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国内外から熱い注目を浴びる実力派俳優・向里祐香インタビュー 山本直樹の名作を実写化した映画『YOUNG&FINE』で風変わりな高校教師を好演

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向里祐香(撮影=荻原大志/ヘアメイク=董冰/スタイリスト=林 峻之)

2024年にアメリカの賞レースを席巻したドラマ『SHOGUN 将軍』や、海外でも高い評価を受けた映画『福田村事件』(23)など、話題作の出演が続き、国内外から熱い注目を浴びる実力派俳優・向里祐香。山本直樹の傑作漫画を実写化した映画『YOUNG&FINE』で風変わりな高校教師を好演している彼女に本作の撮影エピソードや、この世界に入ったきっかけなどを中心に話を聞いた。

<インフォメーション>

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『YOUNG&FINE』 © SPOTTED PRODUCTIONS


『YOUNG&FINE』
2025年6月27日(金)より新宿武蔵野館他全国順次公開
新原泰佑 向里祐香 新帆ゆき ほか

原作:山本直樹『YOUNG&FINE』(「漫画アクション」連載)
脚本:城定秀夫
監督:小南敏也

海辺の町に暮らす高校生・灰野勝彦(新原泰佑)は、同級生の玲子(新帆ゆき)と交際しているが最後の一線を越えさせてもらえず悶々とする日々。そんな勝彦の家に、突然風変わりな高校教師・伊沢(向里祐香)が下宿人として現れる。はじめは警戒しつつ徐々に伊沢と距離を縮めてゆく勝彦と、二人に嫉妬心を燃やす玲子。そして伊沢は誰にも言えないある秘密を抱えていた。性欲と恋心、今を生きる力強さと将来への不安……複雑に絡み合う3人の感情は、やがて思いも寄らない未来へと転がり始めてゆく。

公式サイト:https://www.leonefordreams.com/young-and-fine
X:https://x.com/leonefordreams

<プロフィール>
向里祐香(こうり・ゆうか)1990年9月24日生まれ。東京都出身。数々の映画、ドラマ、MVに出演し続ける演技力と、JR東海「東京ゾクゾク」、富士電機など多数の広告で見せる存在感を兼ね備えている。近年の主な出演作として、映画『愛なのに』(22/城定秀夫監督)、『福田村事件』(23/森達也監督)、『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』(24/井上淳一監督)、TV『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(25/CX)、『地獄の果てまで連れていく』(25/TBS)、『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(25/NHK)、『SHOGUN 将軍』(24/Disney+/FX)、『HEART ATTACK』(25/FOD)などがある。釜山国際映画祭2023のアジア・スター・アワードにて「フェイス・オブ・アジア」賞受賞。

公式プロフィール:https://officemugi.co.jp/members/yuka-kouri/
Instagram:https://www.instagram.com/sugar_milk_cocoa/

●衣装クレジット
ネックレス¥93,500、ブレスレット¥93,500、右人差し指につけたリング¥57,200、右中指につけたリング¥42,900、左人差し指につけたリング¥63,800/全てR.ALAGAN(info@ralagan.com)、他スタイリスト私物

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向里祐香(撮影=荻原大志/ヘアメイク=董冰/スタイリスト=林 峻之)

自分が男子高校生だったら惹かれるであろう先生像を目指した

──『YOUNG&FINE』の原作漫画は30年以上前の作品ですが、読んだときにどう感じましたか。

向里 全く古さを感じませんでした。とても線が綺麗で、ジメっとした質感はあるけど爽やかさもあって。私が演じた伊沢学はミステリアスだけど大雑把なところもあって魅力的でした。その二面性みたいなところを、どう表現したらいいのだろうと悩んだのですが、原作をリスペクトしつつも自分なりに役を楽しみながら撮影に参加させていただきました。

──城定秀夫監督が手掛けた脚本を読まれた印象はいかがでしたか?

