山川ひろみ、真っ青な離島で得たもの…初主演映画『アオショー』インタビュー

2008年のデビュー以来、俳優・グラビア・モデルと多彩に活動してきた山川ひろみが、ついに映画初出演を飾った!
累計動員10万人を超える大人気舞台『絶対青春合唱コメディ「SING!!!」』の映像化作品で、8人組ダンス&ボーカルグループMAZZEL(マーゼル)RANとともにW主演を務める。
舞台は、美しい海に囲まれた離島・折後島。閉校が決まった高校を舞台に、合唱を通して絆を深めていく若者たちの姿を描く青春群像劇だ。
小山慶一郎をはじめ、飯島寛騎、小泉光咲、三浦獠太、福崎那由他、大川泰雅といった次世代を担う俳優陣も集結。合唱の力がつなぐ、まっすぐな想いと出会いが胸を打つ。
今回は、映画初主演の山川ひろみさんに、撮影秘話や自身の青春について語ってもらった。
【山川ひろみ(やまかわ・ひろみ)】
5月13日生まれ。東京都出身。2013年日テレジェニック審査員特別賞を受賞。数多くの舞台で、主演、ヒロインを務め、2025年からは映像分野に進出。ドラマ「民王R」(テレビ朝日)、「若草物語」(日本テレビ)などに出演し、活動の幅を広げている。<X@yamakawahiromi><Instagram:hiromi_yamakawa_>
山川ひろみインタビュー
――すがすがしい青春映画を久しぶりに見ました。
山川 ありがとうございます。青春映画ってなかなか観る機会がないですよね。
――ピュアで前向きな姿勢がとても伝わってきました。ロケーションも素晴らしかったです。映画内の「折後島」は架空の島ですか?
山川 はい、島の名前は架空でして、撮影は実際に離島にも行ったり、色々なロケ地で撮影しました。
――山川さんは映画の原作となった舞台「絶対青春合唱コメディ『SING!!!』~空の青と海の青と僕らの学校~」でも同じ役を演じられたんですか?
山川 舞台でも今回の映画と同じ波島沫乃を演じました。
――舞台は青春合唱コメディだと聞きました。
山川 そうなんです。舞台はコメディだったんです。ストーリーは映画とほぼ同じで、私の役は映画と変わらず、主人公とのピュアな恋愛模様を中心に演じました。今回の映画は繊細な気持ちのやり取りが描かれ、青春ものとしての深みが増した感じです。
――舞台も面白そうですね。両方見たら違いが楽しめそうです。以前、山川さんが「舞台は役を引きずりやすい」「舞台はカットがかからないから、最初から最後まで役に入りっぱなしでした」と話していたインタビューを読みました。今回の映画ではどうでしたか?
山川 舞台のときの感情とは全然違いました。映画はカット割りがあるし、撮影シーンの順番もバラバラです。今回は話の最後から撮影していきましたね。なので、最初は戸惑いました。映画初出演だったので、何もわからない状態でした。舞台に慣れていたので、逆順で撮るのが難しかったですね。
たとえば、悉平(RAN)くんとの関係も、仲がいいシーンから先に撮って、距離感があるシーンに戻る、みたいな感じだったので、気持ちの切り替えが大変でした。でも、気持ちの面では舞台をやっていたから「あの時の気持ちはこうだった」と思い出せたので、舞台の経験に助けられながら演じることができました。
――映画撮影は新鮮でしたか?
山川 はい、とても。舞台を10年やってきたからこそ新たな段階に足を踏み出せ、やる気に燃えました。
――舞台は幕が開いたら最後まで話が止まりませんよね。一方で映画は「スタート!」と「カット!」で切り替えていくわけですが、その違いは気になりましたか?
山川 難しかったですね。「よ~い、スタート!」の掛け声とともに役になり切る憑依型の俳優さんもいますが、私はそこまで器用なタイプじゃないので、事前にもらった香盤表を見ながら「こう気持ちを作る」って想定するタイプなんです。私の出番前のシーンを頭で演じて、本番に臨むことで、やっと気持ちが作れたかなと。
――舞台だと現実でも役を引きずりやすいとのことでしたが、映画ではどうでしたか?
