることは、待っているだけでは実現はしなかったということだ。いつでもいろいろなことを考えてきた。当然だが、ずっと仕事している。
思い返せばもう5年前である。その頃に『ムショぼけ』の物語を書いていた。まだ『インフォーマ』のタイトルも誕生していなかったが、これが『ムショぼけ』に繋がる原点となったのは確かだ。『ムショぼけ』が仮にずっこけたり、生み出せていなければ、『インフォーマ』は多分、生まれていない。当然、作品を通して知り合った人間関係もなければ、懐かしく思い出すこともなかったはずだ。
ずっと自分が生み出した物語を映像化するために書いてきた。気がつくともう25年になろうとしている。25年前はいくら書いても読んでくれる相手もいなかったし、編集者の1人も知り合いがいなかったのだ。応援してくれる人間だっていなければ、小説家になるという想いを本気で聞いてくれる人間もいなかった。それでも書き続けてきた。
ただ、自信はあった。それだけの努力もしてきていた。発売されている小説を読んでも、私のほうが上手いと感じられるようになっていた。報われない自分を支えたのは、自分の書いた物語が映画館で上映されているシーンを思い浮かべることだった。他には何もなかった。
人は今だけを見て判断しがちだが、私は違う。その過程を見ることができる。すごいのは結果ではなくて、その努力であることも理解できている。
何も見えない真っ暗闇で書き続けてきたのだ。同じことをもう一度やれと言われてもできないだろう。人が遊んでるときも寝ずに物語を書いて、その扉を自らの手で開いてきたのだ。
理想と現実はもちろん異なる。どれだけ走り続けても葛藤が尽きることはない。それでも振り返ったときに、頑張った分の足跡を残すことはできている。
新しい物語をこれからも生み出していきたいと思っている。しかし、私のスタートとなった『ムショぼけ』と私の代表作である『インフォーマ』はこれからも続けていければと思う。
2つの作品の続きをいつも待ちわびているのは、ほかでもない私なのかもしれない。
(文=沖田臥竜/作家・小説家・クリエイター)
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