向里 城定マジックというか、一つひとつの文字から原作の質感みたいなのが伝わってきましたし、キャラクターそれぞれが、ちゃんとそこに存在して生きているなと感じました。伊沢の見た目はショートカットだったり、メガネをかけていたりと少し違うんですけど、原作の匂いは、ちゃんと忠実に表現されているなと。

──地方特有の閉塞感が描かれていますが、理解できるところはあったのでしょうか。

向里 私は地元が東京で、都心ではあるんですが、今のように再開発される前はそれなりにローカル感がある場所だったんですよね。だから原作を読んでいると懐かしさがありました。あと完成した映画を観たときに感じたのは、私が学生時代によく観ていた2000年代の日本の青春映画に雰囲気が似ているなということ。特に時代は提示されていませんが、自分自身の学生時代の記憶と重なりました。この小さな町で流れている時間は、懐かしいだけではなく、ちゃんと今の時代にも成立するし、今の学生さんにも共感できる部分があるんじゃないかなと思います。

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『YOUNG&FINE』 © SPOTTED PRODUCTIONS

──伊沢を演じる上で、どんなことを意識しましたか。

向里 どこかに大人の魅力やミステリアスさを出さなきゃいけないなと思いつつ、パッと見で美人の先生というタイプでもないので、がに股で歩いてみたり、目を細めて、目に光があまり入らないようにしたり、細かい工夫を織り交ぜながら演じました。あと個人的に高校時代、生物が好きで、よく生物に関する資料集を見ていたんです。伊沢は化学の教師ですが、蛇を飼ったりするので、そういうマニアックさも必要なのかなと思いつつ演じました。

──伊沢と共通する部分や、共感できるところはありましたか。

向里 伊沢は外交的ではないですが、どちらかというと私も一人で何かをしているほうが好きなので、日々の生活は似ているかもしれません。私はほとんどお酒を飲まないので、そこは真逆ですが(笑)。

──飲まないわりに伊沢が酔っ払うシーンはリアルでした。

向里 飲み会などで酔っている人を冷静に見ているので、それを参考にしました(笑)。

──伊沢は寝ているときに、無意識に主人公の灰野勝彦を刺激するようなセクシーさを醸し出しますが、向里さん自身が考えたものなんですか。

向里 そこは小南敏也監督から、「もうちょっと見えたほうが、スキがあっていい」とか「ここは見え過ぎていて露骨なので隠してほしい」といった細かい指導をいただきました。私自身は、そのセクシーさの加減は分からないことなので、監督に委ねて指示通りに動いたら、いい感じに撮ってくださいました。そのシーンに限らず、勝彦にとって掴めそうで掴めないような、私が男子高校生だったら、こういう大人の女性に惹かれるかもしれないという先生像を目指しました。

──城定監督の作品を彩ったヒロインはメガネをかけていることが多いですが、伊沢にもメガネは受け継がれています。小南監督は長年、城定組で助監督を務めてきた方ですが、メガネ選びにこだわりはあったのでしょうか。

向里 メガネは何種類も候補があって、かなり小南監督は悩んでいましたね(笑)。形や太さで印象も変わるので、伊沢がかけていそうなメガネを選びました。

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向里祐香(撮影=荻原大志/ヘアメイク=董冰/スタイリスト=林 峻之)

「あのキャラクターにまた会いたい」という感覚があった

──映画のメインビジュアルにもなっている海辺のロケーションが素晴らしかったですが、どちらで撮影されたんですか。

向里 ばーっと海が広がっていて、いいですよね! 神奈川の三浦海岸で撮影したんですが、小南監督がすごくこだわって探されたんだと思います。その場の空気感がお芝居にも影響を与えたと思いますし、改めてロケーションは大事だなと痛感しました。撮影は6月の梅雨の時期だったんですが、見事に晴れて。爽やかさもある青春映画なのに、どんよりしていたら嫌だったのでラッキーでした。

──学校での撮影も千葉ですか?

