石橋貴明の謝罪で浮かんだテレビ業界の罪…「タレント囲い込み」がハラスメントの温床に

過去にフジテレビの女性社員に対してセクハラをしたとして、フジテレビの第三者委員会のヒアリング対象になっていたものの、調査を断ったとされるとんねるずの石橋貴明が16日、所属事務所を通して謝罪コメントを発表した。謝罪した一方で「かなり深酒をしてたためか、覚えていないのが正直なところ」としており、覚えていないほど同様の事案が繰り返されていたのではないかと指摘する声もある。
テレビ業界が人気タレントのセクハラ・パワハラを放置してきたことが根本原因との見方もあるが、実際に「タレントのハラスメントを見過ごす業界体質」があったのか。長年業界を見てきた在京テレビ局の関係者に話を聴いた。
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女性に謝罪しつつも「覚えていない」
石橋については、中居正広氏をめぐる一連のフジテレビ問題で調査を行った第三者委員会が、報告書の中で「有力な番組出演者がフジテレビの女性社員の前で下半身を露出したケース」を類似事案として指摘。「週刊文春」(文藝春秋)はその有力な番組出演者が石橋だったと伝え、「10年以上前、フジの女性社員が石橋らとの会食に呼び出された際、途中から2人きりにされて別の店に移動し、その場で石橋が下半身を露出した」などと報じた。
石橋は謝罪文で、調査を断った理由について「フジテレビに関する第三者委員会の調査につきましては、病気の発覚と重なり、数々の検査と入院準備のため時間に追われ、又、心の余裕の無さから、対応することが出来ず、申し訳ありませんでした」と説明。石橋は食道がんが発覚したと公表していたが、今回の謝罪文では「実際は、咽頭がんも併発しておりました」と明かした。
セクハラの事実については「10年余り前のことで記憶が曖昧な部分もありますが、記事にあった方々と会食した覚えはあります。そこで起きた詳細については、かなり深酒をしてたためか、覚えていないのが正直なところです。私自身の至らなさゆえ、かなり羽目を外してしまったかも知れません」と微妙な言い回しながら、「同席された女性の方には、不快な思いをさせてしまったことを、大変申し訳なく思っております。かなうのであれば、快復後直接お会いして謝罪させていただきたく思います」と謝罪した。
この件に関しては、業界内や一部ネット上で「芸人が飲みの席で脱いだくらいで咎められるのか」「10年以上前のことを今の感覚で裁くのはおかしい」といった擁護の意見もある。しかし、10年以上前であろうと飲みの席であろうと、女性と2人きりの場で下半身を露出するのはセクハラ以外の何物でもないだろう。
また石橋は別の週刊誌メディアで、スタッフへのパワハラまがいの言動や、フジテレビから「VIP待遇」を受けていた過去なども報道されている。
「タレント囲い込み」がハラスメントの温床
石橋が「覚えていない」としたことで、このような事案が当たり前のように繰り返されていたと指摘する声もある。そのようなことがまかり通っていたのは、テレビ業界がそれを看過してしてきたせいだともみられている。
実際、業界には人気タレントのセクハラ・パワハラを放置する風潮があったのだろうか。業界歴の長い在京テレビ局の関係者はこう証言する。
「大前提として石橋さんの件と同じく少し昔の話ではありますが、人気タレントのセクハラ・パワハラを看過する風潮があったかと聞かれたら、『あった』と答えざるを得ません。業界の構造として、制作サイドは売れっ子タレントを囲っておきたいという心理があります。局として力を入れたいレギュラー番組や特番など、ここぞという時に人気タレントを起用できれば、社内で存在感を示すことができる。それができるようにするためには、日ごろから人気タレントと深い関係を築いておく努力が必要になります。
そこで手っ取り早いのが、女性絡みの仕込みです。社内調達、合コン、夜のお店などで女性と出会う機会をつくってあげて、タレントに気に入られれば仕事がうまく回る。そこまでならどこの業界でもよくあることで、大きく問題視されることはないでしょうが、それを繰り返しているとタレント側に傲慢さが出てきて、横暴な振る舞いをするようになる。
そのタレントのわがままをどうさばくかが重要。本来なら『これ以上はちょっと』とブレーキをかけるべきですが、仕事上の付き合いを優先して看過してしまうから後々問題になる。石橋さんの件は氷山の一角で、まだ世に出ていないパワハラやセクハラはたくさんありますよ。ビクビクしているタレントさんはかなりいると思います」
とんねるず使って「いい思い」した制作スタッフ
中居氏の騒動にもつながるが、テレビ制作側が蜜月関係のタレントを甘やかしすぎてきたことが問題の根幹にあるようだ。とんねるずはフジテレビとの蜜月が知られているが、これについて前出のテレビ局関係者は言う。
「とんねるずの番組は、現在では到底許されないような内容が多く、当時から『やりたい放題だな』とは思っていました。放送に乗っているだけであれですから、裏ではこんなものではないんだろうなと。それが許容されていたのは、とんねるずを使っていい思いをしているテレビ局スタッフがいたからだと聞いています。とんねるずと仲がいい、一緒に仕事をしているといった言葉を誘い文句にいろいろとヤラかし、それをネタにすらしてしまう。そういうノリが許され、面白がられていた時代でした。全盛期のとんねるずは各局にレギュラーを持っていましたが、やはりそうした蜜月関係はフジテレビが別格の強さで、いい思いをしていたスタッフもフジが突出していたと思います。だから、一連のフジテレビ問題のようなことが起きてしまったともいえます」
フジテレビ問題をきっかけに、どんどん明らかになっていくテレビ業界の異常な体質。フジテレビに限らず、これを機に膿をすべて出し切るべきだろう。
(文=佐藤勇馬)