11人組・ME:I、メンバー活動休止の続出で「8人体制」の異常事態…心身の不調相次ぐアイドル業界の問題点

11人組の人気ガールズグループ「ME:I(ミーアイ)」が、メンバーの相次ぐ活動休止で「8人体制」になるという異常事態となった。体調不良や精神的疲弊が活動休止の原因で、ファンからは運営側への不満の声が噴出している。同グループに限らず、近年はアイドルグループのメンバーが心身の不調で活動休止となるケースが多発しているが、その原因や業界の構造上の問題点などについて、アイドル事情に詳しい芸能記者が解説する。
デビューから1年余りで3人が活動休止に
ME:Iの所属事務所「LAPONE GIRLS」(LAPONEエンタテインメント)は1日、公式サイトで「このたび、ME:Iのメンバー・RANにつきまして精神的疲弊のため、本人との協議により一定期間の休養が必要という判断に至りました」として、サブリーダーのRANの活動休止を発表した。
同社は「弊社として、アーティスト活動の支えが不十分であったことを真摯に受け止め、今後はより一層、所属メンバーの活動環境の整備に努めてまいります」としたうえで、「ME:Iは当面の間、8名体制で活動を継続いたします」と告知している。
ME:Iは4月にデビュー1周年を迎えたが、今回のRANを含めてメンバーの活動休止は3人目となる。
同グループは「JO1」「INI」が誕生した日本最大級のサバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』のガールズ版『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』で選ばれた11人で結成され、昨年4月にデビュー。瞬く間にスターダムにのし上がったが、同年8月に最年少メンバーのTSUZUMIがストレスが原因で発症するとされる「適応障害」と診断されたため、長期的に活動を休止することが発表された。
さらに今年3月には、メンバーのCOCOROが体調不良を訴えて活動を休止。具体的な症状は発表されてないが、やはりストレスによる精神的疲弊が原因ではないかと推察するファンが多く、現在も復帰のめどが立っていない。
デビューからわずか1年余りで、3人もメンバーが活動休止になるのは異常事態だ。ファンからは「さすがに3人も活動休止になるのは運営を批判せざるを得ない」「ちゃんとサポートしていれば防げたんじゃない?」といった運営サイドへの厳しい声が相次いでいる。事務所側も管理責任を自覚しているからこそ、RANの活動休止の告知で「アーティスト活動の支えが不十分であった」という一文を入れたのだろう。
極度の多忙が影響か……「3人活動休止」の背景を分析
この異常事態の原因について、業界事情に詳しい芸能記者はこう指摘する。
「韓国発の『PRODUCE 101』シリーズをひな型に、シビアでハードなサバイバルが繰り広げられるオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』シリーズ第3弾の『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』で選ばれたメンバーによって結成されたME:I。シリーズ初の女性版ということもあり、オーディション中から注目度が高く、早くから同世代の女性から熱狂的に支持されるメンバーが多数いた。その一方、落選したメンバーのファンによる心無い言葉もSNSなどで多く飛び交い、精神的なストレスは大きかったとみられる。
過酷なオーディションを勝ち抜いても、そこがゴールではなく、デビュー前からテレビ、イベント、雑誌などに引っ張りだことなり、早々に冠番組もスタート。昨年4月にメジャーデビューすると、さらに多忙を極めるようになり、大規模なコンサートもコンスタントに開催した。そんな過密スケジュールの中でも、メンバーたちは素直で明るく、メディア取材を前のめりで受けてくれて、ファン対応も完璧だった。しかし、だからこそ心も身体も休まる暇がなかったのではないか」
やはりメンバーの活動休止の背景には、極度の多忙があると考えられそうだ。前出の記者は続ける。
「ガールズグループ界でも屈指のパフォーマンス力を誇るME:Iだけに、それを維持するために時間のない中でも彼女たちは全力でレッスンに取り組まなければいけない。またK-POPに多大な影響を受けた系譜の先輩である『NiziU』や、オーディション番組『No No Girls』出身でちゃんみながプロデュースを手掛ける『HANA』など、強力なライバルグループが結果を出しているのでプレッシャーも大きいだろう。
さらに、グループ内では常にセンター争いがある。おそらく、ほぼプライベートの時間がない状態で、もしオフの日があってもあまり派手に遊ぶことはできないだろう。まだ遊びたい盛りの10代のメンバーも多いのでストレスは溜まる一方だろうし、多忙で息抜きもあまりできないとなれば、メンバーの活動休止が続出しているのはまったく不思議ではない」
「アイドルの体調不良多すぎ」問題の原因は……?
ME:Iに限らず、近年は女性アイドルグループのメンバーの活動休止が相次いでいる。業界の構造に問題があるのではないかとの指摘もあるが、前出の記者はこう分析する。
「メジャー系のアイドルグループは、メンバーに支払う給与やヘアメイク代、スタイリスト代、移動費など、運営していくために莫大な経費がかかる。コンサートをやっても競い合うように派手な演出を盛り込むので経費がかさみ、チケットの売り上げだけではさほど利益が出ない。冠番組やレギュラー番組を除くと、テレビやラジオ、雑誌への出演もパブリシティ(宣伝)稼働でギャラが入らない場合があるので、露出が多いからといって儲かっているわけではない。
結局、多額の経費を回収するためには、とにかく仕事を詰め込むしかなくなる。例えば、CDは最初からファンの複数枚買いを想定しているので、リリースのたびに特典となる握手会などが各地で頻繁に開催される。そうやって多忙になればなるほど、メンバーたちは精神的にも肉体的にも疲弊してすり減っていく。また人気メンバーはグループ活動以外にも、ソロで俳優やグラビアなどの仕事があるが、それがグループ内の格差を生み出し、あまりソロ仕事のないメンバーが病みやすくなるという傾向もある」
そのような負の連鎖を断ち切るためには、どのようにすればいいのか。前出の記者は言う。
「アイドル側だけの問題ではなく、彼女たちをケアするサポートスタッフの数が足りていないという現実もある。あまりにも忙しいうえに、予算的な問題もあってグループにつけられるマネージャーの数は限られているので、メンバーそれぞれにきめ細やかなサポートをすることができないのだ。多忙すぎる環境に耐えきれず、若いマネージャーがどんどん辞めてしまうので、慢性的に人手不足になっているという実情もある。
サポート側が人手不足だと、メンバーのプライベートにまで目が行き届かず、SNSの裏アカでメンバーやスタッフへの不平不満を書き連ねてしまったり、恋愛スキャンダルを起こしてしまうメンバーも出てくる。年ごろの女の子が集まった大人数グループを運営するには、そのような構造上の問題がある。現状では抜本的な解決は難しいだろうが、メンバーはもちろんスタッフもケアしてくれる専門医などをつけ、心と体を壊さないようなスケジュールを組むなど、一般企業なら当たり前となっている取り組みをしていくしかないだろう」
数年前には、韓国で人気アイドルグループのメンバーの心身の不調による休業などが相次ぎ、アイドルたちの過酷すぎる労働環境が社会問題となった。日本でも同じように、アイドル業界の構造を見直すべきという議論が湧き起こりそうな状況といえそうだ。
(文=佐藤勇馬)