向里 学校は山梨にある廃校のスタジオです。ラグビー部の生徒たちが大声を上げながら泥だらけになって一生懸命練習している姿を見て、私もバスケ部だったので、とても懐かしく感じました。自分の出番がない時間も、校舎の窓から撮影を眺めていると、学生時代を思い出しました。

──小南監督の演出はいかがでしたか?

向里 誰よりも小南監督が楽しんでいて、撮影中も笑い声が聞こえてくるんです。これだけ小南監督が笑っているんだったら大丈夫だって安心感がありました。あとシーンごとに「こうしてみるのはどうですか?」とみんなで話し合ったんですが、面白いアイデアがあったら「じゃあ、やってみましょう」と柔軟に取り入れてくれるんですよね。スタッフさん、キャストが一丸となって面白いものを作り上げていく作業は楽しかったですね。

──共演者についてもお聞かせください。勝彦を演じた新原泰佑さんの印象はいかがでしたか。

向里 普段の新原君はスマートで頭の回転も速いんですが、映画の中では一つのことに愚直に進んでいくような真逆の役を演じていて、素晴らしいなと思いました。明るい性格という面は勝彦と通じるものがありましたね。男子高校生らしく、「彼女としたい!」と欲望を剝き出しにしていたところから、高校を卒業して社会人になり、久しぶりに伊沢と再会したときに、力んでいたものがふっと抜けて、ちゃんと大人になっていて。さすがの表現力でした。そのシーンを撮り終えた後、新原くんが「今のシーンが一番楽しかった」と話していて、いいキャッチボールができたなという感覚が私にもありました。

──勝彦の彼女、新井玲子を演じた新帆ゆきさんは、大胆な濡れ場を演じていますが、透明感のある方ですよね。

向里 それほど共演シーンはなかったのですが、ザ・ヒロイン! というピュアさがあって、伊沢とは対照的な魅力を持っていて、いいバランスだったと思います。

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『YOUNG&FINE』 © SPOTTED PRODUCTIONS

──初めて完成した作品をご覧になったときの感想は?

向里 ずっと笑いながら観ていました。メインじゃない登場人物も含めて、原作以上に人間味があって、必死に生きている姿がちょっと滑稽で、それに勇気づけられました。どのキャラクターも愛おしくて、「もう一回観たい」というよりは、「あのキャラクターにまた会いたい」という感覚がありました。最後の、ひと夏の青春が終わったみたいな切なさも良かったですね。先生と生徒たちだけではなく、勝彦のお母さんもラストで一つの決断をしますが、第二の人生のスタートを切るみたいなところも共感できました。

──個人的に刹那的なところも良かったです。

向里 そうなんですよね。最近の映画って、メッセージ性があったり、観た人に何かを問いかけたりするような作品が多い印象があって。私自身、そういう映画で大好きな作品もいっぱいあるんですが、『YOUNG&FINE』は本当に馬鹿で、シンプルで、何もない(笑)。それぞれのキャラクターが一生懸命生きているだけなんです。でも最後に、ちょっとだけ大人になって。そういう作品があってもいいんじゃないかと思いました。

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向里祐香(撮影=荻原大志/ヘアメイク=董冰/スタイリスト=林 峻之)

俳優としてターニングポイントとなった映画『愛なのに』

──向里さんは高校時代、どんなことに打ち込んでいましたか。

向里 先ほどチラッとお話しましたが、中学・高校とバスケ部で、毎日練習で夏休みもほぼないみたいな部活で。強豪校ではなかったんですが、練習はハードでした。

──バスケを始めたきっかけは?

向里 小さい頃から身長が高くて、バスケ部の先輩から「新入生に身長の高い子がいる」と勧誘されたんです。その先輩がかわいくて、黒い部活着の着こなしもかっこよくて、「かっこいいじゃん! 入ろう」と(笑)。毎日しんどかったんですけど、もともとスポーツは好きだったので、結果的に6年間やりました。

──中学入学時点で身長はどのくらいでしたか?

向里 165センチぐらいです。

──それは目立ちますね。

向里 当時は男の子よりも背が高くて、それが悩みでもあったんです。高身長がコンプレックスじゃなくなったのは本当に最近のことで……。

──芸能界に入ってからもコンプレックスだったんですか?

