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『おむすび』第110回 デレるおっさんと無能化される有能な先輩……ムカつく理由が判明しました

橋本環奈(写真:GettyImagesより)
橋本環奈(写真:GettyImagesより)

 えーっと、無事に発売されたそのお弁当、ラベルに細っけえ字でいろいろ書いてますけど、こんなフォントサイズとパステルな配色では高齢者には真っ白にしか見えませんよ。シニア向けにはシニア向けのデザインというのがあって、もっとも優先されるべきは視認性なんです。読めなきゃ意味ないのよ。コントラスト!

『おむすび』職業倫理と人生観が合わない

 あと、大見出しの「鰆の塩麹焼き雑穀ごはん弁当」という文字の横に「三重丸!」とあって「カロリー」「栄養」「色」って書いてあるのは、さすがに笑ってしまいましたねえ。お弁当の売りが「色」ってなんだよ。「色」がいいかどうかは消費者がそのお弁当を見て判断することであって、作り手が言葉で説明する価値じゃないだろ。ゴリ押ししてくんな。

 そういえばドラマの世界にも、なんか主人公を適当に動かしておいて「主人公スゴい!」「主人公のおかげ!」って言葉で価値を説明して押し付けてくる作品がありましたね。

 NHK朝の連続テレビ小説『おむすび』第110回、振り返りましょう。

逃げろ、無能化されるぞ!

 今週登場した、食品工場付の管理栄養士・土屋くん。『おむすび』には珍しく、ちゃんとした青年だったんですよね。最初は結さん(橋本環奈)もなっちゃんも単なる部長の腰巾着だろうってナメてかかってたけど、あの居酒屋での完全論破は実に痛快で、有能ぶりを発揮していた。

 私たちにとってはずっと言いたいことをようやく言ってくれたヒーローだったし、結さんたちにとっても強力な仲間になるべき人だった。こいつとだったら、いい仕事ができる……! そう思わせてくれる人物だったわけです。

 ここで「部長vs若い3人」という構図を作ることだってできたはずなんだよな。本来ならなっちゃんがコンビニにおける商品開発のスキームについて理解していて、今回の高齢者向け弁当の企画については結さんとなっちゃんが「最強の2人」でもよかったんだけど、残念ながらなっちゃんは「どらナンシェ」開発のときに経験したはずの工場との調整の記憶が何者かによって抹消され、無能化されてしまっていた。

 そこで3人が手を組んだ形跡はあるんです。この再プレゼンの席で土屋は、結さんの作ったメニューについて「調理工程はクリアされている」というようなことを言っていました。結さんも、普段この工場で使っている食材で作れるメニューにしたと言っている。ということは、土屋と結さんの間で、この工場では何を使い、どんな工程なら今のままのラインで製造できるのか、その打ち合わせがあったということです。

 だから、この3人のチーム感を出してもよかった。フレイルのキャンペーンによって部長の心を動かす展開だって、なっちゃんの企画書作成に土屋のフォローがあって然るべきだった。なっちゃん&結さんの理想と、土屋が知り尽くした現実。その融合こそが今週の題目である「理想と現実って何なん?」の着地点に相応しいはずだった。

 だから、すごく残念だったんですよ。

 土屋がフレイルについて「あれ、なんでしたっけ?」と言ったことが。

 どうしても結さんとなっちゃんだけの手柄にしたいという作り手側の欲によって、せっかく有能だった土屋まで無能化されてしまった。

 永吉が死ぬ前に、結さんに人から助けてもらうことの必要性を説いていたことがありました。ついでに人に感謝することの大切さも教えておいてほしかったね。

 糸島時代からずっと、結さんって「ありがとう」が言えない子なんだよな。今回の土屋の無能化には、作り手側の「意地でも結さんに『ありがとう』を言わせない」という歪んだ固執が垣間見えました。他人に感謝することを「下」だと思ってんだろうな。結さんを「下」に置くことが許せないんだ。

 だから大手コンビニからスカウトされちゃうなんてトンデモを平気で放り込んでくる。誰が納得するんだ、こんなの。何が「米田先生」だ、バカにしてんじゃないよ。

 あと、このプレゼンの席で結さんが言ってた「病院に患者さんが来ないこと」という理想についてなんですけど、これも管理栄養士という職種に対する過大評価ですよね。どんだけちゃんと栄養管理してても病気になるときはなる、というのが生き物に課せられた宿命であって、それに対する医療というのが人間という種を繁栄せしめた一要因なわけです。結さんが理想の超スーパー万能栄養士になったとて、病気がゼロになるわけじゃない。「病院に患者さんが来ない」ことをコメディカルが理想とするなら、それはとんだ不見識というしかない。医療の歴史に対する冒涜でもある。

