テレ朝が開局以来初の“W三冠”達成、絶好調を支える『ザワつく』の類似番組が大量発生は既定路線か

テレビ界は目下フジテレビの一連の騒動の話題で持ちきりだが、凋落の一途をたどるフジとは対照的に絶好調なのがテレビ朝日だ。2024年度の平均世帯視聴率は「全日」(6~24時)、「ゴールデン」(19~22時)、「プライム」(19~23時)が全てトップで、3年連続で3冠を達成。さらに個人全体でも開局以来初となる3冠を達成し、“W3冠”となった。
「テレ朝は報道・バラエティ・ドラマ・スポーツと、ダメな部門がありません。報道番組は朝の『グッド!モーニング』と『羽鳥慎一モーニングショー』、昼の『大下容子ワイド!スクランブル』が時間帯トップで、『報道ステーション』も順調。週末の『サタデーステーション』や『有働Times』も健闘しています。
バラエティでは『ザワつく!金曜日』『ポツンと一軒家』『博士ちゃん』『池上彰のニュースそうだったのか!!』といったレギュラー番組が数字を稼ぎ、『格付けチェック』『M-1グランプリ』も高視聴率を記録。ドラマでは『相棒』『ザ・トラベルナース』『Believe-君にかける橋-』などががっちり数字をキープし、スポーツではサッカーW杯予選や世界野球プレミア12が年間TOP30に入りました」(テレビ情報誌記者)
かつてテレビ朝日は低視聴率に喘ぎ、「万年4位」と揶揄された時期もあったが、見事に下剋上を達成。その理由について、元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏はこう分析する。
「テレ朝が好調な理由ははっきりしています。他の放送局が若い人の視聴率を取りにいっているのに対し、テレ朝はシニアで良いと考えているから。他局は広告価値の高い番組をつくることを目指していますが、シニア層以外はなかなかテレビを見なくなった今、テレ朝は視聴率を取りにいってトップになることを目指しており、朝から晩までシニアをターゲットにした番組を取り揃えている。トップになるのも納得です」
中でも“お化け番組”となっているのが『ザワつく』だ。視聴率が取れないこのご時世に、『ザワつく』はレギュラーバラエティ番組の年間平均視聴率で全局トップを記録。2024年は全放送回で時間帯トップを取り、大晦日特番も民放トップだった。そのためテレ朝ではどんどん『ザワつく』の類似番組が誕生している。
たとえば高嶋ちさ子は派生番組の『ザワつく!音楽会』が不定期に放送され、4月からは『プラチナファミリー』がスタート。長嶋一茂と石原良純は『Qさま!!』『帰れマンデー見っけ隊!!』『路線バスで寄り道の旅』などにゲストとしてしばしば出演。一茂には『出川一茂ホラン☆フシギの会』というレギュラー番組もある。特徴的なのは、番組の作りが『ザワつく』にそっくりなこと。『ザワつく!音楽会』が本家に似ているのは当然として、『フシギの会』や『プラチナファミリー』も、番組進行やスタジオセットは『ザワつく』に似せているとしか思えない。
もちろん、類似番組をつくれば二匹目のドジョウが狙えるわけではない。テレ朝はかつて2016年に『アメトーーク!』を週2回放送したことがある。同番組は深夜で驚異的な視聴率を記録し、ゴールデンに昇格した後も勢いが衰えなかったため、木曜と日曜に週2回放送するという欲張りな編成を組んだのだが、あからさまなネタ切れに……。
こういった“類似番組を連発する”戦略にはどういった意図があるのか。前出の鎮目氏はこう語る。
「若者は新しいものを追いかけますが、シニア層はどちらかというと安心したいと思うもの。だからシニアに刺さるものを作ろうとすると、毎度おなじみのものがいいんです。『徹子の部屋』『科捜研の女』『相棒』など、テレ朝は長く続いているものが多いですよね。だから高嶋ちさ子、長嶋一茂、石原良純が受け入れられることが数字にあらわれると、同じようなキャスティングの同じような番組が増えることになります。人気番組のタレントを抱え込めば、他局に出られなくなるという目論見もあります。
局内の事情もあります。ヒット番組を作った人は当然評価が上がります。すると、勝負する時にはその人に番組を作らせようということになる。そうした時に手っ取り早く“確実”なのは、同じスタッフで同じようなタレントを使うことです。ワケが分からない人で新しい試みをやってコケるぐらいなら、手堅い作りをしたくなる。結果的に同じ人ばかり起用して、同じような番組ができるというわけです」
それもこれも好調だからこそできること。他局にとっては羨ましい限りだが、あまりやり過ぎると飽きられてしまい、全てを失うリスクはありそうだ。
(取材・文=木村之男)