山川 映画は撮影が目まぐるしくて、引きずる余裕がなかったです。シーンの順番がバラバラなので、引きずるより、ドライに切り替えられるかが大事なので、そこが映像の醍醐味だと思いました。
――映画と舞台は別物だと実感したんですね。
山川 演技という意味では同じですが、まるで別世界でした。

――これまで他のドラマも経験されていますが、映画は特別な感じですか?
山川 これまで出演させていただいたドラマは1話のゲスト出演っていうパターンが多くて、今回はヒロインとして長期間関わるのは初めてだったので責任感が違いましたね。
――初めて主演の話を聞いた時はどんな気持ちでしたか?
山川 「私でいいんですか!?」「頑張らなきゃ」って感じでしたし、自分が役に見合うように成長しなきゃと思いました。
――嬉しさはありましたか?
山川 めちゃめちゃ嬉しかったです。舞台の時から監督が「この舞台を映画にしたい」と話していたんです。映画化が決まって、私が続投と聞いた時、責任の重さを感じましたし、頑張ろうと思いました。
――映画の話に入る前に今日も青い服を着ていますが、インスタでも青が多いですよね。映画のタイトルも『アオショー!』ですし、青が好きなんですか?
山川 水色が大好きなんです。昔はピンクが好きだったけど、大人になってから爽やかな青に惹かれるようになりました。空の写真を撮るのも好きで、水色を見ると癒されるんです。
――水色は爽やかな山川さんのイメージに合っています。映画の話に戻ると、最初、山川さん演じる波島沫乃は「この島は何もない」と冷めています。実際の山川さんは東京生まれ東京育ちですよね。
山川 はい。なので、奄美大島に住んでいる友達に「離島ってどんな感じ?」と聞いたら、「本当に何もないし、コンビニも遠い」と言っていたんです。でも、島の人たちは島を愛していて、近所付き合いが密で温かいと聞いて、そういうのを役に落とし込みたいと思いました。
――若干、島には冷めた感情を持っていた波島沫乃が、島にやって来た飯田悉平と出会って変わっていくわけですが、飯田悉平役のRANさんはどんな方でしたか?
山川 RANくんは舞台の時から一緒だったので、心強かったです。映像化にあたって「もっと気を引き締めよう」とクランクイン前に話したり、ふたりだけのシーンを撮る前は、撮影の合間にお弁当を食べながら「このシーンはこうしよう」とコミュニケーションを取ったりして、一緒に作品を作り上げていった感じでした。
――他の生徒役のみんなもひとりひとりに個性があって見せ場がありましたね。
山川 見応え抜群です。舞台版もそうですが、監督の作品は全員に見せ場があるんです。私やRANくんが主演でも、出演者全員に見せ場があって輝いていて、素敵な話だと思います。
――波島沫乃の先輩役・貴宝院理津を演じた小山慶一郎さんは意外にも、この映画が初出演だったんですね。
山川 私もこの映画が初出演と聞き、びっくりしました。
――カリスマ性のある先輩役ですが、少しコミカルな印象もあり、どちらの雰囲気も持ち合わせて素晴しかったです。
山川 小山さんのお芝居は重厚感があり、作品に厚みが出ていて、とても勉強になりました。
――小山さんはどんな方でしたか?
山川 イメージそのままで、すごく優しい方でした。現場で緊張している人や遠慮している人の空気をすぐ感じ取って、場をワッと明るくしてくれる方でしたね。生徒役のみんなにも積極的に話しかけてくれて、私にも「沫乃ちゃん」と気さくに話しかけてくれて、役通り部長のようなリーダーシップを撮影現場では発揮してくれました。
――小山さんの役は映画のスパイスになっている重要な役なので注目です。母親役の川上麻衣子さんは全然変わらない印象です。
山川 昔の写真を拝見したんですけど、川上さんはそのままでした。めちゃめちゃ優しくて、私が猫好きと話したら、猫の話でずっと盛り上がりました。川上さんが猫をモチーフとした作品展をやっている時に「遊びに来て」と言ってくれて、実際に見に行きました。撮影でも本当のお母さんみたいに接してくれて、すごく優しくて温かい方でした。
――その他にも田畑智子さん、佐野史郎さん、渡辺いっけいさん、徳重聡さんなど、錚々たる俳優陣との共演でした。そんな偉大な大先輩たちと共演してどうでしたか?