向里 はい。たとえば相手役の方より私のほうが背が高い場合、衣装でヒールを用意してくださったりすると余計に高くなっちゃうので、「どうしよう……嫌に思っていないかな」と気になっちゃうんです。だから姿勢も、自然と猫背になっちゃうんですよね。

──それが変わったきっかけは?

向里 高身長だからこそいただけるお仕事もありますし、昨年、「SHOGUN 将軍』でエミー賞の授賞式に参加させていただいたときに、周りも背の高い人たちばかりで、初めて身長が高くて良かったなと思いました。

──俳優になるきっかけは何だったのでしょうか。

向里 高校卒業後は学校の先生を目指していたんですが、大学受験に失敗してプラプラしていて。そんなときに声をかけていただいて、俳優になるには遅めの年齢だったんですが、身長もあるしモデルとかできたらいいなと軽い気持ちで、事務所に所属しました。

──お芝居に興味はなかったんですか?

向里 多少はありました。子供の頃から映画が大好きだったんですよね。親が映画をマメに録画していて、よく一緒に観ていました。『ネバーエンディング・ストーリー』(84)、『ジュマンジ』(95)、『フラバー』(97)なんかが印象に残っています。

──ファンタジーやSFがお好きだったんですね。そういえばマーベル映画の大ファンですよね。

向里 マーベルは大人になってからハマったんですが、『ハリー・ポッター』シリーズも好きでしたし、確かにファンタジーやSFを好んで観ていたのかもしれません。そういう世界に憧れていたのか、よくセリフを真似ていて、『ハリー・ポッター』シリーズだとハーマイオニー・グレンジャーの真似をしていたのを覚えています(笑)。

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向里祐香(撮影=荻原大志/ヘアメイク=董冰/スタイリスト=林 峻之)

──どういう流れで俳優をメインにやることになったのでしょうか。

向里 事務所の演技レッスンに参加したとき、先生に褒めてもらえて、「あ、やってみようかな」って。褒められて伸びるタイプなんです(笑)。子どもの頃からお芝居の真似事をやっていたせいか、演じることに恥ずかしさがなくて、すごく楽しかったんですよね。

──芸能界に入ることについて、ご家族の反応はいかがでしたか?

向里 私は一人っ子で、わがままなところがあって、自分のやりたいことは絶対にやりたいというタイプだったんです。親から「何を言っても、この子は聞かない」と直接言われたこともあるくらいで(笑)。はっきりは覚えていないんですけど、浪人すると言ったときも反対された記憶はないですし、このお仕事を始めるときもそんな感じだったと思います。今はすごく応援してくれています。

──俳優としてターニングポイントとなった作品を一つ挙げるとしたら何でしょうか。

向里 幾つかありますが、最初のターニングポイントは城定監督の『愛なのに』(22)です。監督の頭の中で撮るべきカットが明確にあって、それを形にしていくのは勉強になりましたし、共演者の方々も皆さんユーモアのあるお芝居をされていて刺激になりました。『愛なのに』を観た方から映画やドラマのオファーをいただくこともありますし、ターニングポイントの一つですね。

──『SHOGUN 将軍』も大きな話題になりましたが、今後は海外進出も視野に入れていますか?

向里 海外にも挑戦してみたい気持ちはありますし、英語の勉強もしています。ただ海外を目指すというよりは、今よりもフィールドを広げて、面白い出会いや作品があれば、国内外問わず参加していきたいです。

(取材・文=猪口貴裕/撮影=荻原大志/ヘアメイク=董冰/スタイリスト=林 峻之)

猪口貴裕

出版社勤務を経て、フリーの編集・ライターに。雑誌・WEB媒体で、映画・ドラマ・音楽・声優・お笑いなどのインタビュー記事を中心に執筆。芸能・エンタメ系のサイトやアイドル誌の編集にも携わる。

最終更新:2025/06/28 16:03