 急にどっかから得体の知れない病気が発生して、食事に気を付けてる人も気を付けてない人もまとめて殺してしまう現実があるんです。もっとも最近の例でいうと、新型コロナウイルスっていうのがあったんですけどね。こんな不見識で向き合えるんですかね。

家では「ありがとう」を言う

 家では言うんだよなぁ。今日も家では翔也に「ありがとう」と言ってる。

 糸島時代、リサポンがパラパラの踊り方をイラスト冊子にしてプレゼントしてくれたことがあったんですよね。このとき結さんは「ふーん」みたいな感じで受け取ってて、その後、愛子(麻生久美子)が同じようなパラパライラストを描いたときは「ありがとう」と言ってた。

 この歪みってなんなんだろうな。結さんから「ありがとう」を頂戴できることを特権化している感じ。すごく気持ち悪いんです。

 ここでの花ちゃんと両親の会話も雰囲気だけで内容のないものでした。

 オーバーワークだとか、パパの気持ちを花に押し付けてたとか、こっちは翔也と花がどんな練習してたか知らないから何のことだかわからないんですよ。指導者と父親の役割分担もわからない。かろうじて階段ダッシュのくだりがあったけど、花はピンピンしてたし結さんも特段心配するそぶりも見せずコンビニ弁当の試食をしてた。昨日、ただ単に「母と娘の軋轢」という記号を置いたのと同じように、今日は「両親と娘の和解」という記号だけが置かれている。

「花の体がもっと強くなるような、栄養のあるごはん、いっぱい作ってください」

 それはほんとそう。花ちゃんが「今まで通り」とか「いつもありがとう」とか言わないってことは、やっぱり作ってなかったんだな。これからは作ってあげてください。「お願いします」なんて言わせんなよ、親の義務だぜ。

 アユ(仲里依紗)のほうは、ちょっと本格的にどうでもいいです。ホームページ作ったのは永吉が生きてた頃だと思うけど、半年以上何してたのよ。

なんでムカつくのか、わかったぞ!

 ヨネダでみんなで弁当食ってるとき、緑子が「老人ホーム、行くわけないやろ」って言ってみんな笑ってたけど、あの仕立て屋に老人ホームに行くという選択を勧めたのは緑子だったよな。何この言い草。「地獄に落としてやったぜ」ってことなの?

 倫理感も筋立てもおかしなことばかりで、普通に考えてこのドラマの脚本って人様の目に触れるレベルに達してないんだよな。部長風にいえばさ、「ただぁ! このままやったら、この脚本を上に上げることはでけへん」という仕上がりなわけ。

 でも、毎日、もう110回も放送されている。

「あんたがどう思うか知りませんけど、もうとっくに上に上がりましたけど?」

「上の決済も通りましたけど?」

「予算もつきましたけど?」

「だから放送されてるんですけど?」

「なんか文句あるんですか?」

 回を重ねるごとに、ノの字に、そうせせら笑われてる感じがするのよ。それがムカつくのだ!

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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第1話~第56話
第57話~

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子。1977年3月生、埼玉県出身。

幼少期に姉が見ていた大映ドラマ『不良少女と呼ばれて』の集団リンチシーンに衝撃を受け、以降『スケバン刑事』シリーズや『スクール・ウォーズ』、映画『ビー・バップ・ハイスクール』などで実生活とはかけ離れた暴力にさらされながらドラマの魅力を知る。
その後、『やっぱり猫が好き』をきっかけに日常系コメディというジャンルと出会い、東京サンシャインボーイズと三谷幸喜に傾倒。
『きらきらひかる』で同僚に焼き殺されたと思われていた焼死体が、わきの下に「ジコ(事故)」の文字を刃物で切り付けていたシーンを見てミステリーに興味を抱き、映画『洗濯機は俺にまかせろ』で小林薫がギョウザに酢だけをつけて食べているシーンに魅了されて単館系やサブカル系に守備範囲を広げる。
以降、雑食的にさまざまな映像作品を楽しみながら、「一般視聴者の立場から素直に感想を言う」をモットーに執筆活動中。
好きな『古畑』は部屋のドアを閉めなかった沢口靖子の回。

X:@dorama_child

どらまっ子AKIちゃん
最終更新:2025/03/07 14:00