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『あんぱん』第13回 今田美桜がよくなってきたので、ストーリーの無理筋が大丈夫かもしれない

今田美桜(写真:サイゾー)
今田美桜(写真:サイゾー)

 うーん、さりとて不快ではないんだよな。展開としておかしなところは散見されるどころか大筋としておかしいと思うんだけど、不快ではない。基本、良心的に作られていると思います、NHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』。

『あんぱん』パン食い競争に必然性がない

 今週は「なんのために生まれて」ということで、水曜日である今日、主人公ののぶちゃん(今田美桜)がその夢を定めることになりました。いわく、学校の先生になりたいんだって。

「子どもらに、体操や勉強の楽しさを教えたいがです」

 そうか。まあ、おまえがそう言うならそうなんだろう。

 学生が将来のことを考えて、先生になりたいと思うときって、やっぱり自分がどんな先生と出会ってきたかがその動機付けに関わってくると思うんだよな。「あんな先生になりたい」という具体像があるほうが自然だと思うの。

 のぶちゃんは子どものころから「ハチキンおのぶ」として界隈の有名人だったし、下駄でクラスメートを引っ叩いたり、投げ飛ばしてケガをさせたりしていたことがありました。そんなとき、先生はどんな対応をしたのか。のぶちゃんの正義を認めつつ、暴力はよくないと諭したのかどうか、そういうところをすっ飛ばしているので、のぶにとっての「先生像」が私たちにはまったく伝わっていない。そういう状態で急に「先生になりたい」と言われても、「そっか、朝田のぶならきっといい先生になるよ。応援するよ」という気持ちにはなれないわけです。将来どんな先生になるのか想像のしようがない。

 急に高等教育を受けていることになり、急に「夢が見つからない」と言い出し、急にカッちゃんとかいう知らない中尉が現れ、急にパン食い競争が行われ、急に出てきた知らない女の子との心の交流らしきものがあって、急にラジオが家にやってきて、急にラジオ体操をやったら、先生になりたい。

 明らかに無理筋だし、この無理筋を通すためにはそうとうに力のある芝居と演出が必要になるわけですが、どうだろう、感触として、通ってなくもない気がしないでもないくらいの感じです。見ていて不快ではなかったというのはそういうことなんでしょう。

 第13回、振り返ります。

ルールブック持ってこい

 昨日のレースを振り返ってみると、1等は朝田のぶ、2等にハナ差で岩男くん、3等はどうやら千尋(中沢元紀)だったようですね。のぶと岩男がゴールした瞬間、最終コーナーを回ってくる千尋が見えていました。それにしても元気になったもんだな、あの小さくて病弱だった千尋が。よかったよかった。

 で、のぶは女子だし、エントリーもしていないので失格。岩男はヒジであんぱんを吊るしているロープを揺らすという、食パンの角に頭をぶつけて死ななければならないほどの反則を犯していたので、これも失格。繰り上げで3着入線の千尋に優勝賞品のラジオが与えられることになりました。

 用意されたパンは250個。高額のラジオが賞品となっていますし、中尉殿もおりますから、競争に不正があってはいけません。明確なルールが必要です。のぶが飛び入りしたレースのみで優勝が決まるのであれば、豪ちゃん(細田佳央太)が惨敗したレースはどういう位置づけだったのでしょう。ルールブックを持ってきなさい。

 結果、千尋の計らいもあって朝田家にはラジオと250個のパンの売り上げがもたらされている。確か1コ4銭だったから、250個で1000銭。10円ですね。新聞にマンガが入選した賞金と同じだ。偶然にも、のぶちゃんと嵩(北村匠海)はあんぱんとマンガで同じ金額を稼いだことになりました。中尉、朝田家に利益誘導しすぎじゃない?

 あと、ラジオもらったのぶに嵩が「元気100倍」って言ったのもどっちかといえば白けたし、家にラジオを持ち帰ったのぶのシーンでも嵩それ重たいんだから持ってやれよと思うし、釜じい(吉田鋼太郎)があんだけ「出るな」と言っていたパン食い競争にのぶが出たことに怒ってないのも変なんだよな。「出たのか!」って怒ってるところにのぶがラジオ抱えて帰ってきたほうがいいと思うんだけど。

 それくらいでしょうか、無理筋。

今田美桜がよくなってきた

 昨日はルールが不明瞭すぎてまったく応援できなかったのぶの疾走シーンでしたが、一度ルールについて「これはこうです」と念を押されたことであきらめがつきました。のぶの回想の中の走るシーン、走るのぶ、よかったですね。「体が風になったみたいやった」というセリフも、表情もよかった。ようやく今田美桜がよく見えてきました。

 ラジオを初めてつけるとき、正面から中央でとらえて寄っていくカットもよかったですね。荘厳なものであるという演出が効いているので、電源は? コンセントなの? という疑問も打ち消してくれます。

 ラジオ体操のシーンもいいんだ。こういうのぶが見たかったというのぶの姿だったし、向こうのほうで一緒に体操してた釜じいが腰を痛めていたり、ヤムが体操に参加せず何か物憂げに自転車を転がしていくのも含みがあってよかった。

 そして今日のハイライトはやっぱり、釜じいを朝田の女性たちが説得する場面です。釜じいが頑なに反対するのはもうそういうものだとして、それでも「羽多子さん(江口のりこ)に楽をさせてやらにゃいかん」という思いやりとリスペクトも見えるし、羽多子の反論も迫力があってよかった。

 そして何より、3姉妹のキャラクターの描き分けですよね。この人がそれぞれどういう人で、どういうことをしたら魅力的に見えるのか、ここには考え抜かれた形跡が見えました。蘭子もメイコも最高だったと思うよ。

 そんなわけで、いろいろあるけどまだ大丈夫な『あんぱん』、明日も楽しみです。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子。1977年3月生、埼玉県出身。

幼少期に姉が見ていた大映ドラマ『不良少女と呼ばれて』の集団リンチシーンに衝撃を受け、以降『スケバン刑事』シリーズや『スクール・ウォーズ』、映画『ビー・バップ・ハイスクール』などで実生活とはかけ離れた暴力にさらされながらドラマの魅力を知る。
その後、『やっぱり猫が好き』をきっかけに日常系コメディというジャンルと出会い、東京サンシャインボーイズと三谷幸喜に傾倒。
『きらきらひかる』で同僚に焼き殺されたと思われていた焼死体が、わきの下に「ジコ(事故)」の文字を刃物で切り付けていたシーンを見てミステリーに興味を抱き、映画『洗濯機は俺にまかせろ』で小林薫がギョウザに酢だけをつけて食べているシーンに魅了されて単館系やサブカル系に守備範囲を広げる。
以降、雑食的にさまざまな映像作品を楽しみながら、「一般視聴者の立場から素直に感想を言う」をモットーに執筆活動中。
好きな『古畑』は部屋のドアを閉めなかった沢口靖子の回。

X:@dorama_child

どらまっ子AKIちゃん
最終更新:2025/04/16 14:00