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江頭2:50の「暴走芸」はどこまで許される? お笑いとハラスメントの境界線

江頭2:50の画像1
江頭2:50(写真:サイゾー)

 お笑い芸人の江頭2:50がTBS系特番『オールスター感謝祭2025春』で暴走し、女優の永野芽郁を追いかけ回して泣かせた騒動の余波が続いている。SNS上では江頭の「暴走芸」に対して賛否両論が巻き起こり、著名人たちも議論に参戦するなど騒ぎがいまだ収まっていない状況だ。お笑い事情に詳しい芸能ライターの田辺ユウキ氏が、今回の騒動で「なにが悪かったのか」を徹底分析する。

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永野芽郁批判は「論外、的外れ」

 3月29日に放送された同番組では、サプライズで登場した江頭が「コンプライアンスぶっ潰すぜ!」と宣言。アンミカに対してセクハラ的な言葉を発し、次にターゲットに定めた永野に「俺の女になれ!」などと言って追いかけ回した。ショックを受けた永野が涙ぐんだり、顔を隠してしまったりする場面があり、さらには一時ゲスト席から消えたことでネット上の視聴者が騒然となった。

 放送後、江頭は自身のYouTubeチャンネルで「台本ではなく独断での暴走」と説明して永野やアンミカらに全面謝罪。一方、永野はラジオ番組で「オールスター感謝祭、すごく楽しかったです」とした上で、江頭の件について「ただただ、本当にびっくりした。びっくりして、ちょっと涙が出てしまった」と涙した理由を説明。変な誤解をされないように顔を隠し、自身の判断でメイク直しのために一時離席したという。

 永野は「生放送だからこそ起こった1つのアクシデント」「これ以上この話を大きくしたくなかった」としたが、SNSなどでの悪質なコメントについては「対処の方法を私は考えます」と話した。

 SNS上ではなぜか“被害者”である永野へのバッシングも発生し、一部で「バラエティに出てるのにあのくらいで泣くな」「この人のせいでまたバラエティがつまらなくなる」などと非難の声が上がっている。永野が話したように、眉をひそめたくなるほどの悪質コメントもある状況だ。

 芸能ライターの田辺ユウキ氏は、永野に対するネット上の〝暴走コメント〟にくぎを刺す。

「永野芽郁さんに対してアンチコメントを投稿する人たちに一言、コメントをしておきたいです。永野さんへの批判は論外。的外れもいいところ。番組の中、そして番組が終わってのラジオでの発言など、すべてにおいて永野さんの反応・対応はまったくおかしくない。永野さんに非難を浴びせている人は『嫌なことがあっても我慢しろ』と言っているわけで、自分がパワハラ体質であることを認めて、なんらかのカウンセリングを受けるべきではないでしょうか。

 そういった人たちは、自分がお笑いの文化を守っているつもりなのかもしれませんが、永野さんを批判している人たちの存在が、余計にお笑いへの締め付けをきつくしていることを自覚してください。コンプライアンスはあなたたちのような人のためにあるんですよ、と申し上げておきます」

「暴走芸」はハラスメントか

 問題の発端である江頭の暴走芸については「時代遅れの芸でハラスメントそのもの」「もう地上波テレビに出しちゃいけない人」といった厳しい批判がある一方、「暴走芸をするのは誰もが知っているのだから使い方を間違えた番組側のミスで江頭は悪くない」「エガちゃんは自分の仕事をしただけ」などと擁護する声もある。江頭の芸風と今回の番組起用について、田辺氏はこのような見方を示す。

「暴走芸ももちろんやり方次第だと思います。たとえばイジリー岡田さんの“舌技”は当然ながら台本ありきで、歯ブラシをぺろぺろするのも『フィクション』と見るべき。イジリーさんの暴走は、そういった仕込みの上で楽しむもの。また、爆笑問題の太田光さんが出演者や客席の中に飛び込んでいくのも、スタッフからある程度のアナウンスがあるはず。あと太田さんはお客さんに対しては過度な身体接触はしませんよね。

 江頭さんの暴走芸は、ご自身のYouTubeでの釈明動画にもあったように、常に『台本なし』です。それが持ち味の江頭さんを起用したということは、番組としても、半裸に黒タイツなどで『キモイ』を自己演出した男性に女性共演者が襲われ、リアルに驚いたり、怯えたりするところを見せることでの盛り上がりを狙ったということでしょう」

 暴走芸に賛否が巻き起こっているが、田辺氏はその是非についてこのように断じる。

「江頭さんの暴走芸は『人が嫌がるところっておもしろいよね』という考え方の現れです。ただそれは屈折した笑いとも言えます。確かに私も少年時代、『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)などでの江頭さんの暴走芸を笑って見ていました。同級生はみんな笑っていましたし、中にはマネをする人もいて、それくらい大人気でした。しかし大人になるにつれて、『人が嫌がるところをおもしろがる』というのは、方向性次第で非常におぞましいものであるとも考えるようになりました。なぜならそれは、いじめの構造にもつながってしまうからです。

 芸人同士であれば成り立つでしょうし、芸人以外でも台本などがあって根回しされているやりとりであれば、それを『フィクション』として許容できるところもあります。もちろん、それすら受け付けられない人もいるはずですが……。しかし江頭さんが発言しているように『台本なしのガチ』なのであれば、それは『嫌なことがあっても受け入れろ』という、ハラスメントそのものになります。

 昔はそれが大きな笑いにかき消されて、問題点が見えづらかっただけ。もしくは言い出しづらかっただけ。社会の風潮としてそれらがクリアになりつつある中では、江頭さんの暴走芸は『時代にそぐわない』と言わざるを得ない。また番組も、江頭さんを起用するのであれば事前になんらかの策を立てるべきではないでしょうか」

江頭は「地上波NG」になってしまうのか

 ここまで大きな騒動になってしまうと、いくら永野がラジオでフォローしたといっても、テレビ局側としては江頭を使いづらくなりそうだ。江頭はこのままの芸風だと「地上波NG」になってしまうのだろうか。田辺氏は続ける。

「今後も暴走芸を貫くかどうかは江頭さん次第。江頭さんの考え方なので、それはそれで尊重した方がいいと思います。ただ、たとえば共演者が『暴走芸の笑いの餌食にはなりたくない』『追いかけられたり、激しい接触をされたりするのはつらい』と思っていれば、起用してはいけません。『コンプライアンス』は確かに表現の縛りが多くてつまらないこともありますが、見方によっては、より良いものを作るための手段としても考えられます。

 そうやっていろいろ考え方を変えていこうとしているのに、『俺はこういうスタイルだ』と周りを巻き込むのは、単なる押し付けでしかなく、極めて身勝手な行為になります。ですので、江頭さんが正しいかどうかよりも、共演者らに拒否反応があるのであれば、絶対に使うべきではありません。

 私個人としては、お笑い芸人ばかりが出ている番組で、相手もお笑い芸人なら『江頭起用』はまだ許容してもいいという気がしています。しかし相手の本業が芸人でないなら、話は別です。江頭さんの暴走芸を受けるのは厳しいでしょうから、起用はやめるべき。ですので、番組側は、制作する放送内容としっかり向き合って、江頭さんの起用が適切かどうかしっかり判断するべきかと思います」
(文=佐藤勇馬)

協力=田辺ユウキ
大阪を拠点に芸能ライターとして活動。映画、アイドル、テレビ、お笑いなど地上から地下まで幅広く考察。

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佐藤勇馬

1978年生まれ。新潟県出身。SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。著書に『ケータイ廃人』『新潟あるある』がある。

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最終更新:2025/04/03 09:00