山川 ひとつの映画に、こんなにたくさんの先輩方が出てくださり緊張しました。でも「緊張をして、壁を作ってもしょうがない」と思って、自分から話しかけに行きましたし、先輩方からも話しかけてくださいました。
特にいっけいさんはお父さん役だったので、「舞台はどうだった?」と興味を持って聞いてくれました。その温かさが家族のシーンにも表われていたかなと思います。
撮影後、「また共演させていただけるように頑張ります」と言ったら、ちゃんと向き合って「こちらこそ、頑張るよ。よろしくお願いします。またね!」と言ってくださり、「私も頑張るぞ!」と思いました。あそこまでのキャリアの方々が若手に真摯に向き合ってくれるなんて、胸を打たれました。先輩方が優しく接してくださったからこそ、この作品に責任を持ってヒットさせなきゃと思いました。

――これだけの豪華俳優陣が揃う映画はなかなかないので、今回の共演は宝物になったと思います。青春映画ということなので、山川さん自身の学生時代、合唱コンクールや学園祭など学校行事にはどう接していましたか?
山川 合唱コンクール等の学校行事は「真面目ちゃん」なので、積極的に参加していくタイプでした(笑)。練習も全部出て、声もちゃんと出しましたよ。でも、なまけている男子に「ちょっと男子~」みたいなリーダーシップを取るタイプじゃなくて、「とにかく合唱を頑張ろう」っていう補佐的な役割でした。
――山川さんの学生時代は、どんな合唱曲を歌っていましたか?
山川 「時の旅人」や「蒼鷺」という難易度の高い合唱曲を歌っていました。「蒼鷺」は合唱部の子が持ってきた曲で、みんなで本気で練習したけど賞は取れませんでした。でも、本気で取り組んだので、合唱コンクール後はめちゃめちゃ泣いて、いい思い出になりました。私の青春の1ページですね。
――いい話です。学生時代はどんな性格でしたか?
山川 おとなしくて、勉強も頑張っていました。映画みたいな青春や恋愛は全然なかったんです。この作品を通して初めて青春に触れた感じです。ある意味リベンジした気分です(笑)。
――再び映画の話に戻りますが、前半はクールだった波島沫乃が、ある騒動で変化していきます。そして、後半は様々な困難が起こりますが、困難があるたびに島の生徒たちと一致団結する感じが美しくて、リアルな感じがしました。
山川 青春映画って過度に描かれたり、エンタメ寄りになりがちですが、『アオショー!』は本当にリアリティーにあふれ、離島の1年を切り取ったようなお話だなと思いました。それが伝わったのが嬉しいですし、これから観ていただく方にも、そう感じていただけたら嬉しいです。
――灯台のシーンは感動しました。
山川 あそこは撮影初日くらいだったので、みんなで気持ちを膨らませて頑張ったから、あのシーンで本当の団結が生まれたんじゃないかなと思います。
――あと、一致団結したと思いきや波島沫乃が思わせぶりな発言をして男性生徒を心配させます。
山川 思わせぶりですよね、小悪魔と言うか(笑)。最初は、島の男子生徒たちと壁を作っていたんです。合唱を本気でやりたいから、島を離れ合唱部の強豪校に入ったんですけど、理想と現実がかけ離れていて、音楽に対する気持ちがどんどん荒んでいくんです。
そこに、純粋でまっすぐな悉平くんが島に来て、影響されて、気持ちが明るくなって扉を開いていくんです。悉平くんたちと真剣に触れ合うことによって、沫乃の中では何かが変わったんだと思います。その変わった心境を言葉では言わない沫乃っぽさが、好きなシーンではありますね。
――あのツンデレ感がいいです。クライマックスの合唱コンクールのシーンでピアノは実際に弾いたんですか?
山川 弾いているシーンと弾いていないシーンがありますが、弾いているシーンはちゃんと弾きました。
――合唱コンクールのシーンは出演者の生歌ですか?
山川 はい、もちろんそうです。5人の合唱であの厚みを出せるのは素晴らしかったですし、本気のなせる業ですね。あのシーンは私とRAN君以外はクランクアップの日に撮影したんです。それまでの撮影で、みんなの関係性や気持ちが出来上がっている状態でした。多くの観客の前で歌うのでめちゃめちゃ頑張っていたし、横で見ていても泣きそうでした。
――合唱コンクールのシーンは偶然クランクアップの日だったんですか? それとも計算ですか?
山川 どうなんですかね? 監督もリアリティを出したいので、男子生徒の関係を構築して最終日に撮りたかったんじゃないでしょうか。
――さすが監督です。あのシーンの感動は映像でも伝わるので、直接見ていたら本当に涙が出るでしょうね。あと、映画のテーマに「トロフィーと友情」がありますが、現実では山川さんならどっちを選びますか?
山川 私自身、沫乃と重なる気持ちがあって、俳優業で真剣に演技を重ねた結果「トロフィー」という成功を得られることもあれば、演技を楽しむこと、仲間など「友情」を失うこともあると思うんです。そこで実際に揺らいだ経験もあります。
でも、「トロフィー」も「友情」も両方取れると初めて知ったのが舞台の『SING!!!』だったんです。それは舞台でも共演したRANくんが思わせてくれたんです。RANくんは悉平くんと全く同じで、長年、女優をしてきて演技の世界を少しドライに見ていた私に対して、まっすぐ向き合ってくれたんです。
舞台でも映画でも現場の空気を良くしつつ、舞台を成功させる姿に影響されました。その舞台が今回、映画化され、もっと多くの人に観ていただけると思うと、「トロフィー」と「友情」のどちらも得られたんじゃないかと思います。
――「トロフィー」と「友情」の結晶がこの映画には詰まっています。また、歌もメインテーマのひとつですが、歌の力や、歌に救われた経験はありますか?
山川 音楽が大好きなので、へこんだりしたときは、明るくなる音楽を聴いて気持ちを奮い立たせています。音楽とともに日常を過ごしているので、音楽には救われています。この映画を通しても分かるように、言葉では伝えきれない感情を音楽では2、3分で伝えられるすごい力があります。
――言葉だと誤解されたりしますが、音楽だと伝わるものがありますよね。
山川 照れくさいことも音楽を通してなら言えますし、気持を救ったり、救われたりするので音楽は素晴らしいです。
――この映画を観た方も、音楽の力を感じてほしいですね。
山川 ホント、そのとおりです!
――そして、最後のシーンでは悉平と意味深なシーンがあります。その後、悉平との関係はどうなると思いますか?
山川 どうなるんでしょうね(笑)。
――まだ2人とも高校2年生だから、まだ1年あります。続編があったら面白いですよね。
山川 続編ができるように頑張りたいです。
――離島の高校が本土の高校に編入されて、どうなるんでしょうね。
山川 悉平くんが合唱部の部長になって、私がピアノ伴奏をするのかな(笑)。悉平くんなら貴宝院部長とは違った形の合唱部を作り上げるのかなと想像しています。
――最後にこの映画の肝になるシーンがありまして、合唱コンクールに向かうとき、貴宝院部長が「頑張ってくる」と言うのに対し、悉平が貴宝院部長に「楽しんで」と言うのが対極的で印象的でした。山川さんにとって、音楽は頑張るものですか? それとも楽しむものですか?
山川 本来は楽しみたいタイプです。でも、責任が伴うと「頑張る」になりがちなんですが、映画では悉平くんが「音楽は楽しむもの」に引っ張っていってくれた感じですね。
――あのシーンはこの映画の作品全体を表していると思います。ではファンに向けて見どころを教えてください。
山川 舞台をご覧いただいた方も、映像ならではのリアルなロケーションがスクリーンで実現されているので楽しんでいただきたいです。舞台を観ていただいていない方も『アオショー!』は絶対楽しんでいただけると思います。
日々、頑張っている人や辛い気持ちを抱えている人など、様々な感情を抱えている方の癒しやパワーになればいいなと思います。たくさんの見どころが宝石箱みたいに詰まった作品なので、どこが良かったか語り合ってほしいです。
(取材・文・撮影=笠井浩司 X@KKphotograph)
アオハル(青春)×ガッショー(合唱) 『アオショー!』
動員数累計10 万人を突破した人気の舞台シリーズが、ついに映画化!!
本作は、新国立劇場で上演され、チケットがわずか2分で完売するほどの高い人気を集めた舞台『絶対青春合唱コメディ「SING!!!」~空の青と海の青と僕らの学校~』を原作に、映画版としてあらたに書き下ろした物語。舞台は、美しい海に囲まれた小さな離島・折後島。過疎化が進み、閉校が決まった島唯一の高校で、個性豊かな生徒たちが合唱を通して絆を深め、青春を駆け抜けていく姿を描く。